KnightsofOdessa

洞窟のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

洞窟(2021年製作の映画)
4.5
[暗闇に隠れるシュレディンガーの猫的神秘] 90点

2021年ヴェネツィア映画祭コンペ部門出品作品。高層ビル、山から洞窟へ、センター・オブ・ジ・アースへ!みたいな冒険心を擽る映画。あまりにも台詞が少ないので若干ウトウトしていたが、ふと画面を観た瞬間に何やら恐ろしいものを観た気がして、身震いしながら覚醒してよく観てみたらただの岩だったという『ピクニックatハンギング・ロック』みたいな演出を、ずっと起きていた人より楽しめたんじゃないかと思っている(ずっと起きていたかったです、ただのやっかみです)。雑誌を破って燃やして洞窟内に投げ入れたり、サッカーボールが綺麗に壁にバシバシ当たって落ちていくシーンが良い。人間が落下しない分、そういったアイテムが地表と地下という不思議で純粋な高低差を提示してくれる。カメラが当然のように人間が降りていく先にいるのも凄い。全体的なゆったり感が去年のTIFFにいたカメン・カレフ『二月』っぽかった。個人的に気に入っているのは、洞窟の真っ暗な部分をきちんと真っ暗に描いて、灯りで照らされている部分と対比させているとこ。それによって照らされていない部分に、シュレディンガーの猫的な、視認できない神秘が広がっていくのだ。
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