ベイビー

ジェームズ・ボンドとしてのベイビーのレビュー・感想・評価

ジェームズ・ボンドとして(2021年製作の映画)
4.0
「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観てからもう2日目、未だロス感が抜けきれないので、アマプラにあった本作を鑑賞。感傷に浸りながらこの15年にも及ぶ軌跡を観ていると、一層感慨深い淋しさが込み上げて来ました。

僕は全く以前の「007シリーズ」を追いかけて来なかったので、ボンドの歴史に関心もなかったのですが、6代目ボンドがダニエル・クレイグに決まった当初は、世界中から相当なバッシングがあったみたいですね。

各メディアで「相応しくない」だの「幻滅した」などと書かれ、イギリス国民の71%が彼のボンド役に反対だったとのこと。そんな中で撮影を続けるなんてどんな心境だったのでしょう。それでもクルー全員で"クレイグのボンド"を信じて「カジノ・ロワイヤル」という傑作を作り上げたのですから、本当、頭が下がる思いです。

「カジノ・ロワイヤル」公開後は世界中が手のひらを返すようにクレイグ版ボンドを絶賛。痛快ですよね。意地と努力と信念で勝ち取った地位と名誉と信頼。今ではボンド役はダニエル・クレイグしか考えられないというほど、世界中が彼が演じるジェームズ・ボンドに心酔しきっています。

これはまさに完全勝利です。世界中が見守る中、失敗の許されない新ボンドという配役を決める賭けに、バーバラとマイケルは世論からの反対の声を押し切ってまでもダニエル・クレイグにベットし、作品の評価としても、興行収益としても、過去の作品を上回る成功を勝ち取ったのです。

それからの活躍は周知のとおり。撮影の度に大怪我をし、新しい"ボンド像"を追い求めては苦悩し、身も心も満身創痍のまま、それを乗り越え素晴らしい作品を残してくれました。

そして先日、世界中が待ち望み「ノー・タイム・トゥ・ダイ」が公開されましたが、それと同時にクレイグのボンドに会えなくなる淋しさを感じた人も少なくないと思います。もちろん僕もその一人です。

いつまでも落ち込んでる時ではないと自分に言い聞かせて、このドキュメンタリーを観てみたのですが、それでもやはり喪失感は積もるばかり。それはまるで得体の知れない何かに心が縛られている気持ちです。この空が墜ちてくるような虚無感を慰めるには、今までに残してくれた作品を夜な夜な見返すしかなさそうです…

ありがとう、青い瞳でポーカーフェイスな殺し屋さん。あなたへの報酬はプライスレス。あなたが残した功績に世界中から惜しみない賞賛が贈られていることでしょう。

本当にお疲れ様でした。
ベイビー

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