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猫は逃げたのRenのレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
4.0
猫好き歓喜。不倫を通した恋愛映画としてのクオリティの安定感は勿論のこと、今作の「猫映画」としての素晴らしさも伝えていきたい。

過去作よろしく愚かで愛らしいダメ人間の生活を覗き見してやろうと息巻いて鑑賞を始めたのも束の間、中々に面倒くささが限界突破していて爆発しそうになった。浮気×2の話が面倒くさくない訳ないのだけど、より「なんやねんお前」とツッコミたくなる方向へ鋭さが増している気がする。

城定氏が今泉監督に寄せたと言っている通り、かなり今泉味、もっと言うと『街の上で』風味に仕上がっていた。各シーンがコントのように仕上がっているところや、ラストとんでもない修羅場が始まるところとか。
あと、過去作より「ここでガッツリ笑かしてやろう」という意図が明確に感じられた(そう思って取り組んだかどうかは分からないけど)。オズワルド伊藤のシーンは完全にコント師のそれ。中盤のナンジャソレ展開も、考え得る限りかなり理想的な形で物語が丸く収まる辺りも、「台本」の存在を感じる。全体の弛緩した空気感に反して、プロットは分かりやすく組み立てられているバランス。好き。

猫を飼っている人なら共感してもらえると思うけど、猫と人間はペットと飼い主というよりどこまで行っても「猫」と「人間」で、その温度感をしっかり感じられたのが素晴らしかった。過剰に感情移入させず、なんかそこにいる存在としてしっかり描けている。かと言ってドライでは全くなく、めちゃくちゃ愛でるし何かあればめちゃくちゃ心配する親心、この距離感が心地良い。

強いて難を挙げると、『愛なのに』ほどベッドシーンの必然性が無く(『愛なのに』は本筋にもっと "性" が強く絡んでいた)、それがどうしてもレーティングのハードルを上げているだけなように感じてしまったのが惜しい....。女性のトップが映る瞬間だけカットした、G区分バージョンもあればもっと広い世代に伝わるのかなぁ、とか。企画からして完全な本末転倒になってしまうのだけど。

手島実優さんがヤバいくらいのハマり役。普段からこのくらい面倒くせぇ人間なのではと思ってしまう素晴らしい演技。一袋200円のハリボーをひょいひょい投げるところから人間性が出ていて最高。
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