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雨を告げる漂流団地のRenのレビュー・感想・評価

雨を告げる漂流団地(2022年製作の映画)
2.0
同じく日本のNetflix水アニメーション『バブル』よりは伝えたいことが理解できたぶんマシだったけど、やはり厳しかった。観る前にダメそうと感じたアニメは十中八九ダメだ。

個人の好みだが、声優の「なぜか発声の良すぎる大声」の演技ばかりが飛び交う映画は苦手。今作などははっきりと会話が主体の作品なので、かなり早い段階で耳が疲れて仕方なかった。おそらく声優に罪は無く、演技指導やプロデュースの問題と思われる。観客に伝えようとするためだけに込められた熱量はノイズだ。

団地ごと漂流し水面を漂う作画自体は、アニメでしかできない表現(多分今の邦画でこれをやったらチープになる可能性のほうが高い)で正しく、楽しめた。
だけどこの映画のヘンなところは、序盤の眼前に海が広がるシーンを超える真っ当な映像的カタルシスが訪れないこと。ラストの観覧車など、何がどうなってるか分かんね〜と思いながら観ていた。
ガラスで膝を怪我する、鉄骨で掌を切るなどミニマムに肌感覚を刺激する描写は概ね◎。

家族・過去への固執が「家=団地」への固執とイコールになったことの物語。自分はこの映画、意外と『ドライブ・マイ・カー』と比較できるのではないかと思った。
『ドライブ ~』は妻を亡くした家福(西島秀俊)が、その死んだ妻のカセットテープの声と共に車という棺桶に閉じ込められながら再生へ向かう話。今作は、家族と離れた夏芽が、のっぽ君(過去の具象の存在)と共に団地という棺桶に閉じ込められながら漂流し、「家を捨てても思い出は消えない」ことに気づいていく話。

夏芽にイライラした、という感想がかなり多くてそれは自分も感じはしたが、それだけで彼女を切り捨ててしまうのは可哀想だとも思う。彼女は明確にあの子ども達の中で浮いた存在として描写されているので。夏芽にとっての団地(過去・家族そのものであり、強い執着の対象)は、他の子からすれば「不便な筏」であって「おもしろ秘密基地」。夏芽が空回りしていくのは当然。
彼女を過去から引き摺り出そうとするのがもう一人の主人公・航祐であり、彼がおそらくは『ドライブ・マイ・カー』のみさき(三浦透子)。

ただやっぱり面白くない。前述の演出的な壁もあったし、漂流して→近くに巨大な建物が流れてきて→....が2〜3回繰り返されるのはロードムービーとして冗長。

この世界のルールも不明。今敏作品のように分からないこと自体がエンタメになるのならばまだしも、単純にこっちがノれない。夢オチでないことは分かっているのだから、どこまでをファンタジーにしているのかを確定してくれないと軸がブレてしまう。
漂流する子どもたちの人数も多かった。多ければ団地感・ジュブナイル感は出るが、捌ききれずに空気と化したキャラが数人いたように感じた。

基本的に良くなかった部分に関しては他の色々な人も書いているのでこれ以上は書かないけど、あと120分は長いのでせめて100分に収めてほしかった。
発端のアイデアは良いと思ったので、脚本と演出のブラッシュアップを期待!『ペンギン・ハイウェイ』も未見なので観ます!
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