keith中村

マクベスのkeith中村のレビュー・感想・評価

マクベス(2021年製作の映画)
5.0
 今年の劇場一本目は、これ。
 昨日観たんだけれど、昨日は大阪泊りだったので、本日レビューします。
 
 初詣のついでに(と、いいつつチケットは予約してた)鑑賞。
 ちなみに、初詣は梅田のお初天神。私と別れた妻が結婚式を挙げた神社なんですね~。まあ、梅田で手ごろな初詣先はここくらいしかないんだけれど、我ながら趣味が悪い。あ、太融寺という選択肢もあったか。
 お御籤は末吉でした。幸先悪いわ~。
 
 と、余談はこれくらいにして。

 知らずに観たけど、A24作品でしたね。やっぱり安定のA24ブランドでした。
 ジョエルさんの単独作品って、これが初めてなのかな?
 
 本作の最大の特徴は、「ドイツ表現主義」の最新バージョンということ。
 とはいえ、「パースがおかしい」という表現主義演出は使われておらず、その代わりを不均一な長さのさまざまなシルエットが担っている。
 ドイツ表現主義的異常パースは、新しいところでは「チャーリーとチョコレート工場」がありましたね。新しいつっても2005年の作品か。それ以降、何かありましたっけ?
 
 近年、意図的にモノクロ・スタンダードで撮られた作品がいくつかあって、しかもそれらがことごとく傑作なんだけれど、本作もやはりそれでした。
 改めて、映画が光と影の芸術であることを再認識させる見事な演出。
 
 「だいたいいつもいい人」のデンゼル・ワシントンと、監督の奥さんでオスカー3回受賞のフランシス・マクドーマンドによる悪役演技のハーモニー。
 私は「マクベス」の教訓は、「器が小さくてストレス耐性のない小悪党は、大それたことは止めとけよ!」だと思ってるんですが、お二人とも、まあ小さい悪党をきっちり演じてました。
 
 私は「マクベス」といえば、ポランスキー版が大好きなんですが、あれはポランスキーの「呪い」がフィルムに刻み込まれた、「貞子のビデオ」の如く、観てるこっちまで呪われそうな作品でした。
 あれ、シャロン・テート事件からすぐ1,2作目の作品でしょ?
 マクダフの一家郎党皆殺しシーンで、レイプ殺人まで凄惨に描いてました。なんか、芥川の「地獄変」にも似て、恐ろしい作品でした。
 
 翻って本作は、「呪い」ではなく「様式美」。
 ジョエル・コーエンなんで、翻案や現代的アップデートをするのかな、と思ってたけど、私が理解できた限りでは、セリフも原作にかなり忠実な古典劇でした。
 ともかく様式を追求し、それに成功したという感じかな。
 
 まあ、主役がデンゼル・ワシントンというのが、現代的アップデートではありますよね。
 ところで、デンゼルさんだけアメリカ英語っぽく聞こえたんですが、違う? アイリッシュ・アクセント? でも、スコットランドの話だもんね。
 フランシスさんも"R"を巻いてたけど、ほかはイギリス発音と混じってた感じもありましたね。
 とはいえ、シェイクスピアの時代の英語は、今のアメリカ発音に近いという説もあるので、だとしたら、現代のイングランド上流階級訛りのほうが、違うってことになるんだけれど。
 
 シネ・リーブル梅田、こんなアート作品なのに、9割ほど埋まってました。
 私と同じく、「呪術廻戦」にスクリーンと回転を大幅に奪われたシネコンに辟易して(そっちに観たい作品がなくって)、こっちを観にきたのかな。
 
 久しぶりに、大阪で映画を観たけど、キタも映画館が減ったなあ。
 三番街シネマも、扇町ミュージアムスクエアーも、ピカデリーも、東映パラスもなくなっちゃった。
 思えば、私が学生の頃でも、梅田ニューシネマや、シネラマのOS劇場や、梅田コマや、学生の味方・大毎地下なんかが、どんどん閉鎖してた時代だもんなあ。
 な~んか、寂しいな~。