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オッペンハイマーのxfgkvsのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
日本としても貴重な映画だと思う。

まず最初に、これから観ようと考えてる人で、オッペンハイマーについてあまり知らない人、原爆の経緯をあまり知らない人は、ネタバレになってでもオッペンハイマーの経歴について軽く知っておいたほうがいいかもしれない。
ちゃんとした伝記映画なので、あまりネタバレも何もないと思う。

というのも、ただ原爆を完成させるまでの話ではなく、オッペンハイマーの伝記映画なので、その後やその前も描かれている。
特に赤狩りについては、なにが起きているのか分かっておいたほうがいいかも。

個人的には期待通りというか、非常にいい映画だと思った。

自分は他国の血も混じっていない純粋な日本人だけど、昔から当時の日本の狂気を無視した原爆における日本の一方的な被害者意識に疑問を抱いていて、オッペンハイマーについても調べたことがあったので、ついにオッペンハイマーの生涯が映画になること、しかもそれをクリストファー・ノーランが手がけるということで期待していた。

物理学の話は分からないことも多少あったけど、トリニティ実験をはじめ、原爆が完成するまでの流れはいい緊張感があった。
ただアインシュタインとレオ・シラードがルーズベルトに送った手紙の話はもっとあってよかった気もする。

構成はノーラン作品らしい時系列が入り乱れた構成で、分かりづらい人には分かりづらいかもしれない。
ただこの構成が、オッペンハイマーの原爆を完成させるまでと、させたあとの苦悩を見事に映し出していて、ずっと引き込まれるものになっている。

それから公聴会(だと思う)パートでのロバート・ダウニー・Jrはいい演技をしていた。
たしかにアカデミー助演男優賞も納得。他のエミリー・ブラントやマット・デイモン、フローレンス・ピューもよかった。

アインシュタインをトム・コンティが演じてたのは、ちょっと面白い配役だなと思った。
以前からノーラン監督が『戦場のメリークリスマス』を好きな映画の一つとしてあげているので、そこら辺も影響しているのだろうか。

なによりキリアン・マーフィーはハマり役だと思う。いままでもノーラン作品でスケアクロウはじめいろいろ演じてるけど、一番しっくりくる。
観ていてオッペンハイマーにも似ている気がしてきたので、そこの説得力を持たせたのはさすがだと思う。こちらもアカデミー主演男優賞も納得。

広島・長崎の原爆の話が登場する映画なので、日本人としてはどのような被害だったのかを描いてほしい、みたいなことを言う人もいるけど、それはさすがにお門違いだと思う。
この映画はJ・ロバート・オッペンハイマーの映画なので、日本を描いた作品ではない。
オッペンハイマーがエノラ・ゲイに乗って投下される瞬間を見たとかなら分かるけど、そうではないので仕方ない。

ただこの視点の映画は日本では絶対に作れないと思うし、日本の歴史の勉強でも基本的に日本でのことしか教えてくれないので、日本にとっても当時のアメリカや、日本が知らなかったオッペンハイマーの苦しみを知ることができる貴重な映画だと思う。

日本ではなかなか公開されずどうなるかと思っていたけど、配給に踏み切ったビターズ・エンドには感謝したい。
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