ぬっきー

オッペンハイマーのぬっきーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
-
観終わったあと、玉ねぎの皮をむくみたいに、世界の薄い皮が一枚はがれたみたいな感覚になった。はがれる前と大して変わらないんだけど、確実に何かが変わってしまっていて、いい映画見た後ってこういう気持ちになるよなぁと久しぶりにこの感覚を思い出した。
でもその感覚を理性的に判断しないといい映画だったのだと気づけないくらい、深く複雑な気持ちにさせられた。観終わってから眉毛がいまだにハの字なのがわかるし、気持ちを一言で言えば、とても落ち込んでいる。
実験が成功したのを大喜びする科学者たちの映像を観ながら、いつか観た「この世界の片隅に」のスズさんたちが浮かんでくる。川がたくさん流れている川の街なのにカラカラに乾いた原爆ドームが建っている広島や、坂をたくさん昇り降りしながら、先輩と銭湯を巡った長崎がチラつく。
チラつくけど、ここまで来てしまったら、爆弾を作り上げてしまいたいと思うオッペンハイマーの気持ちも分かってしまった。科学者として、彼には、あの実験の成功がハイライトだったんじゃないか。あのとききっと、誰もがとんでもないものを作ってしまったと思ったけど、それが外に出てこないくらいの文化祭の打ち上げ的な楽しさがあって、そういうのが一緒にあっちゃうのが人間だよなと思った。自分の中にもそういうものがあるのを知っている。
最後にかけて、実はミステリー的な要素も織り込まれていたことに気づき、ハイライトを超えてのちも、最後まで引きつけられて観ることができた。
ここんとこ忙しくて、かなり久しぶりに映画館で映画を見たけど、リハビリにしてはハードな選択だった。
ぬっきー

ぬっきー