maro

オッペンハイマーのmaroのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
2024年日本公開映画で面白かった順位:15/36
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★

原作となった伝記は未読だけど、「原爆の父」と呼ばれた理論物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落を描いたとても興味深い内容だった。
唯一の被爆国である日本で生まれ育った人には特に観てほしい作品。

この映画、原爆を作った人間を描いているがゆえに、様々な感情が飛び交うだろう。
個人的には、映画としての側面と、オッペンハイマーに対する評価は分けてもいいかなと思った。
まず、映画そのものについてなんだけど、これはちょっと難しいというか不親切という印象かな(笑)
時系列的に順を追って展開していくわけではないから。
ロシアのスパイ疑惑をかけられたオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)に対する聴聞会から始まり、回想する形で原爆開発に焦点を当てていくんだけど、時系列が行ったり来たりする上に、テロップもないから今がどの時代で場所がどこなのかがわからない。
んでもって、ダイジェストかってぐらい場面がコロコロ変わるからマジで混乱する。

で、その聴聞会なんだけど、これがルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr)という人が仕組んだ罠。
もともと軍縮を提言していたオッペンハイマーとは意見が合わず、そんなときにストローズはオッペンハイマーに恥をかかされたことがあって、その恨みを晴らすためにもオッペンハイマーをハメたのだ。
ただ、このストローズに関する描写がまったくないから、この人が誰でなぜオッペンハイマーにそこまで固執するのか、感情移入ができなかった。
僕はこの映画を観る前に予習として、2024年2月19日にNHKの『映像の世紀バタフライエフェクト』で放送された「マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪」を観たんだけど、あんまり意味なかった(笑)

次に、このオッペンハイマーをどう見るか。
別に彼の肩を持つ気はないけれど、個人的には彼もただ国に利用されただけだなという印象を持った。
結局、彼もただの雇われの身。
会社勤めのサラリーマンのように、「業務上得たアイディアや知的財産はすべて会社に属します」って感じで、原爆は作ったけどその使い道は国次第。
仮に彼が開発を辞めたとしても、あまり意味はなかったかも。
誰かが引き継ぐか、もしくは家族を人質に取られて強制的に開発させられるかしてただろうし。

アメリカって国は何でも自分が一番じゃなきゃ気が済まないし、力を誇示したい国なんだなってどの映画を観ていても思う。
今回だって世界に先駆けて原爆を完成させたがり、できたらできたですぐに実戦に投入したから。
その自己顕示欲のせいで日本では21万人が亡くなったんだよ。。。

そんなわけで、映画としては情報がいろいろ錯綜するような作りでわかりづらいけど、題材としては観て損はない。
原爆や戦争についていろいろ考えさせられるきっかけになるから。
ぜひ日本でアンサー映画作ってほしい。
maro

maro