くろうとチェリー

オッペンハイマーのくろうとチェリーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
鑑賞日:2024/3/31

両親が九州出身なんです。片方は佐賀。片方は長崎。
なので祖父母も当然、大戦時は佐賀・長崎で暮らしておりまして…。

随分前に亡くなった佐賀のがばい祖母は、「原爆が落ちた時、空が虹色に光って、佐賀からも雲が見えたんだよ〜」って昔話していました。どんな色だったんでしょうかね。

長崎の祖母は今でも元気なパワフルババアですが、当時長崎市内に住んでいて、モロ被害を被った被爆者です。
去年遊びに行ったら、馬鹿みたいな量の五島うどんを食わせてくれました。孫の胃袋を過信した悪魔的ボリューム。顔を真っ青にしながら必死に食べる僕を見てケラケラ笑ってました。ババア長生きしてくれ。

ってのもあって、昔からちょくちょく原爆については話を聞く機会はありまして、それなりに思うところはあったんですが、ノーラン信者で賢振りたい僕としては、この映画の公開を去年から首を長くして待っていました。

他の方がレビューで書かれているように、あくまでこの映画はオッペンハイマーの伝記映画。
映画で1番のキモとなる「トリニティ実験」は、物語の中盤くらいで早々に出てきます。

(少なからずとも腹に抱えている原爆への"憎しみ"や"負の感情"を再確認するんだ!)という物騒な心構えで観に行ったので、原爆投下地を決める会議のシーンやガジェットが完成していく様はそれなりに、渋い顔をして観れたんです。
実験時のカウントダウンのシーンでは、「あぁ…これで。これで…。」と足を震わせながら、怖がりながら見ることができたんです。

ただ、ガジェットが炸裂したシーンで「"恐ろしい"」と思うと共に、どす黒く・橙色に輝く爆炎を見て「"美しい"」と思ってしまった自分にすごくショックを受けました。

そこら辺の同世代よりは、原爆に「憎しみ」の感情を持っているつもりだったのに、「綺麗だな」と思い、どこか高揚してしまった自分に衝撃を受けました。

で更にショックだったのが、終戦後もオッピーはバーコードハゲとバトっていくんですが、そこら辺からこの映画にちょっと"飽きちゃった"んですよね。
(なんだかんだ言いつつも、お前は爆発のシーン目当てで観に行ったんだよ。すごかったよね?ちょっとテンション上がっちゃったでしょ?)
って自分から言われているような気がしてショックでした。

ってな具合で感情グチャグチャになって1週間色々整理して、直前にシコって賢者になり、万全の状態でコレを書いているんですけど、結局グチャグチャになったのでもう終わろうと思います。

この映画を観に行ったことは、両親・祖母には話さないし、周囲の友達にも話せないと思います。

もし、「面白かったよね〜」って言われたらどう反応したらいいかわかりません。「う〜ん、でも…」と言いたくても、あの白い閃光と爆炎のシーンで高揚してしまった自分が邪魔をしてしまい、ゴニョゴニョしてしまうからです。

多分この映画は二度と観れないし観ないと思います。多分、「面白かったなぁ〜」って思ってしまうから。そんな自分が怖いから。

・・・おセンチでポエミーな気分になったのでリンガーハットでも食って寝ます。