漱石枕流

シラノの漱石枕流のレビュー・感想・評価

シラノ(2021年製作の映画)
4.5
〝シラノ・ド・ベルジュラック〟という名前は聞いたことがあるが、くわしくは知らない。また、映画化作品もいくつかあるということだが、私にとっては本作が初めて。そのせいか、まったく先入観なく鑑賞することができた。

純粋に、いい映画だった。観ているとどんどん気分が高揚してくる。最後まで作品世界に心地よく浸れて、エンドロール中もその余韻がつづく——こんな作品はそう多くない。たぶん、20本に1本くらいか。

元が19世紀末に書かれた戯曲ということで、そのせいか物語自体はシンプル。恋愛のストーリーラインだけに限ると、なんだか昔の学園コメディー漫画で見かけそうなものだ。なので、その点では意外性はない。

だけど、この作品はキャストの存在感や演技力、コスチュームや舞台のデザイン、そして音楽と歌声で〝魅せている〟のだ。

「映画とは、基本的にこういうものかも」と思った。綿密に計算された脚本で観客を驚かせるのではなく、ビジュアルとサウンドでしか伝えられないものを最大の売りにする——そこは見事に達成されていると思った。

ピーター・ディンクレイジはコスチュームものがよく似合う。ただヒロインを演じた女優がわからない。「でも、なんとなく見覚えがあるなぁ」と思いつつ、鑑賞後に調べたら『ラブソングができるまで』のコーラだった!

あのキャラクターは好きだったので、この再会はとてもうれしかった。そういった面でもこの作品は印象に残った。

[オリジナル音声+日本語字幕]2023/10/10 WOWOWプライム(09/06録画)
漱石枕流

漱石枕流