Ginny

BLUE GIANTのGinnyのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

原作未読。ドルビーアトモスで鑑賞。

好きな作家さんが大興奮で絶賛していたのとPerfumeかしゆかがインスタストーリーで彼女の持ち味である美しく丁寧な言葉で静かに、熱くお薦めしてくれたのを見て興味を持ち、物は試しと見に行ってみました。朝8:45の回。

めぢゃめぢゃ良かった(T_T)

鑑賞前にチラ見した漫画を読んだ人の感想の中には、ストーリーが駆け足すぎて漫画を読んでないとついていけないかも、とありましたがその心配もなくむしろテンポ良く進み良かった。
この短いシーンにも、この人間関係にもストーリーがもっとあるのだろうと思えたけれど、2時間程度の映画にするために必要な要素を判断して取捨選択し、見る側が理解しやすく作る側が伝えたいものを伝えられる、その塩梅がよく、脚本のNUMBER 8さんが編集者だったということが大きいのではと思った。
多く時間を割いて台詞を用意して語らせないと伝わらないということはなく、ある程度表現にはベタなものが存在するので、絵によって、出来事や何を思ってるかわかるもの。受け手の理解力を信じた懸命な編集力と感じました。

BAR TAKE TWOでアキコさんがレコードを鳴らした瞬間、音がすんごく良くてドルビーアトモスにして良かった〜となった。

映像は人物の動きのCGが酷いところもあるけれどそこを補って余りある程に音楽と演奏の観念的な表現などその他のアニメーションが素晴らしい。

アニメ映画で良かったなと思いました。
声優さんではなく俳優さんが声を当てているけれど遜色ないどころかめちゃめちゃ良いので、逆に言えば本人たちが実写できたのでは、とも考えられるけれど、実写だとBLUE GIANTならではの音が見える表現は活かせない。
音がない漫画だからこその、大たちの演奏の伝わる様の表現が、アニメでも開花してる(って雪祈のピアノソロとか大のサックスの観念的な表現は漫画にあると思ってるけどなかったらアニメ凄いってことで)。

雪祈のコットンズでのピアノソロ。
涙がツーっと止まらなかった。

ピアノとクラリネットの経験はあるけれど、リズム感がなくてクラシックが好きなのもありジャズはうまく乗れず理解できず良さが分からず。どう聞いたらいいのか楽しんだらいいのかわかんないなんて、つまんないこと思っていた。
この映画を見て、ジャズの楽しみ方が音楽で伝わってきた。こんな自由でいいんだ、こんなにジャズってナマモノなんだ、こんなにジャズって響くんだ、って。
うまく言葉で表現できないけれど、あの演奏が心にヒシヒシと伝わって震わされた。シビれた。

ルフィみたいに真っ直ぐで熱意ある大も、クールで冷たく見えて熱く優しい雪祈も、素直で健気で頑張り屋な玉田も、三者三様魅力的な人柄で良いし、その中心人物だけでなくアキコさんや成長見守るおじさんや的確な指摘をくれる大人なソーブルーの人とか優しい人たちが多く心地よく見ていられるのかな、ねぇ、嫌なこと起きないよね?なんかフラグ立ちそうだけど…玉田か…?いや、雪祈だ!!!!!!!!!!!

もうほんっとうにショックだった。
フィクションであるあるな展開だと思うけれど、見ている時に出たよこの展開と冷めた気持ちにはならなかった。フィクションでなくてもこういった悲しいことは起きがちと思っている。なぜ、この人の一番大事なところが、みたいなことは往々にして(いや、件数は多くないけれど、才能のある人に降りかかる不幸の話は聞くことがそれなりにある気がする)あると思ったからすんなり受け入れられた。
許しはしないけど…過剰に運転手を責める素振りがなく、やるべきこと、やりたいこと、ポジティブな方向に動いているのが良かった。

アンコール前に現れるなんて思わないじゃん。
眼帯やギプスも包帯もした状態のまま弾けると思わないじゃん。涙ボロボロ出てくるじゃん。
JASSが解散だなんてつらいけどわかる、けどさみしいじゃん。泣けるじゃん。
って、本当もう、ラストの演奏はストーリーも感動だし演奏も素晴らしいしアニメーション表現も抜群だしで圧巻でした。

大が小さい頃にジャズの演奏を見て惹かれて興奮してハマっていく様子は、同じような経験がある人は気持ちがわかってグッとくると思う。私は映画を好きになった頃を思い出して目頭が熱くなった。一生懸命だったなって。
ずっと情熱を持ち続けて、まっすぐな大が凄く良い。
だから、ジャズを知らなくてもわからなくても、自分の中にあるその経験がくすぐられて楽しめるんじゃないかな?とも思う。

上原ひろみさんが担当されるってどんな贅沢?!どうやって話をつけたの?と気になっていたのがSpotify聞いたら色々わかりました。(https://open.spotify.com/episode/6H9oGjl1tFwc1QWEzgidpM?si=ifowqLwwRLeA4bx7Mtd6Mw)
映画音楽制作に3年もかかったなんて…いや、スゴイ。大の演奏担当馬場さん、玉田の演奏担当石若さんもすんごいですし、キャラクターの演奏に合う人を選んだというのがまた良い。

しね って過敏に反応する人いそうだなと思ったけどすごく私は良いなと思ったしジャズが少しわかった気がする。ジャズ=しね という言葉ってわけではなく。
今日しんでも後悔ないくらい出し切るとか、力尽きてしぬくらい生命をだしきって演奏する、とかそういう風に受け止めました。
ジャズのライブ感ナマモノ感、演奏してる人その場で聴ける人だからこそ感じられるものがあるんだなっとわかり改めて生演奏の価値を感じた。
BLUE GIANTのサントラを聴いても、良い音響環境ないのでコンパクトな音楽になってしまい物足りなくなってます。映画館、しかもドルビーアトモスで体に音の振動が伝わるくらいの大音量で浸れたのも幸せだな、と。
映画館で絶対見た方が良い。

BLUE GIANTというタイトルなだけあり、青みがかった彩色が美しい。

タオルケット?被ってバケツを叩く玉田可愛すぎる。
怠惰な理由の留年はダメだけど、今これをしなきゃ!というタイミングの留年は全然アリだと思うので玉田の判断ナイスすぎる。

良い映画を観た後は、外の景色が美しく煌めいて見える。この映画の後もそうでした。
Ginny

Ginny