りょう

ラーゲリより愛を込めてのりょうのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.1
新年1本目は映画館で!ということで仕事終わりで涙活でもしようかとこの映画。

何度か観た予告編でも泣かせに来ている感じだったので、その感じがあまりにも露骨だったら嫌だなぁと思って半分期待しないマインドセット。

なんだけど、役者陣がみんな素晴らしくて結果大泣きしました。

希望、生きること、幸せ、人間の根本でありシンプルなメッセージをストレートに伝えてくれる。戦時下やラーゲリの中で、俳句を詠むこと、文字を書くこと、野球をすること、いつか日本に帰って家族と再会すること、戦争を経験していない私たちにとってはあたりまえな楽しみが、人を笑顔にし、生きる希望を作った。

家族との再会すら叶わないと知った松田や相沢はどうして生きる希望が持てたのか。山本の遺書を誦じられるよう記憶することで、しかもそれが自身の母への妻へのそれぞれの思いとも相まって、何があっても生きたかった山本のためにも生きねばならないと思ったのだろうか。

この映画を通じて、幸せに生きるということについて考える。好きな人と好きなだけ連絡が取れるスマホがある、食べたいものをだれかが持ってきてくれる、電気が足りなくなるほどあったかく過ごせる、それでも幸せを感じられない人もいる。
一方で、字が書ける、手紙が読める、あの人がまだ生きている、そのことだけで生きたいと思えることもある。時代が変わり比べることは出来ないけれど、外的環境ではなく自分の心が幸せを決める。

山本が家族に宛てた遺書には大切なことがたくさん詰まっていた。母には先立つ親不孝を詫びていたから、親への孝行の大切さ。妻には家族を守った労いを。子供には道義が全てに優先すること。

主演のニノはもちろん良かったし、松坂桃李、桐谷健太、ヤスケンも抜群に良かったのですが、個人的には北川景子の泣く姿に心を打たれました。割とその端正な顔立ちからキリッとした役が多いイメージだったけど、深い悲しみに崩れ落ちる姿に涙腺崩壊。私の中で北川景子ベストアクトです。

最後の寺尾聰の結婚式の件は冒頭のシーンとの繋がりを持たせて締めるということでしたが、別に要らなかったのでは…今にも伝えていきたいということか。

戦争+家族愛というストレートな映画にも関わらず、度々出てくる「一等兵」という言葉。すべらない話の矢野兵藤・兵藤の「一等兵と二等兵と三頭兵と四等兵〜」が頭によぎってしまい、その邪念を払うのに必死なのでした。
りょう

りょう