土平木艮

ゴヤの名画と優しい泥棒の土平木艮のネタバレレビュー・内容・結末

ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あらすじ…1961年、英国。法廷で裁判が行われている場面からスタート。被告人は主人公ケンプトン→→ケンプトンはタクシー運転手をしながら戯曲を書いている。妻ドロシー、次男ジャッキーと3人暮らし(長女もいたけど亡くなってる模様。夫婦はお互いに、娘の死に対する言葉に出来ない思いを抱いてる模様)→『年金受給者の"公共放送BBCの受信料無料化"』を求める活動をしているケンプトン。自身も受信料不払いで刑務所入り→ドロシーは家政婦として働き家計を支えながら、夫に『家庭を顧みて欲しい』と思っている(→ タクシー運転手もクビになり、パン屋で働いても正義感が原因でクビになる…などまっすぐで不器用な人柄のケンプトン→)→出所後、英国政府がゴヤの名画『ウェリントン公爵』の海外流出を防ぐために14万ポンド(現在の価値で300万ポンド)で購入したことをニュースで知る→『BBCの受信料無料化』の活動のため、ロンドンに出かけるケンプトン→ロンドンのナショナルギャラリーから『ウェリントン公爵』が盗まれる事件が発生→ケンプトンの自宅に『ウェリントン公爵』が。ケンプトンが盗んだ?模様。ジャッキーと2人で『公爵』を箪笥の奥に隠す→ナショナルギャラリーは『公爵』に5000ポンド(現在の価値で10万ポンド)の懸賞金をかける→ケンプトンは(当然素性を隠し)『公爵』を人質に『受信料無料化』を要求する。国はこの話題で持ちきり→長男ケニーが恋人(不倫関係)パミーを連れて家に転がり込む→パミーが『公爵』を発見、懸賞金の山分けを持ちかけケンプトンを脅す→パミーに『タレコまれる前に』と、ケンプトンは『公爵』を返却に堂々とナショナルギャラリーを訪れる。すぐ逮捕→ケンプトンの弁護にあたるのはヤリ手のハッチソン弁護士→法廷で陪審員や傍聴人にジョークを交えながら自分の意見を述べるケンプトン→→(ドロシーとのやり取りの場面が挟まれる…)実は『公爵』を盗んだのはジャッキーだった。息子を庇うと同時に『受信料無料化』を実現しようと目論んで、敢えて『主犯』となったケンプトン。ドロシーは相談してもらいたかった様子→→ハッチソンの最終弁論の後、判決。『公爵』の入っていた額縁(ジャッキーが盗難した後に紛失しており返却不可能な状態)を盗んだ罪だけ有罪。『公爵』自身を盗んだ罪に関しては無罪→『額縁』の分だけ刑務所入り。出所の日、ドロシーが刑務所に迎えに来る。夫婦二人で帰宅→→後日。良心の呵責に耐えかねたジャッキー、恋人に付き添われて警察に自主。でも、警察の粋な計らい?により不問→ケンプトンとドロシー、二人で長女の墓参り→→(エンドロール)2000年。75歳以上の高齢者はBBCの受信料が無料になった模様。


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予告編を観てから、楽しみにしてた作品。


結果…予想以上に面白かった。


正義感・義侠心に溢れたオジイちゃんが主人公の、コメディタッチの感動モノかと思ってた。

実際そうなんだけど、そんな単純な表現では説明不足な感じになってしまう。

てっきり絵を盗んだのはケンプトンだと思ってたら…のミスリード。この辺で『やられた』感を覚えた。ここで『単純な感動モノ』に収まらず娯楽作品としても良く出来てるな、と感じた。

って言うか、これが実話だというのが驚き(脚本のベースを書いたのはケンプトンのお孫さん)。


ケンプトンのウィットに富んだ言葉の数々や、法廷でのハッチソンの最終弁論の内容など、アメリカ映画とは違う、このイギリス映画の感じは好き。オシャレで粋な感じ。


ジム・ブロードベントとヘレン・ミレンの『"長年連れ添った夫婦"感』満載の演技が味わい深い。


『あなたは私、私はあなた。あなたが私を、私があなたを存在させる』『私は一個のレンガに過ぎない。あまり役には立たないが、無数に積めば家が出来る。その家は涼を提供できる』…などの名言の数々も有り。


派手な作品が好きな人は別だけど、多くの人にオススメしやすい一本だと思う。


笑って、泣けた。良い作品。



⚫︎当時の街の映像(多分)を使用して1960年代感を強めたり、場面転換の仕方が面白かったり(これも良い意味で"古く"て、この時代を感じさせる)、『画』も面白かった。


⚫︎因みに、現在のBBCの受信料は『75歳以上の"一部の高齢低所得者"のみ無料』らしい。
土平木艮

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