シュローダー

アンビュランスのシュローダーのレビュー・感想・評価

アンビュランス(2022年製作の映画)
4.8
「ハリウッドの破壊大帝」「観るラーメン二郎」でお馴染みマイケルベイの最新作。枯れる事を知らぬ彼の映画への飽くなきパッションが迸る快作だった。今回の「LA壊し祭り」も、やはり狂っている。単純な銀行強盗の筈が「スピード」の如く止まらない救急車での一大チェイスに雪崩れ込む。そのカオスを本当に車を何百台と爆破させ、カーチェイスの横をヘリでぶっ飛ばし、LAを戦場にしてしまう。そしてそんな画を本当にカメラの中に映してしまう。これぞマイケルベイ映画。車の大爆発は100回くらい起きるのでもはや気にならないが、部屋の中でも外でもお構いなしにブンブン飛びまくるドローン撮影がヤバすぎる。普通の空撮かと思ったらいきなり急降下して地面に激突しそうになったと思いきやそのままカーチェイスを撮る頭のおかしい撮影をしてるお陰でとにかく全編目が離せない。しっちゃかめっちゃかのカメラワークによる情報の波を叩き込むいつものマイケルベイ編集に加えて、物語の密度もまさかの群像劇スタイル。犯罪者、警察、人質、各々の物語が止まらぬ救急車の如く玉突き事故を起こしていく。この物語の捌き方が思わぬエモーショナルを引き起こすラストへと繋がっていき、色んな意味で、マイケルベイ映画史上最も「立体的」な映画に仕上がっている。役者陣も全員良い顔が揃っていたが、やはりジェイクギレンホールのヤケクソ演技とヤーヤアヴドゥルマティーン二世の良い奴演技のアンサンブルが互いを引き立て、ベイ映画ならではの高血圧なバイアスに上手くハマっていたのが印象的だった。途中にブッ込まれる「え? 正気?」と引き笑いをせざるを得ない超絶悪趣味残酷ギャグなど、やはり「バッドボーイズ2バッド」や「ペイン&ゲイン」「6アンダーグラウンド」を撮った男は違うぜ。と思わされるディテール含め、全編大満足。観る前にどんなに嫌な事があっても観た後には全部どうでもよくなってニコニコで映画館を出る事が出来る。映画の野生の魅力に立ち会う刺激的な体験だった。