CHEBUNBUNさんの映画レビュー・感想・評価 - 20ページ目

第三次世界大戦(2022年製作の映画)

3.5

【日雇労働者、ヒトラーになる】
第35回東京国際映画祭コンペティション部門に選出されたイラン映画『第三次世界大戦』。本作はB級映画っぽいタイトルながらもヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で作品賞と
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Notes on an Appearance(原題)(2018年製作の映画)

3.0

【注目監督Ricky D'Ambrose】
Ricky D'Ambrose監督作。地図や手紙、新聞、ホームビデオを羅列する。観客は断片的な情報を基に、重要な政治理論家Stephen Taubesについ
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コンビニエンスストア(2022年製作の映画)

3.5

【コンビニというプランテーション】
モスクワ郊外のコンビニエンスストア「プロデュクティ24」。ここではウズベキスタンから来た移民が住み込みで働いている。妊娠していようが、昼夜働かされている。逃げようも
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独裁者たちのとき(2022年製作の映画)

4.3

【歴史上の人物はあの世で思想を冷却保存される】
第35回東京国際映画祭にアレクサンドル・ソクーロフ監督新作『フェアリーテイル』が来るとのこと。本作はヒトラーやチャーチル、イエス・キリストなど歴史上の人
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セカンド・チャンス(2022年製作の映画)

3.1

【防弾チョッキを生み出した男】
『ザ・ホワイトタイガー』、『華氏451(2018)』のラミン・バーラニ監督がCPH:DOXにドキュメンタリー映画を出品していた。防弾チョッキを発明した男の人生を追った作
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波が去るとき(2022年製作の映画)

4.0

【暴力は冷たく停滞をもたらす】
第79回ヴェネツィア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に出品されたラヴ・ディアス監督最新作『波が去るとき』。事前情報だとアレクサンドル・デュマ・ペール「モン
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恋人はアンバー(2020年製作の映画)

4.5

【恋愛はむごい】
アスミック・エースさんから「ぜひご覧いただきたい作品があります!」と11/3(木・祝)公開の『恋人はアンバー』の試写を観ることになった。本作は、第29回レインボー・リール東京、第31
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大いなる運動(2021年製作の映画)

4.7

【ボリビア、大都市での停滞、そして腐食】
第78回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門にて審査員特別賞を獲ったボリビア映画を観た。ボリビア・ラパス出身のKiro Russo監督は長編デビュー作『Vi
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バビ・ヤール(2021年製作の映画)

5.0

【他者からの文脈を前に我々は何も見ていない】
歴史とは、「ヒトラー」、「スターリン」のように固有名詞として後世に語り継がれる人だけで紡がれるものではない。それ以外の、忘れ去られた人の運動と結果が地層の
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ハーモニー・レッスン(2013年製作の映画)

4.0

【無視できない、でも叫べない痛みの避雷針は"虫"】
先日、スペースで第35回東京国際映画祭有識者会議を行った。私が一番楽しみにしているのはカザフスタンの『ライフ』である。本作は、就職した男がうっかり会
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フォーエヴァー・モーツアルト(1996年製作の映画)

3.7

【Je pense, donc je ne suis pas】
菊川にできた映画館Strangerでゴダール映画『フォーエヴァー・モーツアルト』を観た。本作は『女は女である』にてアンナ・カリーナに引
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パッション(1982年製作の映画)

3.8

【仕事と快感は表裏一体だ!】
菊川に新しくできた映画館Strangerに行ってきました。今回はジャン=リュック・ゴダール映画『パッション』を観ました。

映画は現実の風景を映すが、「真実」の外側にある
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フランコフォニア ルーヴルの記憶(2015年製作の映画)

4.2

【「過去」が層をなす美術館】
第35回東京国際映画祭にてアレクサンドル・ソクーロフ新作『フェアリーテイル』が上映される。本作はディープフェイクを用いてヒトラーやレーニン、イエスキリストを同時共存させる
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カルト(2012年製作の映画)

3.5

【怪奇現象はカメラを持っていない時から起きている】
白石晃士監督はPOV映画にグラデーションを与えた監督である。『クローバーフィールド/HAKAISHA』や『REC/レック』などゼロ年代後半に、手持ち
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ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

3.0

【目には目を、暴力には暴力を】
『ウィッチ』、『ライトハウス』で注目されたロバート・エガースが「ハムレット」のモデルとなったアムレートの物語を映画化。監督初の超大作だったのですが、これが壮絶な内容であ
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ヌーヴェルヴァーグ(1990年製作の映画)

4.7

【社会は冷たい、個は温もり】
ジャン=リュック・ゴダール追悼として『ヌーヴェルヴァーグ』を再観した。本作は、以前TSUTAYA渋谷店でVHS借りて観たのだが、横移動を通じて文字通りの「NOUVELLE
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A Piece of Sky(原題)(2022年製作の映画)

4.0

【孤独な山奥で私たちはただ耐え忍ぶのみ】
第72回ベルリン国際映画祭スペシャル・メンションを受賞したスイス映画『A Piece of Sky』を観た。これが非常に良くできた作品であった。

スイスの山
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雨を告げる漂流団地(2022年製作の映画)

3.0

【団地から見る閉じ込められた過去】
今年は団地映画が盛り上がっている。『パリ13区』、『呪術召喚 カンディシャ』、『Love Life』と団地を舞台にした作品が公開/配信されている。団地映画といえばフ
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女は女である(1961年製作の映画)

3.5

【本の表紙で対話する男女】
部屋を立体的に収めるにはどうすればよいか?正解は、カメラをぐるっと回すであった。ゴダールが提案する、本の表紙を使った会話がとても好きであった。

白衣の男(1951年製作の映画)

3.5

【新素材は世界を救わない?】
アマゾンプライムビデオに『ラベンダー・ヒル・モブ』と併せてイーリング・スタジオ製作のコメディ映画『白衣の男』が配信されていた。これが興味深い作品であった。

繊維工場の研
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ゴダールの決別(1993年製作の映画)

3.5

【You go c'est la vie】
ジャン=リュック・ゴダール追悼ということでアマプラにて『ゴダールの決別』を観た。『ゴダールの探偵』以上に読み解く取っ掛かりを掴みにくい作品ではあったが、画
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ラベンダー・ヒル・モブ(1951年製作の映画)

3.0

【金塊をエッフェル塔に錬金!】
「死ぬまでに観たい映画1001本」イーリングコメディ。金塊をエッフェル塔のミニチュアに替えて海外輸送する泥棒もの。エッフェル塔の撮り方がイカしていたり、ハリボテの壁を
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ゴダールの探偵(1985年製作の映画)

3.7

【見るは欺く、真実はいつもひとつ】
昨日、ジャン=リュック・ゴダールが亡くなった。ゴダールの映画は正直、そこまで好きではない。「カッコいい画は撮れるが、物語れない」自分に対して開き直っているので、内容
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私たち(2021年製作の映画)

3.5

【対話で繋ぐバラバラになったもの】
第79回ヴェネツィア国際映画祭審査員大賞を受賞した『Saint Omer』。監督のアリス・ディオップはフランス生まれのセネガル人。ドキュメンタリー作家であり、『Le
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夏へのトンネル、さよならの出口(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

【停滞の穴を突き進む夏】
今年の3月にVTuber動画に触れ、「いずれ映画のコメントをVTuberが出す時代が来る」と思った。映画業界は映画館へ人を呼び込もうとサロン的なものを作ろうとしたが、あまり上
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LOVE LIFE(2022年製作の映画)

3.7

【人生は「待った!」と引き返せないオセロのようだ】
『歓待』、『淵に立つ』、『東京人間喜劇』、『本気のしるし』と人間の裏表をオセロゲームのように描き、部屋の中で白黒共存する世界を描いて来た深田晃司監督
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牡牛座 レーニンの肖像(2001年製作の映画)

2.5

【霊的世界への誘い】
ソクーロフが描く死にゆくレーニン像。肉体が膠着し、記憶が朧げになる様子を、三途の川のような色彩で描くことで魂が抜けようとする様を表象している。

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト(2021年製作の映画)

3.0

【形而上学的世界の中心で葛藤を叫ぶ】
日本のアニメ映画は時としてゴダール映画より難解だったりする。スターの花道を駆け上がる役者たちの葛藤が舞台になり、断片的に切り貼りされていく本作はよく分からない作品
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ANIARA アニアーラ(2018年製作の映画)

4.2

【泥舟から神を渇望し見捨てられ】
ノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソンの代表作の映画化『ANIARA アニアーラ』がAmazon Prime Videoにて配信されていたので観た。これが「今」
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13ゴースト(1960年製作の映画)

4.0

【メガネをかけてごらん、ほら幽霊が1,2,3...】
ウィリアム・キャッスルの自伝『STEP RIGHT UP!』は分かりやすい英語と疾走感ある語りがとても面白く、また次から次へと飛び出すビックリエピ
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ミスター・サルドニクス(1961年製作の映画)

3.5

【結末は観客に委ねられた。】
松永伸司「ビデオゲームの美学」にて、映画、絵画=鑑賞、ゲーム=受容の方程式を提示された。ゲームは、自らのアクションによってゲームキャラクターが反応する。その相互作用を楽し
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ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦(2022年製作の映画)

4.5

【運命の赤い溶岩】
アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にはサンダンス映画祭で賞を獲った作品が来るイメージがある。『FLEE』や『行き止まりの世界に生まれて』がそれに該当する。さて、それを踏まえると、
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オカルトの森へようこそ THE MOVIE(2022年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

【神の眼差しを奪い、決定的瞬間を眼に焼き入れる】
先日、『NOPE/ノープ』スペースをした際に、映画仲間が「NOPEよりNOPEしてた」と『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』を絶賛していたの
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アキラとあきら(2022年製作の映画)

4.0

【僕は社会のベアリングになりたい!】
下半期は三木孝浩監督作が3本も公開される異様な状況となっている。三木孝浩監督といえば『青空エール』、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』など感傷的な演出の職人監
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ある脅迫(1960年製作の映画)

3.0

【銃型ライターっていいよね】
日活フィルムノワール。序盤の銃を持った男と突きつけられた男の緊迫の末に、カチッ火がつきライターであることが分かる演出がクールであった。しかし、フィルムノワールが苦手な私に
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さかなのこ(2022年製作の映画)

2.5

【グロテスクな純粋さで全てを薙ぎ倒すさかなクン像】
さかなクンの半生が映画化。なんと主演は「のん」ということで公開前から話題になっていた。沖田修一監督好きとして観に行ったのだが、あまりにグロテスクで、
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