francois708さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

francois708

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COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)

4.0

モノクロなのに、カラフルだった。
オーディションでのアカペラの歌でいきなり引きずりこまれて、その後もたくさんの歌と踊りが美しい。
ズーラ役のヨアンナ・クーリクの歌声に魅了される。

私はひねくれ者なの
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背徳と貴婦人(2017年製作の映画)

4.0

中国のこの時代の肖像画は人物を真正面から描くのが、西洋の絵画を見慣れた我々には奇異に思える。
高貴な人とその肖像画を頼まれて描く画家のあいだにいつのまにか親密さが芽生えるストーリーは「燃ゆる女の肖像」
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レイルウェイ 運命の旅路(2013年製作の映画)

3.5

物語の後半の、元捕虜と元日本兵通訳のあいだの息づまる対決で、前者は後者に一人称単数で話せという。われわれでも彼らでもなく〈私〉がどう考えたか、なぜこのように行動したのか、それを語らなければ何も始まらな>>続きを読む

25年目の弦楽四重奏(2012年製作の映画)

4.0

私の大好きな作品131の四重奏曲がテーマになっていて、それだけですでに高評価です。
第1ヴァイオリンのダニエルがアレクサンドラにレッスンするとき、数小節でさえぎって、この曲を演奏する前にまずベートーヴ
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青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)

5.0

10歳のムイと20歳のムイを違う女優さんが演じているのだけれど、まるで一人の人が成長したかのようによく似ていて、それは顔立ちだけでなく、しぐさから表情やたたずまいから、主人の邪魔にならないように音もな>>続きを読む

漂うがごとく(2009年製作の映画)

4.0

ヴェトナムの映画は初めて。「インドシナ」での熱演が忘れがたいリン・ダン・ファンが目当てだったのだが、全体としてとてもいい映画だった。
たとえば蠟燭一本をともしただけの、薄明りのシーン、その窓から差す光
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ライフ・イズ・ビューティフル(1997年製作の映画)

4.0

アレッツォの街が舞台とのことで、アレッツォといえばグイド・ダレッツォ、ドレミの階名を考えだしたあの音楽家を連想していたら、主人公のなまえがグイドだったので驚いた。たぶん意識的にあやかっているのだろう。>>続きを読む

ローマ、愛の部屋(2010年製作の映画)

5.0

ナターシャがアルバに自分の名前の発音の仕方を教えるときの「シ」のときに口を丸めて突き出す、そのようすが好きだった。
「アデル」「キャロル」「エルサとマルセラ」「彼女(水原希子)」などいくつか見たレズビ
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モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)

5.0

生まれたばかりの赤ちゃんがほんとうに愛情をこめて撮られていて、もうそれだけでうれしい映画。
泣くばかりではなくて、くしゃみしたり、おならしたり、ちいさくうめいたり、赤ちゃんの出すいろんな音がきこえ、ち
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カプチーノはお熱いうちに(2014年製作の映画)

4.0

なれそめの年と13年後とのあいだに欠けている場面があり、それは最後の10分で補われる。
13年前に訪れた同じ秘密の浜辺に、今度は自動車で向かう二人に、偶然通りかかるバイクに乗ったカップル、それはまるで
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午後8時の訪問者(2016年製作の映画)

5.0

原題 La Fille Inconnue 「身元不明の娘」
その娘の名前はなんだったのかを探し求める、ただそれだけのストーリー。
名前がなければ呼びかけることも、弔うこともできず、存在しないことにされ
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ナポリの隣人(2017年製作の映画)

4.0

原題 La Tenerezza は英語の Tenderness にあたる「やさしさ、愛情」のような意味。
やさしい気持ちは、ともすれば空回りしたり、届けたつもりなのに届かなかったり。
仲たがいしている
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危険なプロット(2012年製作の映画)

4.0

フランス語を勉強していた学生時代、初級文法を終えるとすぐ、週一回の作文を課され、毎回真っ赤に添削されて返されたのを思い出した。作文の形式や書き方にも細かい指導があり、あの国には厳格な作文指導のメソード>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

5.0

ずっと他人行儀の vous で呼びあってきた二人だったが、最後の最後で初めて tu で呼ぶのはエロイーズの「振り向いてよ」Retourne-toi の叫びだった。万感こめて振り向くマリアンヌの表情が切>>続きを読む

はじまりの街(2016年製作の映画)

4.0

マルゲリータ・ブイという女優さん、以前「日々と雲行き」で好きになった。中年にさしかかった女の人の不安や焦燥や小さな喜びを、この映画でも美しく演じている。
脇役の人々も面白くて、アンナの独身の友人のカル
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ある過去の行方(2013年製作の映画)

4.0

まったくの偶然なのですが、きのう見た「乙女たちの秘めごと」の主演のヴィオレットと、きょう見たこの映画のリュシーが同じ女優さんだったことに、終わってから気がついた。ぜんぜん違うキャラクターだったもので。>>続きを読む

乙女たちの秘めごと(2017年製作の映画)

4.0

日本語のタイトルがひどすぎるのだが、原題は Le Semeur, 種まく人。ほんとうに種を蒔いて去っていく人の話だった。
美しい田園風景、そこから男たちが拉致されていく展開は、少し前に見たテレンス・マ
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17歳(2013年製作の映画)

4.0

うちにも17歳の娘がいるので他人事と思えなくて。
ヴァカンスでくつろぐ家族の肖像が印象に残る。こんなふうにのんびりと日々を過ごすならば恋のひとつも生まれようというもの。日本でも最低4週間の有給休暇を義
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日々と雲行き(2007年製作の映画)

5.0

楽しかったパーティーの翌朝足に怪我をしてしまうシーンが、その後の不吉な雲行きを予告する。
足を痛めた妻をお姫様だっこしようとする夫は優しいように見えるが、妻を守らねばという義務感に縛られて身動きが取れ
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台風クラブ(1985年製作の映画)

4.0

封切りの時見て以来数十年ぶりにふたたび鑑賞した。
ただいま、おかえり、ただいま、おかえりと繰り返しながら出たり入ったりする男の子、フランクのヴァイオリンソナタが流れるなかでの男女三人のとりとめない会話
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ザ・プレイス 運命の交差点(2017年製作の映画)

4.0

いろいろな悩みや願いをかかえてやってくる依頼主に男が下す任務はむちゃくちゃなもともあるけれども、なかにはなるほどと思うものもあって、たとえば、もはや神を感じられなくなった修道女がもういちど神を感じたい>>続きを読む

おとなの事情(2016年製作の映画)

5.0

エヴァの焼いたミートローフも、カルロッタの差し入れた手作りティラミスも、食べられないままにお開きになったのですね...
小気味よいテンポで交わされる食卓の会話が楽しい。そこにいつのまにか暗雲が立ち込め
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彼は秘密の女ともだち(2014年製作の映画)

5.0

女になりたがる男というテーマでは、先日見た「リリーのすべて」と似ている。身近に理解ある相談相手(コンフィダント)がいるところも。
しかしいろいろ違うところもあって、リリーは自らの性別に強烈な違和感をも
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セックスと嘘とビデオテープ(1989年製作の映画)

5.0

低予算で作った映画らしく、贅肉のないひきしまったシンプルな構成で、四人の男女の室内楽のような会話を中心に進む。
たとえば音楽に、サビのフレーズやクライマックスのようなものを、音楽で「イク」ことを人は求
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幸福なラザロ(2018年製作の映画)

5.0

ラザロではなく、ラッザローのように聞こえるのがイタリア語の発音なのですね。
もちろん聖書のラザロを踏まえているのだが、ラザロには二人いる。一人はルカ福音書の貧乏なラザロで、金持ちが暖衣飽食している軒先
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ラスト・パラディーゾ(2021年製作の映画)

5.0

チッチョの葬式の場面でははからずも泣いてしまった。
L'ultimo Paradiso (The Last Paradise)というタイトルは有名な映画「ニューシネマパラダイス」Nuovo Cinem
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追想(1975年製作の映画)

5.0

教会の聖堂に折り重なる死体を目の当たりにした男が呆然と立ち尽くすとき、ふと目に入ったキリストとマリアの像を激しい発作のようにたたき壊すシーンは、神よどうして私を見捨てたのかという十字架上のイエスのこと>>続きを読む

シンプルな情熱(2020年製作の映画)

4.0

映画館で映画を見たのは何年ぶりだろう
ダニエル・アービッド監督「シンプルな情熱」見てきました
タイトルの Passion simple はもしかして単純過去 passé simple とかけているのか
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インドシナ(1992年製作の映画)

5.0

まるで白馬に乗った王子様のようなフランス海軍士官に助けてもらって一目惚れしたころのカミーユは、まだ何も知らないいいとこのお嬢さんだったけれども、その恋を貫くうちに、植民地支配の矛盾と歪みを目のあたりに>>続きを読む

リリーのすべて(2015年製作の映画)

5.0

デンマークの二人のアトリエの、簡素で幾何学的で寒色系のインテリアは、同じ国の画家ハンマースホイを想起させ、それだけですでに美しい。その後移り住んだパリのアトリエは対照的に暖色系で肉感的で、それがリリー>>続きを読む

田舎の日曜日(1984年製作の映画)

5.0

「田舎の日曜日」Un dimanche à la campagne という映画のことを教えてくださったのは阿部良雄先生。
フランス象徴詩の講義の合間の雑談でした。
「蓮實重彦などはけなしていますが、私
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ユダヤ人だらけ(2016年製作の映画)

4.0

開始数分後、監督のインタビューで「ジュ・スイ・アテ」を字幕で「私はアーティスト」と訳していたが、たぶん je suis athée で「私は無神論者だ」と言っているのだろうと思う。そう、彼はユダヤ人で>>続きを読む

存在のない子供たち(2018年製作の映画)

4.0

印象的なのはゼイン少年の弱いものを助ける精神だった。妹が経血でスカートを汚しているのを見つけて、そっと注意して着替えさせ(そのあいだは目をそらし)、汚れた下着を洗い、自らのシャツを脱いで丸めて、それを>>続きを読む