紅茶さんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

紅茶

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太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)

4.4

これは面白すぎる。原爆の作り方を日頃から生徒に教える理科教師がプルトニウムから原子爆弾を作ってしまう。それによって自分が抑止力となり、国を動かすトンデモ映画。発想が頭ひとつ抜けていて、それを大きなスケ>>続きを読む

羅生門(1950年製作の映画)

4.2

人間の脆さがこれぞとばかりに炙り出された映画。デマカセで塗り固めた文句で煽る人間は現代社会に五万といて、それが露わになったのがこのコロナ禍。世界に不信感が募る今、見るべき一作。視聴環境が悪かったため、>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

4.3

「生きる」ことは難しい。
ジャングルジム越しのショットから映し出される、「ゴンドラの唄」を歌う志村喬は自分なりの「生きる」を見つけたかのよう。また、本作はお役所仕事を社会批判的に描き、主人公が何もしな
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手紙は憶えている(2015年製作の映画)

3.8

これは『スパイの妻』の蒼井優さんの言葉を借りて「お見事!」と言うしか無い。
『メメント』でもそうだったけども、記憶障害を持つ人は利用される存在になってしまう。そこを鋭い視点で本作は描いていて、自然に物
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チェイサー(2008年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ことの始まりは主人公の思いがけない行為によるものだという印象を受け、いたたまれない。後半の主人公は犯人への怒りというよりも内省モードになってる気がする。それにしても韓国都心部の坂の急勾配加減は映画に向>>続きを読む

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

4.1

アデルの心模様の変化はかなり繊細に描かれている。満たされない気持ちがどこかにあって、それは孤独か自分の夢か恋愛に依るものなのか。それらが錯綜する複雑な心情によって悩まされるアデルと軸を常に持っているエ>>続きを読む

7番房の奇跡(2013年製作の映画)

-

このような類の映画は評価しづらいのでスコアを付けないけども、これは完全に何度観ても泣いてしまう映画。過度な演出や無理なキャラ設定ほか違和感を憶えてしまう点があり、御涙頂戴の系統にカテゴラズされてしまう>>続きを読む

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

女性二人の逃避行ロードムービーの名作を地元の商店街で購入。物語に出てくる男性キャラクターはとことん性根が腐っているが、彼らを通じて彼女たちはよりタフに生きることを決意していく。大型トラックの変態な兄ち>>続きを読む

サンセット大通り(1950年製作の映画)

4.2

映画業界内を題材にすることはこの作品以前はあまり無かったかもしれない。その点でこのモチーフの重要性がわかる。
倒叙法によって主人公の死から始まるストリートをナレーションによって回想してあくかのような展
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ハイ・フィデリティ(2000年製作の映画)

3.9

多くの失恋経験から今の恋人との関係を克服していく物語。彼女の生き方の変化に対応していく主人公を演じるジョン・キューザック、レゴード店の従業員二人の個性が強過ぎて風変わり過ぎない印象に留まっていて良い。>>続きを読む

歓待(2010年製作の映画)

4.0

パラサイトだ…。『家族ゲーム』にも似た、外部の新参者によって家庭がカオティックになる瞬間。このカオス的瞬間が、個人的に好物なので非常に楽しめた。あと古舘寛治さんの風変わりな風格が素晴らしいですね。

CURE キュア(1997年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

これはゾッとしますね。生肉が夕食で出される演出も怖い。なんといっても最後の終わり方が素晴らしい。あのシーンで切り上げたことでその後の展開を観客に全て委ねられた感じがある。途中と最後のファミレスでのシー>>続きを読む

戦場にかける橋(1957年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

イギリス捕虜と日本兵のプライドのぶつかり合いを描いた57年の作品。特にイギリス側では2つの違う価値観が示される。立派な橋を作る派と橋を爆破する派。同じイギリス人でも何を名誉と考えるのか異なる点が面白い>>続きを読む

スパイの妻(2020年製作の映画)

4.5

前々から観たいと思っていた黒沢清監督の作品を初めて鑑賞。遠くから被写体を捉えるような撮影が黒沢監督は象徴的であると聞いていたが、まさにそれを地で行くかのごとく、登場人物に深入りさせない感じが良い。また>>続きを読む

フレンチアルプスで起きたこと(2014年製作の映画)

5.0

宇多田ヒカルさんのおすすめ映画ということで鑑賞。雪崩に遭った際、家族を守らず我先にと逃げる父の理性的になる前の本能的判断から、この物語は不穏な空気が始まる。
この問題は当事者以外にまで波及し、登場人物
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波止場(1954年製作の映画)

4.0

プロボクサーからゴロツキに成り下がってしまったとテリーは言うが、彼はあらゆる名誉では得られない立派なことをしたんだと褒めてあげたい。高圧的に苦しめられる社会に一石を投じることは難しいかもしれないが、も>>続きを読む

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

主人公であるキム・ジヨンを中心に、誰かの妻であることやジェンダーによる差別によって苦しめられる女性がありありと描かれている。この作品は、キム・ジヨンの家庭だけ描かれるのではなく、より幅広い視野でもって>>続きを読む

イエスタデイ(2019年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

公開当時スルーしていた作品。ビートルズのいない世界(コーク、煙草、オアシス、ハリーポッターのいない世界でもある)で主人公がビートルズの曲を歌い、スターダムにのし上がる。ある程度リアリティを持たせている>>続きを読む

恋する惑星(1994年製作の映画)

4.0

ウォン・カーウァイ作品初鑑賞。何が起こるわけでもない世界観や刹那的で衝動的な場面の連続が良い。ママス&パパス「California Dreaming」やクランベリーズ「Dreams」がかなりの頻度で流>>続きを読む

プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角(1986年製作の映画)

4.0

ジョン・ヒューズカラー剥き出しの作品。
身分違いの恋を描いた作品はあまたあれど、ジョン・ヒューズには一線を画す顕著な作家性が表れていると思います。彼の仕掛ける演出だったり、みんなハッピーにならないよう
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フットルース(1984年製作の映画)

4.0

80年代のアイコニックな音楽映画を鑑賞。当時大学生だった私の母も映画館で観たそうです。ちなみに私は隠れ80'sファンとケヴィン・ベーコンファンの二つ顔を持ち合わせています…なのでこの映画は思い入れがあ>>続きを読む

グッド・タイム(2017年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

サフディ兄弟作品初鑑賞。周りの評価は低いが、私は好きです。ロバート・パティンソン演じるコニーは基本ダメな男で、周りを巻き込むだけ巻き込んで警察に捕えられるが、彼の唯一の良さは弟想いなところ。だけども、>>続きを読む

レイジング・ブル(1980年製作の映画)

4.3

なんとも執念深く、性根が腐っている男なんだ。急にブチ切れる瞬間を撮るというのはスコセッシ作品でおなじみですが、彼はやはり細かな人間描写を映し出すのが上手い。本作はジェイク・ラモッタをモデルにしています>>続きを読む

M★A★S★H マッシュ(1970年製作の映画)

4.5

ロバート・アルトマン作品初鑑賞。田口トモロヲさんがカルチャーショックを受けたと書かれた記事に触発され鑑賞。朝鮮戦争の最中、3人の軍医を中心に繰り広げられる風刺の効いたコメディ作品。負傷兵の治療を卒なく>>続きを読む

エイリアン(1979年製作の映画)

4.2

70年代に作られたとは思えない先鋭性を備えたSFホラー作品。技術的なことはさておき、演出に関しては現代の映画と遜色ない印象。同じ場所で同じ人たちの間で交わされる自然な会話もまたアメリカ映画っぽさがあっ>>続きを読む

TENET テネット(2020年製作の映画)

-

個人的にノーラン史上最も難解な映画だった。ある程度の情報(特にエントロピーについて)を入れて臨みましたが、途中で迷子になってしまった。ともかく時間の順行と逆行を巧みに映像化しちゃうところは凄まじかった>>続きを読む

(1954年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

浜辺で泣き崩れるザンパノに同情と怒りの感情を覚えてしまう。大切なものを失ってから見える風景に彼は悔いと孤独の気持ちに悩まされていたと思います。
今だから言えるが、ジェルソミーナをあえて置いて行ったのは
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マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

人生のベスト作品です。これは手元に置いておきたい映画ですね。50年台後半のスウェーデンが舞台。主人公イングマル少年は結核の母や愛犬との死別というトラジックな経験をしながらも、スプートニク号に乗せられた>>続きを読む

ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

近衛寮存続をかけた寮生のドラマ。経済至上主義が若者の幸福を奪っているという批判を遠回しに成海璃子演じる三船(姉)がする。国の行う政策が悪い意味でミクロ的な視点で各地に波及していく様を把握し、大学側との>>続きを読む

狼たちの午後(1975年製作の映画)

3.9

実話ベースの銀行強盗の密室劇。人質からも指摘されるように、犯人側があまりにも強盗に不向きな性格。ソニー演じるアル・パチーノの頼れるようでソワソワしている演技がこの役柄にマッチしている。
同性愛者が銀行
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ハートストーン(2016年製作の映画)

4.5

東アイスランドの広大で美しい自然を舞台に少年少女またはその親たちを通して、「性」に目覚める思春期の苦悩がありのままに描かれる。狭いコミュニティの中での人のつながりはときに自分のアイデンティティへの向き>>続きを読む

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)

4.0

カルトの帝王と呼ばれるリンチ監督のデビュー作品。カルト作品に対してあまりにも分析し過ぎると味を失ってしまうと思うので、直感的な印象としては不気味な雰囲気を醸し出す小道具のこだわりに感服しました。主人公>>続きを読む

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)

3.9

今敏監督作品。捨て子の親を見つけるためにホームレス三人が手掛かりをもとに親を見つけにいく。あらゆる場面で赤ちゃんの奇跡に助けられる。もとより三人の心優しさを見ると、"ゴッドファーザーズ"という名はふさ>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりの劇場鑑賞にして久しぶりに泣いた。俳優ジョナ・ヒルの監督デビュー作品。アメリカではポール・ダノもそうでしたが、若手の役者が監督業に進出している動きが最近見られます。
本作はスケート・カルチャー
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バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

村上春樹の短編作品をイ・チャンドン監督が映像化。本作では本筋である失踪事件が起こるまでの間があまりにも不気味で無意味であるかのように感じさせる、謎で狂気に満ちたストーリー。何もかもが解決されずに失踪事>>続きを読む

シックス・センス(1999年製作の映画)

4.3

緻密な脚本とあらかじめ設定されたルールに則ったストーリーで展開される、ホラーでありつつもヒューマンドラマとして結実される名作。観客をミスリードさせながらも、原作で映像化するのが難しい叙述トリックを難な>>続きを読む