紅茶さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

紅茶

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台北ストーリー(1985年製作の映画)

4.1

時代の流れに取り残される二人のカップルが泡沫の如く消えてしまうような感触。急速に経済が成長していく過程で振り落とされる人々。侯孝賢(ホウシャオシェン)は少年野球時代の栄光という呪縛にいい感じに取り憑か>>続きを読む

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)

3.8

夏の海辺に起こる恋愛観の入り乱れ。大人と子ども、プレイボーイと堅物、それぞれの恋愛観に正解は無いものの、ポーリーヌは達観している。入れ替わり立ち替わり女性に好まれるアンリの出演シーンはほとんど上裸。タ>>続きを読む

切腹(1962年製作の映画)

4.4

切腹に絡む武士道精神の虚飾を描いた物語。まず、困窮生活に苦しむ浪人が切腹のために他人の屋敷の玄関先を借りるという体で、金銭を求めるという題材が面白い。切腹が是とされる世俗であるものの、時代問わず人間は>>続きを読む

ビギナーズ(1986年製作の映画)

3.5

プライムにこの作品があったとは!しかもHDニューマスター版なので映像が綺麗。デヴィッド・ボウイの曲と同タイトルの映画であり、ボウイはもちろん、シャーデー(シャーデー・アデュ)も出演。
『ロッキーホラー
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クルーレス(1995年製作の映画)

3.9

みんな楽しそうで良い。インフルエンサーで周りから人気はあるが、恋愛に奥手な女子高生を描いた物語。成績上げるために担任の先生を他の先生とくっつけようとする行動力が凄まじい。
そしてポール・ラッドが今とさ
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ラブ&ポップ(1998年製作の映画)

3.8

庵野秀明監督、初の実写映画。援助交際と女子高生をめぐる一夏の物語だが、かなりリアリティに満ちていて、暴力性もある。性質上の問題だが、ハンドカメラなどの機材や画質の悪さがこの映画の持つ空気や97年渋谷の>>続きを読む

ゴジラ(1954年製作の映画)

4.5

日本特撮映画の古典作品を鑑賞。ゴジラが登場するシーンは少ないにも関わらず、人間に恐怖心を植え付ける。オキシジェンデストロイヤーの産みの苦しみを味わう科学者、そして科学的根拠を無視する政府。その政府の対>>続きを読む

風立ちぬ(2013年製作の映画)

4.2

「創造的人生の持ち時間は10年だ。 君の10年を力を尽くして生きなさい」

飛行機の設計士である二郎が、夢の中に生きるカプローニ伯爵から伝えられた言葉。飛行機は殺戮兵器としての使途を余儀なくさせられる
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.1

スペイン独裁政権下の40年代舞台。閉塞的な世界の中で生きる者、特に純真無垢な子どもアナの視点を切り口として、そこから見える世界を描いている。これ見よがしに映る宗教画。なかでも画の右隅に映る骸骨は一際目>>続きを読む

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

5.0

この映画が作られたこと、そしてリアルタイムで立ち会えたことに感謝。
ヒッキーの『One Last Kiss』聴く度に色々と思い出しそう。

追記
4/12
IMAX鑑賞 グランドシネマサンシャイン

Love Letter(1995年製作の映画)

3.9

光の差し込み具合やっぱ好き。岩井俊二作品に瑞々しさが底に流れているのは言うまでもなく撮影、キャスト陣、脚本の言葉選びなど色々あるけど、その雰囲気と表裏な関係として苦々しい雰囲気もある。回想シーンにおけ>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(1968年製作の映画)

4.4

『ウエスタン』というタイトルで、165分のオリジナル版が図書館にあったので鑑賞。一つ一つのショットが額縁に飾りたい程、美しい。風景を捉えたカメラワークのほかにも、赤銅色に染めた暑苦しいガンマンの顔をク>>続きを読む

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に(1997年製作の映画)

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なにか90年代以降の日本のカルチャーを決定づけた感じはある。ようやくテレビアニメ版26話までと本作で、いわゆる旧世紀のエヴァを観終えたが、この悲しい通奏低音で謎の展開を迎える形が世紀末っぽい。

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)

3.7

ロベール・ブレッソン作品を初鑑賞。噂には聞いていたが、これぞとばかりに余計なものを削ぎ落としたミニマルな話法と情報量の少なさはすごい。とにかく場面の移り変わりが早い。ディゾルブで幾度となく唐突な展開が>>続きを読む

式日-SHIKI-JITSU-(2000年製作の映画)

4.4

"シンエヴァ"に向けて、庵野秀明監督の作品を鑑賞。とにかく映像が綺麗。

"彼女"と"カントク"以外のモブがほとんど出てこない終末的な世界。線路などの幾何学的な造形が至る所に配置された無機質な風景。何
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ゆれる(2006年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

兄の弟に対する劣等感に苛まれた長年の受難。物語序盤、香川照之演ずる早川稔は誰に対しても優しすぎる人物であったが、話が進むにつれ、それはメリメリと剥がされる。30年以上自分を押し隠し、ようやく本来の自分>>続きを読む

赤い風船(1956年製作の映画)

4.5

風船と少年。赤い風船に子どもという組み合わせで言うと、ペニーワイズを想起させてしまうのも無理はない。
最初の朝焼けのショットが美しく、風船持ちながら街中を走るシーンの躍動感が良い。雨上がりに差し込む光
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白い馬(1952年製作の映画)

4.0

海辺を走る馬とそのスピード感を与えてくれるカメラの動きが良い。馬同士の喧嘩に、湿地で馬に引きづられる少年など、何かと体を張ったシーンが多い。『戦火の馬』や『荒野にて』が好きな自分にとって、馬と少年モノ>>続きを読む

永い言い訳(2016年製作の映画)

4.0

死を受け入れるというのがどういうものなのか、その視点にまずグッと引き込まれた。罪悪感からか妻の死に悲しむことのできない幸夫。死を受け入れるには、泣けば良いのか、葬式をやれば良いのか。そんな行為自体も無>>続きを読む

未知との遭遇(1977年製作の映画)

4.0

"自分が強く信じるものを疑うな"というメッセージが込めらんばかりに、主人公のロイは異星人の存在を信じる信念深い人物であり、彼だけが宇宙へと旅立つことができたという事実は、その信念深さが関係しているはず>>続きを読む

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)

3.8

『セールスマン』同様、これもまた観客に感情の揺さぶりをかけてくる。複雑な家族関係に誘拐ビジネスや警察の不在など、自分にとって馴染みない場面が連続する。スペインが舞台の本作は、イランで撮られた『別離』や>>続きを読む

セールスマン(2016年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

前の住人の荷物がまだある家に引っ越してくる時点で不気味。壁の傷とか、ドアとか、階段とか、エレベーターの故障だとか、アパート内の印象的なモチーフがとにかく怖い。警察の介入も一切なし。実際の事件の様子もう>>続きを読む

チャイナタウン(1974年製作の映画)

4.2

かなり引き込まれました…。『ゴッドファーザーPART2』、『市民ケーン』と共にデヴィッド・フィンチャーのベスト3作品に入っているということで鑑賞。

元々砂漠だったというロサンゼルス。今でも雨はあまり
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.1

「シャバで辛抱しても、楽しいことなんかそうないけど、空が広いっていうよ」

"すばらしき世界"というタイトルから滲み出てる皮肉な意味合い。肩身の狭い思いするなら刑務所に戻った方がマシと言っていた三上さ
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惑星ソラリス(1972年製作の映画)

4.0

SF映画ならではの特撮技術を抑え、人間関係、それも人類愛というスケールの大きい普遍的な愛について重点的に描かれている。
ソラリスの海という謎に満ちた知的生命体の前で人間はどうすることもできず、本来すべ
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レイダース/失われたアーク《聖櫃》(1981年製作の映画)

4.0

4DX上映記念ということで鑑賞。アークの入ったトラックをインディが追うシーンは迫力あり。あのスキンヘッドの剛健な人物は何者だったのかよくわからなかったが、アークを巡って利害関係に加わる人物が多すぎてカ>>続きを読む

ある子供(2005年製作の映画)

3.8

ダルデンヌ兄弟作品を初鑑賞。若さ故の言動や行動が痛切に描かれていてリアルさが感じられる。若く世間知らずでいると、直面する問題にどう対処すれば良いのかわからなくなる。子どもを売るという選択が最善だと思え>>続きを読む

マイリトルゴート(2018年製作の映画)

4.0

『PUIPUIモルカー』に触発され鑑賞。
人間嫌悪はこの作品でも一貫している。童話とフェルトアニメで描く問題意識は想像以上に響く。中学生の頃に観たグロテスクなクレイアニメを思い出した。

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

4.3

待望の黒沢監督の作品をMUBIで無料鑑賞。美しいショットの数々。遠景の使い方が素敵で、相変わらず変な場所から被写体を捉えたショットが脳裡に焼き付く。

崩壊寸前の家族関係はいっそうのこと壊滅状態に追い
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オルフェ(1950年製作の映画)

4.1

Prime Video2K復元版での鑑賞。
生界の詩人オルフェと死界の死神との愛。鏡が媒介となってその二つの世界を往来する映像表現が70年前とは思えないほどの到達点にある。死神も否定的に描かれず、死界
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ジュラシック・ワールド 炎の王国(2018年製作の映画)

3.7

火山の噴火から恐竜を救出する過程でまた人間のエゴがまざまざと見せつけられる。
本作初登場のインドラプトルはラプトルとインドミナスが単に融合した知的で凶暴な恐竜という存在でしか描かれず、ラプトルのDNA
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ジュラシック・ワールド(2015年製作の映画)

4.0

インドミナスレックスを作った科学者含む関係者は、進歩主義に囚われていてあからさまな"人間"を見せつけられた感じ。
『ジュラシックパーク』での出来事からの反省だったり、前作で発見したラプトルの知的能力に
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ジュラシック・パーク III(2001年製作の映画)

3.5

ラプトルの知的・社会的な行動が散見されてそこは前作までに無い新しい発見だが、恐竜を怒らせる引き金が人間のエゴイズムという点では相変わらず。前作までの惰性で作られた感じが否めないが、恐竜の様々な側面を見>>続きを読む

静かなる叫び(2009年製作の映画)

3.7

ドゥニ・ヴィルヌーヴが1989年モントリオール理工科大学で起こった銃乱射事件を基に製作したモノクロ映画。これは無差別ではなく、女性だけを狙って射殺したアンチ・フェミニストの犯行。時系列を敢えて崩し、歪>>続きを読む

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(1997年製作の映画)

3.7

ドラマ要素を排除し、完全にスリラー系に吹っ切れた二作目。前作で謎キャラだったジェフ・ゴールドブラムが活躍。人間の手が加わらなかったら本土に来ることが無かった恐竜。その恐竜に母性本能があることが垣間見れ>>続きを読む

アップグレード(2018年製作の映画)

3.8

『透明人間』がとても良かったので、リー・ワネル監督の前作も鑑賞。近未来の造形とアクションシーンはやはりブラムハウスの特長。あの自動運転に頼らなければこんな顛末にならなかったかと思うと、この作品では一貫>>続きを読む