めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

瀧の白糸(1933年製作の映画)

2.9

戦争を挟んで六度も映画化されているのは、昔気質の日本的美徳、義理と人情、見返りを求めぬ献身の物語だからだろう。女の健気さが多くの日本人の心を捕らえて止まない。女が惚れた男の立身出世の為に尽くす。その間>>続きを読む

第七天国(1927年製作の映画)

3.4

「シコ、ディアーヌ、天国」。二人だけの愛の祈り。何て心の清らかな映画だろう。純朴な男女が不器用に愛を育んでいく過程の可愛らしさいじらしさ。幸せは待っていてもやって来ない。自信がないままでは人生が立ち行>>続きを読む

赤い天使(1966年製作の映画)

2.9

戦場における性の問題を描くタブー的着眼がお見事。野戦病院の目を覆いたくなる日常。数多の負傷兵の誰を治療し誰をしないのかを瞬時に選別し、どう治療するのかも同時に選択しなければならない。生かす為に腕や脚が>>続きを読む

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)

2.7

クイズミリオネアのフォーマットの面白さを上手く物語に落とし込んでいる。お話は面白いけれどそれなりにご都合感もある。繰り返しなので中盤くらいで飽きてもくるし、最後はちょっと欲張りな気も…。事前の期待値が>>続きを読む

ユリゴコロ(2017年製作の映画)

2.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公が纏う危うげな空気が常套的。母親が殺人鬼だからってあんなに判りやすくサイコパスっぽさが表に出るものではないだろう。ボソボソ喋るセリフは聞き取りづらく、そうかと思えば突然大声で唾を撒き散らしながら>>続きを読む

風の電話(2020年製作の映画)

2.9

東日本大震災、西日本豪雨災害、原爆、原発事故、自殺、津波…。家族を皆失い一人だけ取り残された主人公が、今いる呉から故郷の大槌を目指す。そして別の場所で、別の理由で同じように家族を失った者たちと出会い、>>続きを読む

幸せのちから(2006年製作の映画)

1.8

愛とは名ばかりのエゴ。どうにもこの父親像に共感できない。また不幸(種を蒔いたのはほぼ父親自身)を描くことばかりでなぜ彼が成功を引き寄せられたのかが全然伝わって来ない。どこの馬の骨とも知れぬ見習いを人は>>続きを読む

全身小説家(1994年製作の映画)

3.0

作家井上光晴の晩年の5年に密着したドキュメンタリー。散漫とした印象に加えて二時間半超えの長尺さに集中力が途切れてしまった。いつか再鑑賞したい。

審判(2019年製作の映画)

2.1

AIが面接にやってきた。こんな未来が来るのかどうか知らんけど、如何にもそれっぽい方が実はそうでなく、そうでなさげな方が実はそうってのは然もありなん。高度なほどより自然な形を目指すことは自明である。偽物>>続きを読む

こたつ(2019年製作の映画)

2.4

一人増え、一人減り、そんなことを繰り返して繋がってきた家族史。その真ん中にこたつがあった。その温もりは懐かしい記憶の数々に一緒くたに刻み込まれている。好編。

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)

3.1

人身売買で引き離される家族。黒人奴隷を大っぴらに家畜呼ばわりするような南部白人の無恥。こと当時の南部には人権意識など皆無のように思っていたけれど、中には奴隷制度に疑問を感じながらも声を上げられない白人>>続きを読む

エル ELLE(2016年製作の映画)

3.6

強姦シーンによって幕が上がる衝撃作。その後の展開には尚更に驚かされる。女は抵抗で散らかった室内を掃き清め、宅配鮨を注文する。先程の出来事など取るに足らぬことのように。おそらくそれはこれまでに幾度もあっ>>続きを読む

赤ちゃん中華生まれたて食堂(2019年製作の映画)

1.8

店主が赤ちゃんをあやすばかりで客はチャーハンに一向にありつけそうにない。赤ちゃんの可愛い笑顔によって和やかだったムードは、泣き止まぬ赤ちゃんのせいで進まぬ調理にやがてピリつき、そして赤ちゃんが初めて発>>続きを読む

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)

2.9

このレビューはネタバレを含みます

華やかな業界人のステイタスである高級車がずらりと並ぶハリウッドの映画スタジオを舞台に、制作の内幕とそこで起きた殺人事件を描く。数多のスターが本人役で次々に登場し豪勢極まりない。本筋はさほど面白くない気>>続きを読む

三人の狙撃者(1954年製作の映画)

1.5

このレビューはネタバレを含みます

大統領暗殺を企む犯行グループと人質たちとの駆け引きを描く心理サスペンス。はっきり言ってストーリーが出鱈目で観ている間ずっとイライラしてしまう。大それた犯罪を今から為そうとする犯人であるのに人質への警戒>>続きを読む

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)

2.6

サイモン&ガーファンクルの楽曲を思い出させるタイトルだけれど最後にようやっと流れた。楽曲のリズムと場面場面のテンポがシンクロして気持ち良く、まるでミュージックビデオを観ているような洒脱なセンスがこの映>>続きを読む

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

3.4

だだっ広い浜辺の波打ち際にポツンと置かれたピアノのロングショットの見惚れる美麗さ。採光が印象的な室内シーン。そんな格別な画の魅力に加えてナイマンの荘重な主題曲もこの映画のイメージを決定づけるほどに素晴>>続きを読む

骸骨の踊り(1929年製作の映画)

2.1

幼児には十分怖いビジュアルイメージも、それ以外には可愛らしく見えるだろう。黎明期のアニメなので何てことないけれど、骸骨が自分たちを楽器に見立てて音楽を奏でるのがリリカルである。

ありがとう、トニ・エルドマン(2016年製作の映画)

3.0

仕事に多忙で笑顔を失くした娘を心配する父親の思いはなかなか届かない。良かれと思っての言動が悉く裏目に出て却って溝を深めてしまう。相手に通じないジョークでスベっている父に娘の眉間のシワは深まるばかり。で>>続きを読む

(2020年製作の映画)

1.5

このレビューはネタバレを含みます

”禍福は糾える縄の如し”の物語、、、おっと縄でなく”糸”でしたか。お話はケータイ小説よりはずっとマシって程度。私くらいの世代の人にとって「糸」と言えばドラマ「聖者の行進」と紐付けられて、、、おっと”糸>>続きを読む

ランチメイト症候群(2018年製作の映画)

2.2

祖母が毎朝作ってくれるお弁当。そのおかずは如何にも”おばあちゃん”風。それを見た友達の邪気ない言葉が彼女を傷つける。友達のお弁当がお洒落に、自分のそれが野暮ったく見えてしまう。だから誰にも見咎められな>>続きを読む

ラブ&ポップ(1998年製作の映画)

3.0

太宰「女生徒」の現代版的なニュアンスを感じる。今を悔いなく享楽的に生きる高二女子。一瞬のときめきを追いかける。丈を短くしたスカート。ルーズソックス。友達。彼氏。インスタントカメラ。ダイエット。ネイル。>>続きを読む

チョコレート(2001年製作の映画)

2.9

我が子を大事に育ててきたつもりで実はそうではなかったと、その死によって突きつけられた二人。子供との向き合い方を間違えていた。失って気付いた己の過ちを認め、悔い改めて生きようとする。改心したって確かにあ>>続きを読む

よこがお(2019年製作の映画)

3.2

甥が起こしてしまった犯罪の煽りを食って、主人公市子の人生の歯車が狂っていく。隠し事。一歩目を間違えた彼女が露見した後で事実を言ってももう誰も信じてくれない。悪意でない隠し事も明るみになれば悪意にされる>>続きを読む

鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)

1.9

このレビューはネタバレを含みます

虚仮威しかつ意味不明な標題(原作のせい)通りの”雰囲気”映画ではあるまいか。普請は如何にも立派げではあるけれども、内容はそれなりにちゃんとした”ケータイ小説映画”的な風情(原作のせい?)。不幸がお手軽>>続きを読む

トスカーナの幸せレシピ(2018年製作の映画)

1.8

復帰して新たな店を立ち上げたい不良の元三つ星シェフと、新人料理コンテスト優勝を目指す絶対味覚のアスペルガー青年とが社会奉仕活動で出会い、交流を重ねながら人間的に成長していく。ベタで何の意外性も引っかか>>続きを読む

海と毒薬(1986年製作の映画)

3.4

医師の本分を忘れて権力闘争に明け暮れる大学病院の教授たち。命を軽んじる一方では己の点数稼ぎに余念がない浅ましさ。どうせ死ぬんだからせめて命を医学の進歩に役立ててやろうじゃないか。上からの命令に下っ端は>>続きを読む

キネマの天地(1986年製作の映画)

2.8

情緒いっぱいの活弁付き無声映画からトーキーへの過渡期。活動写真華やかなりし時代の活気に満ちた映画館の売り子から女優への転身。それは外側から想像するような華麗なものではなく、つまずいたり泣いたりしながら>>続きを読む

台風クラブ(1985年製作の映画)

3.1

子供から大人になるちょうど中間地点。大人たちが汚らしく見え始めるのは一歩大人の階段を上がったからだろう。それが許せないところが子供っぽい清廉潔白。無邪気にふざけた後で急に哲学的なことを言ったりする青臭>>続きを読む

天河伝説殺人事件(1991年製作の映画)

2.8

名匠市川崑が浅見光彦の探偵譚を金田一シリーズの様々なニュアンスを用いて撮ったような、つまりはあのシリーズのファンが本筋とは無関係な其処此処でニマニマし通しになってしまうような、言わばファンサービス的な>>続きを読む

大地の子守歌(1976年製作の映画)

2.4

なんかすげーぶっ飛んだ少女のお話。原田美枝子の可愛らしさ荒々しさ。

湯殿山麓呪い村(1984年製作の映画)

1.5

ミイラ信仰の不気味さや、断末魔の苦悶を示すミイラの凶々しさに惹かれてまた観てしまった。事件に、謎解きに、キャラクターに、そもそもお話自体に魅力がなさ過ぎる。面白くない。
再鑑賞。

蔵の中(1981年製作の映画)

2.6

映像化数多の横溝作品である。そのほとんどが金田一ものである中にあって珍しく戦前の幻想短編の映画化。個人的には横溝正史の最高作だと信じている原作小説なのだけれど、本作はその最も傑出した部分(小説内小説内>>続きを読む

黄昏(1951年製作の映画)

2.2

嘘つき男と盲信女の愛の顛末。バカップルがどうなろうと知ったことかと辟易しながら観ていたけれど、ラストはなかなか粋。男は良くも悪くも最後まで誇り高きジェントルマンであろうとした。だから己の正体を知られぬ>>続きを読む

火垂るの墓(1988年製作の映画)

4.4

妹節子はなぜ死ななければならなかったのか。私の目にそれは兄清太のせいだ。生きることが最も困難だった時代。食糧が調達できず誰もがみんなお腹を空かせている。そんな切迫した中でも叔母は事前の約束通り兄妹を引>>続きを読む

苦役列車(2012年製作の映画)

2.9

先日亡くなった作家西村賢太の芥川賞受賞作の映画化。原作のニュアンスとは随分違う(こんな前向きじゃない)けれどこれはこれで面白い。
中卒。父親が犯罪者。日雇い労働。家賃を滞納しては追い出されアパートを転
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