このレビューはネタバレを含みます
赤ん坊を赤ちゃんポストの前に置いて去る母親たちにもそれぞれなりの背景がある必然。好きこのんで捨て子する母親などいよう筈もない。でもどんな事情も関係なく、捨てた親にも捨てられた子にも深い傷を残してしまう>>続きを読む
泥棒と引きこもりの男同士の友情物語。捕まれば確実に殺されるだろう追っ手が至近距離まで迫っているのを判っているのにまあ呑気なこと。良くも悪くも展開にご都合感が多々。後から後から湧いて出て勝手に殺し合って>>続きを読む
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「パラノーマル・アクティビティ」の流れを汲むPOVホラーの新しい形を示した佳作。乱立したスカイプやフェイスブックなどのSNS、ネット画面のウィンドウを縦横無尽に行き来>>続きを読む
貧窮した生活の中で発病する幼い娘。今夜が正念場である。妻はこの数日間、寝ずの看病。夫はやむなく強盗を働いてしまう。追っ手をかいくぐりどうにかタクシーを捕まえ帰宅するけれど、その運転手は実は刑事だった…>>続きを読む
”一念岩をも通す”そのものの物語。希望を絶やさぬことの大切さを伝えてこれ以上ないハッピーエンドのあり方だと思う。とってつけた御都合主義的なそれとはものが違う。一つ一つの描写の積み上げがちゃんとそれぞれ>>続きを読む
フランスらしい出鱈目であり得ないお話なのではあるけれども、観ていてずっと楽しいし、美味しそうな料理と見目麗しき女性たちが眼福。一度やると決めたことは最後までやり切る。当たり前のようでその実なかなか難し>>続きを読む
主人公の中の時間を止めてしまった過去の出来事。男の幻影をいつまでも追いかけ、母としても未だ覚束なく揺れ動く。そのことを”パーマネント野ばら”に集まる気の置けない客たちが、友が、母が、直接に語らずとも理>>続きを読む
懐かしい♪多分テレビ放映された中学時分以来、何十年か振りに観たけれどやっぱりよく出来た映画。面白さに隙がない。それに主題歌を聴くと80年代の空気が蘇ってくるよう。
細田作品は4作目だけれどこれが一番良かった。全方向に都合よく辻褄合わせするようなタイムリープものにありがちな浅薄なものでなく、受けた恩恵を全て返済するような展開が誠実。主人公が悲しみを引き受ける一方で>>続きを読む
"生涯を賭して物語を語る意志はあるか。何も見返りが得られなくても"。現実よりフィクションに人生の真実味を感じるようなサリンジャー生来の作家性。容易に道は開けない。書けども書けども不採用が続けば大抵の者>>続きを読む
ソ連の鬼才パラジャーノフがアルメニアの詩人サヤト・ノヴァの生涯を詩的映像で綴る。お話が面白い訳ではないのだけれどとにかく画が圧倒的に美しい。それは民俗的、宗教的な中世ロシアの絵画の構図や色彩感、ポージ>>続きを読む
全く歯が立たず。最初から最後まで蚊帳の外。だから良いも悪いもあったものじゃない。外の喧騒を完全にシャットアウトしてゆったりと進むリムジンの圧倒的な静けさのみ印象的。
イギリス時代のヒッチの代表作。濡れ衣を着せられた男が追っ手から逃避しながら事件の真相を追う。あまり危機感のない逃避行はご愛嬌。次々やってくるピンチを脱する方策になかなか気が利いている。今の時代のこの手>>続きを読む
子どもの移り気は残酷なようだけれど成長している証しでもある。関心は古いものから離れていき新しいものへと移っていくのが必然。ずっと1つのものにだけ興味を示すのじゃ却って心配だろう。必要とされるものはその>>続きを読む
5つの都市の夜を駆けるタクシーの運転手と客たちの、短時間ながらそれなりに濃い関わりを描いた5つの物語からなるオムニバス。
ロサンゼルス、19時過ぎ
如何にもやんちゃそうな女の子の運転手が、電話ばかり>>続きを読む
引き離された家族に再び接近する娘。母のトラウマを抱えたハリウッド女優の欺瞞と呪詛に満ちた日常。その二つの線が交わり悲劇的な結末へと進んでいく。ストーリーを追うだけでは理解できない独特で魅力的なニュアン>>続きを読む
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よくある難病患者の最後の恋愛ものと思わせておいて、その実、映像の叙述トリックを用いたミステリ劇だった。二つの時系列が曖昧に並行して描かれ、巧みにミスリードされてしまった。けれどその部分を除くと最後の愁>>続きを読む
どこかジェルソミーナを思わせる主人公モードの天使のような純真さ。粗野だが心根は優しい夫。手足が不自由なモードの歩調に、絵筆の運びに合わせるようにゆったりしたペースの語り口が心地良い。彼女の人柄そのまま>>続きを読む
病身の母や赤ん坊の世話。働きもせず呑んだくれる暴力的な父。貧しい暮らしぶりを示す少女の身なり。クラスメイトは彼女を無視し、教師は彼女にばかり辛く当たる。道を歩けば囃される。居場所を見つけられず意思を通>>続きを読む
クロアチア紛争に影響されたクロアチア人とセルビア人のカップル3組の物語。紛争前夜に引き離された二人の1991年。紛争で身内を殺された恨みと愛欲の間で揺れる二人の2001年。紛争の禍根でかつて分かたれた>>続きを読む
公共機関にどこまでサービスを求めるのか。その線引きは誰がするのか。融通すれば以後なし崩しになるやも知れず。ただこの場合は認めなければ人命に直結する。お役所はトラブルを抱えたくないから冷たい対応になり易>>続きを読む
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17歳で出産した娘に子育ての覚悟はない。同い年の相手の男もそう。ずっと疎遠だった母が呼び寄せられほぼ面倒を見る羽目になる。この三人の関係は生まれた赤子を間に介してもつれにもつれる。若過ぎる二人の責任感>>続きを読む
ドストエフスキーでなく坂口安吾の”白痴”。浅野忠信の色気。妖しく退廃的な世界観。映像のモダン感覚。其処此処にいい映画っぽい風情があるのだけれど個人的には消化不良。ただでさえの長尺が1.5倍に感じられる>>続きを読む
淫行容疑で逮捕された教師の流出した性的動画。そこに映っている相手と噂される一人の女生徒がクラスメイトによって血祭りに上げられていく。動画の真贋は疑わしい。先ず別人である。だが彼女を揶揄する周りの生徒た>>続きを読む
前半はある母子家庭に密着する心霊番組の体のドキュメンタリー風、後半からは一転してイケメンなスーパー霊媒師の活躍を追う。観る前に想像していたより怖いし面白い。ちょっとした笑いがあるのもいい。CGもなかな>>続きを読む
ベルトルッチとストラーロによる完璧な映像設計に尽きる。それは時に物語や登場人物への興味を凌駕してしまうほど私たちの意識を捕らえてしまう。印象的な建築や彫像。光と影と陰。白と黒。シンメトリー。アングル。>>続きを読む
市川崑が縦横比1対2.35のシネマスコープサイズの横長な画面を使った画作りとはかくあるべしと言わんばかりに見事な美的感覚を見せつけた名編。それこそを楽しむべき映画であって、仇討ちだとかメロドラマ的な悲>>続きを読む
二十歳くらいの頃にBSで放映されたフォーク大全集なる番組。その中のミニライブのコーナーで初めて知りたちまち魅了されてしまった伝説的フォークシンガー高田渡(その時は坂崎幸之助と南こうせつがサポートしてい>>続きを読む
これはフェリーニ「道」のウディ・アレン版と見るべきだろう。ジャズ好きのアレンの面目躍如たる翻案に仕上がっている。自惚れ屋、ええカッコしい、エゴイスト、浪費家、浮気者、でも音楽の才能だけは本物。こんな女>>続きを読む
やる気なし。諦めモード。何を言われても抗わず、適当に謝って受け流す。感情をどこかに落っことしたみたいに何事にも熱量を傾けられない主人公。そんな彼女が余命少ない父の会社をなし崩しに引き継ぎ、古参従業員の>>続きを読む
ウィーンへと戻る旅の途中のマーラーが、家族との来し方を妻にちょっかいを出す軍人との精神的いざこざを交えつつ回想する物語。貧しい幼少期、ユダヤからカトリックへの改宗、弟と愛娘の死、そしてまだ知らされぬ自>>続きを読む
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ギャロの監督第2作は男が恋人との思い出の場所カリフォルニアに向かい、幾人かの見知らぬ女性と出会いながら、自身が抱えたトラウマの核心に遡っていくロードムービー。終始浮かない表情。沈んだ声音。センシティブ>>続きを読む
シングルファーザーとなった男と不慮の事故で両脚を失った女の物語。女は美貌への自負をもぎ取られ引きこもる。彼女の目を男は外へ向けてやろうと海へ連れ出す。それなのに彼女をほったらかして彼は自由に海を泳ぎ回>>続きを読む
言わずと知れたカフカの不条理小説の映画化。ある朝、突然に理由を知らされぬまま逮捕を言い渡された主人公ヨーゼフ・Kが、罪状を告げられぬまま裁判にかけられ、散々に理不尽な場面に遭遇し小突き回され、そして最>>続きを読む