んぎさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

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こんなに揺さぶられる映画体験もそうそうない。幸福という名の地獄である。思わず目を逸らしたくなるような気まずい瞬間の連続、それが(あろうことか5時間もの長尺で!)イメージの濁流となって観るものの心を毛羽>>続きを読む

パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

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漂泊する人やモノが、不協和音とともに存在感をあらわにしながら汚いNYの街を埋めつくしている。詩集は破かれて車は盗まれる、まるで所有されることを拒むかのように。つねに横たわる寄るべのなさ、それでも、フリ>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

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画面を構成する例のオブセッションがこの作品においては邪魔でしかなく、ただ呆然と眺めているだけで終わってしまった。美術や構図への執拗なこだわりと、フランス映画への憧憬を通して捉えたいもの、その両者のバラ>>続きを読む

ドライブイン蒲生(2014年製作の映画)

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たむらまさきがその晩年に唯一メガホンをとった作品、やはり青山の空気感というか、とりわけ『Helpless』を思いだした。半分くらいうとうとしながら。

永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

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特別な一日の特別でない感情について。思わず目を逸らしたくなるような気まずい機微を掬いとるのが昔から巧かったのだな。終盤の、新郎新婦がふたつの部屋をワンカットで行き来するシーンがとくに良かった。『偶然と>>続きを読む

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

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リドスコ健在。ファッションショーのシーンとかスキーのシーンとか、編集キレキレで楽しかった。とにかく繋ぎかたが巧い。美術の壮大なスケール感に呑み込まれないどころか逆に喰ってかからんばかりの存在感を呈して>>続きを読む

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

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良質なロードムービーでもありちょっとしたクライムアクションでもあり。どこを切り取ってもイーストウッドの映画でしかなくて感動してしまった。拍子抜けするほどあっさりした終わりかたはもはや鉄板。ライティング>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

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正直あまり好きではないタイプの長回しで眠くなってしまった。この作品をもっと濃密に引き延ばしたのが『サタンタンゴ』になるのだろうな。

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

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熱病にうかされて見る夢のような。今敏とか湯浅政明作品を彷彿とさせるドラッギーな目まぐるしさがあった。『ベイビー・ドライバー』よりも好み。

偶然と想像(2021年製作の映画)

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今年さいごに映画館で観たのがこの映画でほんとうに良かった。しかし、かゆいところに手が届きそうで届かないとでも云うような、周到さのなかの意図しないズボラさが目立つ脚本。濱口らしくておもしろいのだけれど、>>続きを読む

天使のはらわた 赤い眩暈(1988年製作の映画)

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撮影が見事だと思う。石井隆と佐々木原保志の蜜月。姿見の反射でパートナーの不貞行為を目撃するシーン、『ドライブ・マイ・カー』でもあったな。

天使のはらわた 赤い淫画(1981年製作の映画)

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「天使のはらわた」シリーズの登場人物は基本的にみんなやばいくらいデリカシーがない(それは名美と村木を社会的/性的に堕落させるための仕掛けでもある)のだが、今作はとくに酷い。ここまでくると笑えるを通り越>>続きを読む

天使のはらわた 名美(1979年製作の映画)

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突然のサイコスリラーと化した病院シーンは淫靡なライティングとキレのあるカット割りによって底知れない不気味さを魅力的に捉えていた。しかし名美のキャラクタ造形に面白味がないのが致命的。副題にその名を堂々と>>続きを読む

天使のはらわた 赤い教室(1979年製作の映画)

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曽根中生のセンスが冴えわたっている。行きずりの男女の酩酊、そして深淵のような名美の魔性に引き摺りこまれていく男の狼狽、そんな情愛の混沌が伝染したかのような歪んだ鏡のショットがキマりまくり。抑制の効いた>>続きを読む

八月の濡れた砂(1971年製作の映画)

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日焼けした浅黒い肌、赤と青の恐るべき調和、暴力的なまでに野蛮なイメージの横溢。船上というロケーションもあいまって、ファスビンダーの『ケレル』を鮮明に思い浮かべた。

月光の囁き(1999年製作の映画)

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ロマンポルノイズムが迸っている。振りまわす女と振りまわされる男。幼さをたたえた天真爛漫な佇まいから一転してあの事件を境に小悪魔的なエロティシズムを惜しみなく見せるようになるつぐみの振れ幅がすごい。初期>>続きを読む

記憶の代償(1946年製作の映画)

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いま観るとプロットじたいは凡庸なノワールだけれど、実体の掴めないものごとを媒介として愛というものの不確かさを小洒落た台詞回しで穿つ筆致の鋭さはマンキウィッツならでは。エバーグリーンなテーマを衒いもなく>>続きを読む

春のソナタ(1989年製作の映画)

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フレームから見切れる背の高い衣装ケースとかいわくつきの4本の柱とか、仰々しい美術の趣深さがある。暗い部屋から明るい部屋、そして自然豊かな別荘へ、さまざまな家をエトランゼのように往来するジャンヌの飄々と>>続きを読む

四畳半襖の裏張り(1973年製作の映画)

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鮮やかなアクションの連続に痺れる。カットが目まぐるしく移り変わり、禁欲的なまでに嫋やかなカメラがその一連をつぶさに捉え、たえず運動が起こりつづけていた。とくにラストの畳みかけが凄まじい。2対のアベック>>続きを読む

もっとしなやかに もっとしたたかに(1979年製作の映画)

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がっつりロマンポルノというよりはメロドラマ、でもプロットは散漫であんまり面白くない……。素っ頓狂な劇伴の効果もあってか、人間模様は複雑なのに深刻さを微塵も感じない。時代というか、当時の若者のムード(い>>続きを読む

八月はエロスの匂い(1972年製作の映画)

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画面の執拗な青さ。ただそれだけでもう充分というか、日本の夏は湿っぽくて気だるいムードにあてられがちなのに、映画ぜんたいが溌剌とした爽やかさを宿しているように見えてしまう。青春の蹉跌、抑圧と解放、セック>>続きを読む

刺青(1984年製作の映画)

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ロマンポルノにしては濡れ場すくなめ。肝心の刺青が画面映えしていないというか文字どおり落書きのようなショボさで、そこがいちばん残念だった(そもそも絵柄は原作準拠の蜘蛛ですらない)。上澄みだけを掬いとった>>続きを読む

魔性の香り(1985年製作の映画)

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言葉に託しすぎているのが残念。とくに謎解き風のところは徹頭徹尾せりふで説明してしまうものだからズッコケてしまった。ミスリードを誘うにしてもあそこまでていねいに語らせる必要があったのかどうか。どことなく>>続きを読む

一条さゆり 濡れた欲情(1972年製作の映画)

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泣きたくなるほど素晴らしい。ストリップ小屋の淫靡でムーディーな照明使いがこの映画を特別なものに仕立てあげている。タメツメの効いたカメラワークも終始スリリングでキレッキレだし、これは名実ともに初期ロマン>>続きを読む

牝猫たちの夜(1972年製作の映画)

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水の演出がいい。逆さの傘から滴り落ちるホースの水や男女のまぐわいを支えるエアマットの下から波紋のように拡がってゆく水たまり、明け方の新宿に濃霧をもたらす散水車。力学によって動きを変える繊細な水の流動が>>続きを読む

肉体犯罪海岸 ピラニヤの群れ(1973年製作の映画)

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つなぎ方や省略が下手で集中できなかった。あらすじを読んで『人妻集団暴行致死事件』のようなクオリティを期待したのだけれど……。ロケーションはものすごい豪邸だから、よけいに作品の空虚さを浮き彫りにしてしま>>続きを読む

美少女プロレス 失神10秒前(1984年製作の映画)

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自由奔放にもほどがある、悪ふざけのオンパレード。そこには理性も理屈もなく、まるですべての空間がリングの上であるかのようにずっと荒々しい。そして跳躍する身体の美しさ。アルドリッチをやろうとしているのは如>>続きを読む

女地獄 森は濡れた(1973年製作の映画)

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遠景の窓を透かす青白い照明の不気味さ。屋敷の中も外ものっぴきならない。そして神代映画特有の素っ頓狂な劇伴や効果音が仕事しまくり。見境なしの情欲が暴走しすぎてただただ狂気でしかないスワッピングのシーンは>>続きを読む

(秘)色情めす市場(1974年製作の映画)

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芹明香の享楽とも諦念ともつかぬアンニュイなまなざしが虚空を貫く。近親相姦という安易なレッテルでその行為を矮小化させるのもおこがましいほどの絶望的な神々しさが画面を覆っていた。そしてモノクロからカラーへ>>続きを読む

昼下りの情事 古都曼陀羅(1973年製作の映画)

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多分いちばん見せたかったであろうピンポン球のショットは、ちょっと安っぽさがあって乗れず。メタファーが演出の奴隷でしかないというか、前後のショットにわたる拡がりがなくてそれ自体で完結してしまっている感じ>>続きを読む

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)

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廃屋のシークエンスが異様に良い。窓を隔てて見る/見られる運動の往還がスタイリッシュにつながれてゆく。全体とおして目まぐるしいモンタージュと、パスコアルみたいなちぐはぐな劇伴。台詞を排して前景化される肉>>続きを読む

風花 kaza-hana(2000年製作の映画)

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相米の遺作、あまり評価されていないけれど自分はわりと好き。風景をまったくきれいに撮ろうとしていなくて。冒頭の長回しからすでに不穏なのだけれど、こんなに美しく見えない桜もなかなかない。晩年の相米はクレー>>続きを読む

エターナルズ(2021年製作の映画)

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クロエ・ジャオの画としか言いようがない荒涼とした風景を好き勝手に侵犯するVFXの暴力性ばかりがいやに残る。話の内容も途中からまったくついていけなかった……。私のマーベル史観は相変わらずGoGで止まって>>続きを読む

ロビンソン漂流記(1954年製作の映画)

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『この庭に死す』を彷彿とさせる雄弁な大自然の色彩美。ブニュエルはなんでも撮れるな。