今回の回顧上映のラインナップにおいてはもっとも微妙な出来。演者が急に怒鳴りだすので心地よいまどろみにも浸れずつらかった。
『私、あなた、彼、彼女』と『ジャンヌ・ディエルマン』、双方のエッセンスが見て取れる。異様な被写界深度の浅さで人物が背景から浮いているかのように処理される、それがアンナの寄る辺なさの表象のようでもあった>>続きを読む
シネスコの画角の広さを活かしたダイナミックな戦闘シーンだけでも観る価値はあった。しかし良くも悪くも『シン・ゴジラ』ほどのドライブ感はなく、これが老練なのか萎縮なのか判然としないがとくに後半の物足りなさ>>続きを読む
『serial experiments lain』を思い出した。アニメではなくゲームのほう。
字幕の視認性の悪さ(フォントも改行もよくない)が気になって内容が頭に入らなかった。ジャームッシュがいた。
『さらざんまい』で垣間見られたような、VFXを駆使した写実的な新規カットを効果的に散りばめつつ、テレビアニメの総集編として調子よくまとめられていた印象。ばかみたいにコミカルなイクニ節が損なわれていなく>>続きを読む
お話は案の定わけわからんのだが、やたらと金のかかっていそうなセットや壮観なロケーション、妖艶な衣装の魅力で飽きることなく観ていられる。それで充分じゃないか。
男性至上主義の映画史において見落とされてきた、強いて言うなれば"生活"としか名付けようのない、でもたしかに(幾多の"男たち"のドラマの裏側で)流れていた時間を掬いとる試みとして、ここまでの着眼点の鋭さ>>続きを読む
全体的にカメラポジションが好みではなかった。しかし、唐突にフィックスから解放されたカメラが遠景に動く対象を見定めたときのスリリングな連動は、恐ろしく幽玄で美しかった。語りのリズムは原作に近しいものを感>>続きを読む
テン年代オールタイムベストの一本。ヴァカンスにふさわしい地上の楽園を舞台に、徹底した管理と統制によって秩序を保とうとする大人たちとその目をかいくぐろうとする若者たち。そのどちらかに肩入れするのではなく>>続きを読む
193分、実際よりもずっと短く感じた。リヴェットの批評精神がふんだんに発揮された一本ではなかろうか。ストーリーの晦渋さはいつものことだが、美術や衣装がポップでずっと観ていられてしまう、夢見心地だった(>>続きを読む
クセになるオフビート感。パスカル・オジェのアンニュイな魅力が炸裂している。あの第一声にすべてもっていかれた。あと毎日ちがうヘアスタイルなのも可愛かった。リヴェットにしては明快で(ドン・キホーテを下敷き>>続きを読む
ハリーポッターよりファンタスティックだった。洗練された構図と色彩美、被写体をトラッキングする鮮やかなカメラワーク、素晴らしいの一言に尽きる。リヴェットの映画において物語は後景のさらに後景でしかない。
人口密度の高い画面にあっても被写体を的確に捉える洗練されたカメラワークが見事。なによりT.U/T.Dが流麗で官能的だった。
どう評価を下せばいいかわからないのが正直なところ。ドニ・ラヴァンではなく今をときめくアダム・ドライバーである理由は、漆黒のバイクにまたがる彼の体躯が最初に映されたときの畏怖にも近い感動とともに諒解され>>続きを読む
鮮やかな動線処理とか引きのショットのダイナミズムとか凄まじさを感じるところは多々ありつつ、でも終始カメラワークの(不気味なまでの)小気味よさに目が疲れてしまって没入できなかった。あと途中から急にリズム>>続きを読む
ドラマもくそもない、ただただ編集のリズムに乗れるかどうかがすべてのような気がする。演者が(本来的な意味での)演者ではないがゆえの映画的必然に貫かれているからこそ、ラストシーンの映してはいけないものを映>>続きを読む
もはやブレッソンだからこそ成立し得ている作品なのでは。抑揚もなくぬるっと、カメラワークだけで事後的にアクションを積み重ねていくのが不気味でしょうがない。肉体性を奪われた幽霊たちの映画のようだ。何度か意>>続きを読む
Blu-rayを手に入れたので数年ぶりに見返した。こんなに微妙な映画だったっけ……。このあとに撮る『ブロークン・フラワーズ』がコンパクトな傑作なだけに、ただただ冗長に感じてしまった。
物語も感情も安易には読み取れない、ゆるやかに流れる夏の時間のなかで、人と人のあいだを風が吹きぬける、言ってしまえばただそれだけの映画である。しかし画面にはつねに喪失の悲しみが横たわっている。カメラが実>>続きを読む
『ダムネーション』とちがって、まだスタイルが確立されていない初期作。しかしこれはこれで相当おもしろい。まずタル・ベーラ作品でカラーというのが違和感ありまくり。動物もぜんぜん出てこないしまさかの会話劇(>>続きを読む
結局いつものホン・サンスだが、舞台がカンヌなのとイザベル・ユペールの起用によって画面がいつもより瀟洒に華やいでいる。そこに埋もれない存在感を放っているキム・ミニが見事だ。
ムーディーな演出が多くてびっくり。『サタンタンゴ』と較べればカットもこまめに割られているしカメラもよく動いているし、やたらと親しみやすさを感じた。私が馴致されてしまっているだけかもしれないが。タル・ベ>>続きを読む
ややもすると陳腐な仕上がりになりかねない題材だけれど、特定の人物に肩入れする素振りもなく中立性を保ったまま(つまり淡々と)展開していくことで、素晴らしくスリリングな緊張感が持続している。自ら問いを立て>>続きを読む
濱口のフィルモグラフィにおいては異色に見える。会話劇の要素がほとんどない。でも肉体の接触によって自他の境界を探ったり、モノを介してその重心を保ったり、といった身体的/精神的な不確かさをめぐる描写はあき>>続きを読む
ご本人登場で沸いた。根っからの濱口ファンしか興味を示さないような初期作だけれど、すでにモチーフはあるていど定まっていたのだなあと思い知らされる。アフレコが下手くそなのはご愛嬌。
冒頭のつなぎからすでに不穏でおもしろい。交わらない目線や噛みあわない会話だったり、手や足への執拗なフォーカスだったり、すべてが洗練された編集のセンスによって異物感を携えながらも小気味よく流れていく。表>>続きを読む
こんなに揺さぶられる映画体験もそうそうない。幸福という名の地獄である。思わず目を逸らしたくなるような気まずい瞬間の連続、それが(あろうことか5時間もの長尺で!)イメージの濁流となって観るものの心を毛羽>>続きを読む