レクさんの映画レビュー・感想・評価 - 22ページ目

(2019年製作の映画)

4.1

女性が母親になる葛藤を描いた、時代を跨ぐ三部構成のヒューマンドラマ。

子を授かるということはどれだけ奇跡的で、困難なことなのか。
愛と狂気は紙一重、越えてはならない一線も常軌を逸した行動もすべては過
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ブルー・マインド(2017年製作の映画)

3.5

思春期の少女の不安定な心模様を描く青春ダーク・ファンタジー。

生々しく可視化した心身の変化は進化か、それとも退化か。
大人への通過儀礼と苦悩や葛藤からの解放。
不吉な象徴とされる"それ"をポジティブ
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ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年製作の映画)

1.0

知らない方がいいこともあるダーク・コメディ。
流石にこれは笑えない。

話が面白いかどうかとか、実話であろうがなかろうが、あの流れで子どもにあの台詞を吐かせた脚本で一気にこの映画が嫌いになった。
色ん
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王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

4.4

言葉で表面化される世界、反復されるリハーサルの差異。
フィクションを積み重ね、突き詰めていくことで作られる"映画"を観て、我々観客はリアルを見出す。
この映画制作と観客による想像や解釈、フィクションと
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デュスティン 夜の狂騒(2020年製作の映画)

3.0

ナイラ・ギゲ監督による20分短編映画。

LGBTQ+コミュニティのどこにも属せないトランスジェンダーの苦悩をドキュメンタリー調に描く。
夜のパーティーの高揚感と夜が明け日常へ引き戻される虚しさは彼女
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ドロシーが生んだ悪魔たち(2021年製作の映画)

3.8

落ち目の映画監督を題材にした29分短編映画。

自分が撮りたいカルト映画とプロデューサーが望む一般受け映画、その葛藤を虚実交じるグロテスクな世界で表現したカルト的思想。
『オズの魔法使い』を下敷きに魔
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みにくいアヒルの子(2021年製作の映画)

2.5

アントン・バルクジャン監督デビューの25分短編映画。

1年ぶりに再会した若き考古学者の兄と問題児の弟。
親から比較される兄と弟、兄として弟としての役割が求められる。
見た目で判断してはならないという
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ミドと森のミュージシャン(2020年製作の映画)

2.0

6分の短編アニメーション。

歌が大好きなミドが森の音楽隊と出会って自分が音痴なことを知る。
得手不得手とは本来、誰かより秀でているもしくは劣っていることではなく、自分にとってどうなのかということ。
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アストラリウム(2020年製作の映画)

2.5

4分半の短編アニメーション。

創造主、神の姿を模した人間。
アストラリウム、太陽系を模した浜辺のアクアリウム。
子どもの純粋さは時に残酷さへと変わり、人間のエゴを以てしても自然の猛威には逆らえない。
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誤植(2021年製作の映画)

3.5

ジュリオ・カルガリ監督による19分の短編映画。

考古学の教授が、その時代にあるはずのない現代フランス語で「母親は娼婦」と書かれた碑文を見つけて取り乱すコメディ。
意味を見出したがる現代で、"世の中は
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旅立ち前夜(2020年製作の映画)

3.2

監督の卒業制作作品、19分短編映画。

出会いがあれば別れもある。
監督の思い出の地ジュネーブを舞台にドキュメンタリータッチだからこそ反映される"別れ"に対する少女たちの想い。
また、その背景にある格
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たからもの(2020年製作の映画)

3.4

フランス製作の7分短編アニメーション。

海底で愛する者と愛を育む大タコの元に、愛する者を奪おうとする宝探しの探検家が現れる。
虻蜂取らずとは正にこの事。
大タコの純粋な愛の前では、人間の欲と二人連れ
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強い男(2020年製作の映画)

2.5

監督が5日で制作した23分の短編映画。
若者二人とベトナム系の老人の偶然の出会いを描く。

「思いやりに心が温まる」と紹介されていたが、どこがだよとツッコミたくなる。
保身的な行動で感謝される皮肉、残
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子ぐま(2021年製作の映画)

3.8

夢遊病を題材にした28分の短編映画。

夢は現実逃避だけでなく、思い描いた理想を実現にするもの。
夢遊病の少女が夜な夜などこへ向かっていくのかを探っていくミステリーと心温まるファンタジーが織り成す"夢
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目には目を/似たものどうし(2019年製作の映画)

3.4

片目の海賊の船長が酒場で乗組員を集めて、宝探しに出る6分の短編アニメーション。

何度も何度も挑戦し続ける姿とアニメーションの愛くるしさがクセになる。
ストーリーとしてはありきたりでメッセージ性も弱い
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(2020年製作の映画)

3.5

ゾエ・ペルシャ監督の15分短編映画。
前科者の女性が勤務先の店でお客さんをデートに誘ったことから自信を取り戻していく。

太陽の光に照らされて淡い輝きを放ちながら夜空に浮かぶ月のように、社会的弱者や生
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強く抱きしめて(2021年製作の映画)

3.0

監督のデビュー作、6分30秒の短編アニメーション。

暗い森で夜ごと交わされる燃えるような求愛の儀式。
出会いと牽制、惹かれ合い別れていく普遍的な男女の営みを野性味溢れる躍動感と扇情的な劇伴を用いて官
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孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)

2.5

人類が滅亡し誰もいなくなった町を整理していく主人公の元へもうひとりの生存者の少女が現れる。

静寂、人との繋がり、過去と未来。
原題『I Think We're Alone Now』から察する通り、世
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図書館の自殺(2016年製作の映画)

2.8

有名作家である母親の自殺の原因となった男に復讐する双子の話。

冒頭の雰囲気は良かったが次第に計画の綻びが見え始め、中盤からテンポが急激に悪くなる。
ただ、双子設定と物語のトリックに「つまらないなあ…
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ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(2015年製作の映画)

4.1

少女が北極点を目指す単純な物語に、希望と絶望の交錯で際立つ感情の起伏、想いの力強さ。

そこに抽象化された柔らかなタッチと色面の構成や色彩の濃淡に拘った美しく豊かな背景のアニメーション表現が溶け込む。
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ルームロンダリング(2018年製作の映画)

3.4

事故物件に住んで履歴を消す仕事"ルームロンダリング"を請け負う幽霊が見える拗らせ女子の青春コメディ。

割と重ための話を中途半端に緩く描いた反動で、感動的な場面までも軽く映る。
設定は面白いので、もっ
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グレート・インディアン・キッチン(2021年製作の映画)

3.7

見合い結婚、男尊女卑、家父長制、穢れ、宗教的思想。
家に、台所に、女性を縛り付けるインドの暗部を凝縮した映画だ。

特に保守的な中流階級に今も根付く悪しき風習は、真綿で首を絞めるように徐々に、それでい
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クレッシェンド 音楽の架け橋(2019年製作の映画)

4.3

イスラエル・パレスチナ和平交渉の企画として両国から集められた若者たちがオーケストラを結成する。

パレスチナ問題は歴史ではなく家族の物語であり、政治ではなく日常である。
繰り返される爆撃、蓄積していく
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バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ(2021年製作の映画)

3.3

ポール・W・S・アンダーソン監督作品、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演『バイオハザード』のような"アクションホラー映画"ではなく、ゲーム1、2作目に準じた"ゾンビ映画"としてリブートした試みは好感が持てる。>>続きを読む

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.9

『エール!』のリメイクとして忖度なしに傑作だと呼べるタイトルのダブルミーニングの上手さ。
ただオリジナル版と比較すると家族とのコミュニケーションに重きが置かれていて、それが顕著に表れる演出は音楽の楽し
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エール!(2014年製作の映画)

4.2

聴覚障害を持つ家族に囲まれた健聴者の少女が歌を通して家族の絆を深めていくヒューマンドラマ。

ユーモアを交えつつ、マイノリティに焦点を当てた語り口。
手話と歌、家族と夢、その苦悩や葛藤を乗り越える彼女
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声もなく(2020年製作の映画)

4.1

話せぬ青年と誘拐された少女の奇妙な同棲生活。
抑制の効いた日常と善悪の価値観を揺さぶる決断の連続に、何が幸せで何が不幸なのかわからなくなる。

疑似家族を模したストックホルム症候群の類に家父長制や男尊
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さがす(2022年製作の映画)

4.0

本作『さがす』はポン・ジュノ監督作品『母なる証明』や山下敦弘監督作品『マイ・バック・ページ』などで助監督を務めた片山慎三監督の長編2作目となってます。

『岬の兄妹』と同じく社会的弱者や貧困がひとつの
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こんにちは、私のお母さん(2021年製作の映画)

3.8

母を巻き込んだ交通事故がキッカケで20年前にタイムスリップした娘。

迷惑をかけてきた母を喜ばせたいと奮闘する娘の姿に笑い、娘を想う母の気持ちに涙する。
親子愛に包まれ、幸せとは何かを考える。
強引に
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TOKYO!(2008年製作の映画)

3.6

ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ、3人の監督が東京を舞台に撮った3本のオムニバス映画。
世にも奇妙な物語のような作風ながらそれぞれの監督の特性が引き出され、日本らしからぬ空気を醸
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各駅停車(1992年製作の映画)

3.9

1992年カンヌ国際映画祭短編部門パルム・ドール受賞、サム・カルマン監督による9分の短編映画。

毎朝同じ時間に同じ電車で通勤する仕事人間の男が、運行ダイヤの改訂により人生を狂わされる。
30年前の作
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勇気を出せ!(2021年製作の映画)

3.6

アドリアン・モイズ・デュラン監督デビューの15分短編映画。

SNSと恋、現代のティーンエイジャーを捉えた青春。
通学バスの中で姉に唆される弟と、少し奇を衒った粋な演出が良い。
また、表向きは描かれな
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愛の痛み(2020年製作の映画)

3.3

エルザ・リスト監督による思春期ならではの不安定な感情と心情の変化を切り取った32分短編映画。

控え目でおとなしい女性が無痛症の暴力的な男性と出会って、愛と痛みを知って暴力に目覚めていく。
身なりを気
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オラシオ(2019年製作の映画)

3.5

大声で怒鳴ってきたという理由で男性を殺害した事件のニュースに着想を得たキャロリーヌ・シェリエ監督が、殺人事件を起こした若者を主人公に描いた短編アニメーション。

殺害に至った経緯と彼が抱える息苦しさを
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ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない(2014年製作の映画)

3.5

強盗犯と人質の逃避行を描いたクライム・コメディ。

それぞれの立場や構図を入れ替えて見せる男同士の友情と夫婦間の愛と再生。
破茶滅茶なドタバタ騒ぎを挟むことで、ラスト良かったねで終われるのが映画の魔法
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コンフィデンスマンJP 英雄編(2022年製作の映画)

4.0

詐欺師たちの頂上決戦。
騙される映画だと知られた上で観客を騙して楽しませる脚本力とダー子はじめキャラの立ったファンムービーとしてとても面白い。

今まで積み重ねてきたもの、材料を上手く調理した最高のデ
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