フラハティさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

フラハティ

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サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.0

喪失が生み出す“青”という色。


ミカエル・アースが『アマンダと僕』で有名となり、後程日本で公開されることとなる本作。
最愛の人が突然亡くなる。
その瞬間彼は、二人がいた部屋から彼女の帰りを待ってい
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8 1/2(1963年製作の映画)

4.2

映画とはすべて正しくあるべきで、誰かの共感性を高めるべきであるものなのか。


前作『甘い生活』より本作が製作されるまでに4年を要している。
フェリーニのキャリアの中でも完成に至るまでが長いことは明白
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甘い生活(1959年製作の映画)

3.6

『(どうでもいい人生でいいならば)甘い生活』


従来のネオレアリズモの作風に変化が生まれたのが本作と言われており、フェリーニは本作でパルムドールを受賞。
『道』に続く代表作となった。

観るのがなか
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そして誰もいなくなった(1945年製作の映画)

3.4

クローズドサークルの代表作、堂々の映画化。


今や説明不要の大傑作、アガサ・クリスティの代表作『そして誰もいなくなった』を、“詩的レアリスム”でお馴染みのルネ・クレールが監督。
ルネ・クレールは今年
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野火(2014年製作の映画)

3.4

戦争の記憶は人類すべてに遺されるべきあるもの。


市川崑作のリメイクであり、史実を基に映像化された『野火』
オリジナルは未見ではあるが、大筋はほぼ同じとのこと。
ただ本作に関しては行き過ぎた表現を多
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ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー(2010年製作の映画)

3.1

ヌーヴェル・ヴァーグすべての関わりに感謝と愛を。


映画の全盛期はこの頃ではないかと密かに感じている。
映画を芸術として捉える人間は一定数いるとは思うが、少数であると思う。
現代は娯楽が多数存在し、
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エル・スール(1982年製作の映画)

4.3

理解を越えた先にある本当の姿。


過去が存在しないかのような父親を意識し始めたのは、ある女の名前。
身近にいながら理解していなかった父の背中を娘は追うようになる。
父が誰にも語らなかった人生の存在は
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(1961年製作の映画)

4.2

愛してる?愛してる?


アントニオーニが語る愛について。
ブルジョア夫婦が語る愛について。
孤独な人々が語る愛について。
冷めきった夫婦が、ある一夜を通して見て見ぬふりをしてきた関係性に、明らかな異
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2000人の狂人/マニアック2000(1964年製作の映画)

2.7

※この村には2000人も狂人はいません。


低予算で作品を製作した監督ハーシェル・ゴードン・ルイス。
スプラッター映画史において第一人者であり、本作が彼の中で最も高い評価を得ている作品である。
後に
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コーマン帝国(2011年製作の映画)

3.5

地球の映画ファンが感謝してる。


低予算映画の帝王ロジャー・コーマン。
彼が作る映画は何百本もあるが、どれも予算が少ないものばかりでありながら、しっかりと黒字にするという敏腕。
数多くの監督、俳優た
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銀河鉄道の夜(1985年製作の映画)

5.0

遥か遠くに見える銀河がすぐ目の前まで迫り、永遠に消えることのない旅路へ向かわせる。


やっぱこの映画は何度観ても凄いと感じるし、永遠に好きと言うことができるのだと思う。
本作のような映画に自分は出会
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イゴールの約束(1996年製作の映画)

4.1

今まで過ごしていた世界が変わっていく瞬間。


初ダルデンヌ。かなりヘビー。
一人の少年が現在何の問題もなく生きている世界で、ある問題に衝突する。
他者から見ればそもそも問題のある世界ではあるが、少年
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近松物語(1954年製作の映画)

3.6

愛を貫く生き方を問う。


スター嫌いである溝口が当時のスター、長谷川一夫をキャスティング。
ヒロインの香川京子は、『山椒太夫』に続きキャスティングされる。
近松門左衛門×井原西鶴を依田が脚色し、本作
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山椒大夫(1954年製作の映画)

4.2

人は等しく生きる権利がある。


『雨月物語』に次いで、ヴェネチア銀獅子賞を受賞した本作。
森鴎外の同名小説を映画化。
割と設定とか変わってるみたいだが、原作は未読なので問題なし。
人身売買により両親
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祇園囃子(1953年製作の映画)

3.7

そうしてまた私は京を歩く。


『祇園の姉妹』から17年後。
短い期間ではあるが、戦後という時代へと変化を遂げた京の街。
「こんな仕事なくなればいい!」と嘆き、苦しみ抜いた祇園の姉妹たちは、その後どう
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雨月物語(1953年製作の映画)

4.3

世界で最も知られる溝口作品。


上田秋成の同名小説及び、モーパッサンの『勲章』など脚色を加えられた本作。
怪異により引き起こされる人間の欲や、愚かさを描いた本作。

まさに日本映画らしい。
百姓なが
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西鶴一代女(1952年製作の映画)

3.4

不運すぎる女ここに。


海外で溝口が名声を得たのは本作であり、ヴェネチアで国際賞を受賞。
溝口、主演の田中絹代共にスランプに陥っていたとのことだが、本作で見事にスランプを抜けたとのこと。
本作から溝
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お遊さま(1951年製作の映画)

3.1

どうした溝口。スランプか。


大傑作『残菊物語』以降、長いスランプが続いている溝口。
本作で初のタッグとなる、偉大なカメラマン宮川一夫。
原作が谷崎潤一郎というのを見たとたん嫌な予感がしたが的中。
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残菊物語(1939年製作の映画)

4.8

本心から誰かのためを思うこととは。


超絶大傑作。めちゃくちゃよかった。
たぶんこれが溝口最高傑作。
戦前の溝口最高傑作とも名高い本作。
戦前の溝口作品の中でも全編残っているという、希少な作品でもあ
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祇園の姉妹(1936年製作の映画)

3.9

京都の片隅に。


実際は90分ほどの作品だが、フィルム消失のため、現存しているのは69分のバージョンである。

京都の芸姑の姉妹が主人公。
姉の梅吉は情に厚く、破産した男を自分達の家に呼び込むほど。
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浪華悲歌(1936年製作の映画)

3.7

不良少女ここに誕生す。


本作より脚本は依田義賢が担当することとなり、これより長く溝口とタッグを組むこととなる。
本作以前の作品群は消失したものも多く、自分は観られる環境にないので何とも言えないが、
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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.9

ノーラン版007。


時間がまっすぐ進む世界線と(結果に進んでいく世界)、時間が逆に進んでいく世界(結果から戻っていく世界)が複雑に入り乱れる世界観。
でもやってることは結局、ノーランが大好きな00
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クロニクル(2012年製作の映画)

3.5

大いなる力には大いなる責任が伴う。


日本が世界に誇る大友克洋の名作『AKIRA』よりインスパイアを受け製作された本作。
超能力を得た三人の少年たちが、その力を段々と強めていく。
その結果待ち受ける
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美しき緑の星(1996年製作の映画)

3.1

“人類を目覚めさせる映画”、なんだってさ!


数々のレビューより、“スピリチュアル的”とか“宗教色が強い”とか、わりかしアレな映画かと思っていたが、コメディチックに作られたフランス版『不思議惑星キン
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四月の永い夢(2017年製作の映画)

4.4

拝啓 四月の永い夢様

花の盛りもいつしか過ぎて、本格的な夏を迎えました。
お変わりありませんか。


中川龍太郎監督の前作、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』と扱っているテーマはそのまま。
残され
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アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)

4.8

古き良きアメリカ。
そして永遠に刻まれる一夜。


本作を制作する際、F.F.コッポラからは「もっと万人受けする映画を」と。
完成した作品を観た制作会社からは「こんなつまらん映画誰が観るんだ」と。
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他人の顔(1966年製作の映画)

4.7

誰もが仮面を被ってるんですよ。


安部公房の同名小説を映画化。
顔を事故で負傷した男が、新しい顔に出会い生まれ変わる。
監督はATG初の日本映画を産み出した勅使河原宏。

表面的な顔という箇所。
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カツベン!(2019年製作の映画)

3.4

活動弁士という職業について。


周防正行の5年ぶりの新作。
映画が誕生した当時、映画には音がついていなかった。
映像と差し込まれる文章が作品の理解を進めさせており、いわゆるサイレント映画と呼ばれるも
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ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー(2017年製作の映画)

3.9

謎多きサリンジャーの生涯。


絞られた情報から描かれるJ.D.サリンジャーという伝説の作家。
長編小説は『ライ麦畑でつかまえて』のみ。
しかし、20世紀においてもっとも重要な小説の一つとして有名であ
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オール・ザ・キングスメン(1949年製作の映画)

3.4

理想主義の限界と、政界の実情。


1950年アカデミー作品賞。
政治の腐敗を描いた社会派作品は、当時ではまだ珍しいものだった。
監督のロバート・ロッセンは本作により称賛を浴びるも、“赤狩り”によって
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モーターサイクル・ダイアリーズ(2004年製作の映画)

3.7

あなたはなぜ旅をしているの?


「あれ、俺恵まれてね?」
エルネスト・ゲバラがチェ・ゲバラの一歩を踏み出した旅。
旅を始めた理由はただ自分を探すため。
はじめは単なる大学生のロードムービーだった。
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憎しみ(1995年製作の映画)

4.0

“50階から飛び降りた男がいた。
落ちながら彼は確かめ続けた。
ここまでは大丈夫。
だが大事なのは落下ではなく着地だ。”


印象的なフレーズで始まる本作。
監督のマチュー・カソヴィッツ曰く、「フラン
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パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)

4.5

もうひとつのパリ。


パリ18区。
冷戦が終焉を迎え、91年にソ連は崩壊した。
世界はこれから希望へと向かっていく。
それはこのパリ18区でも同じはずなのだが。

本作は1987年に起きた老女連続殺
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ニコラス・ケイジの ウェザーマン(2005年製作の映画)

3.9

あくまで予測なんだ。当たるわけがない。


監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのゴア・ヴァービンスキー。
脚本には“人生”や“家族”を題材にした作品を打ち出しているスティーブ・コンラッド。
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オープン・ユア・アイズ(1997年製作の映画)

3.6

夢と現実の狭間で、男は再び夢を見る。


2001年にトム・クルーズがリメイクをしたことで話題にもなった本作。 
この頃のトムは現実と夢が歪んでいくような作品を好んでいたのか。

現実と夢の狭間で歪ん
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ラストタンゴ・イン・パリ(1972年製作の映画)

2.6

私の名前は…。


公開当時より、数々のスキャンダラスな内容に問題視される本作。
ベルトルッチ作品のなかでも興行的にも成功とは言えず、主演のマリア・シュナイダーは本作により女優の道を険しいものとされる
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