フラハティ

サマーフィーリングのフラハティのレビュー・感想・評価

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
4.0
喪失が生み出す“青”という色。


ミカエル・アースが『アマンダと僕』で有名となり、後程日本で公開されることとなる本作。
最愛の人が突然亡くなる。
その瞬間彼は、二人がいた部屋から彼女の帰りを待っていた。

次回作である『アマンダと僕』はタイトル通り二人で悲しみを乗り越える。
本作は一人で乗り越えるという印象が強い。
当たり前だが、一人の人間が所属する場所は何ヵ所かあり、悲しみを享受できる場所も何ヵ所かある。
本心を吐露できる場所は何ヵ所も存在しない。あるいは一ヶ所も。


人が亡くなるという現象は避けて通ることはできない。
誰もが通りすぎる悲しみを抱えたまま生きることは苦しい。
かといって一瞬で失くせるほど軽くはない。
本作はセラピーのような、いかにもな処置を行わず、時間が過ぎ去ることを見守ることしかない。
夜の場面では人と集まり、孤独や無音の時間は少ない。
逆に朝の場面は一人が多い。
明るい陽射しと対象に、昨日起きたことは夢ではないか?いつも一緒に目覚めていた彼女がベッドにいないという暗さを感じる。
辛い気持ちで一日をスタートさせる。
こう考えると、毎朝を迎えることは幸せでもあり辛さでもある。
夜なんかより果てなく孤独かもしれない。

繊細な温もりや見守る寛容さのような部分はやはり監督の色かなと。
女性らしい作り込みは確かにロメールっぽい。

本作は青色が象徴的に表現されている作品。
監督曰く青は好きな色らしく、映像的にも映えるのだとか。
青色は冷たいという印象を与えると同時に、海や空のように雄大さや解放感といった感触も与える。
広がりを見せる水平線の先には、温かい光を感じさせる。
スッと心に入ってくる感覚は、悲しみと共に生きるからこそ奥深い。
フラハティ

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