地球の映画ファンが感謝してる。
低予算映画の帝王ロジャー・コーマン。
彼が作る映画は何百本もあるが、どれも予算が少ないものばかりでありながら、しっかりと黒字にするという敏腕。
数多くの監督、俳優たちが敬愛して止まないロジャー・コーマンという男は一体何者であるのだろうか。
同じような監督にエド・ウッドが挙げられるし、本作を鑑賞するまでは同じような監督と思っていた。
エド・ウッドは自身の作品に愛情を注いでいた。
だが、コーマンは作品に対する愛情というよりは、映画産業全体における愛情というものを感じさせる。
何より彼は自身の金を使うことで作品を完成させたという、リスキーな戦いをしている。
たった数日で映画を撮り、とにかく予算を極限まで削減。
暴力、セックス、ドラッグなど“搾取映画”という作品を撮る傍ら、人種差別批判や女性が敵に立ち向かうといった、コーマンのこだわりを感じる作品も存在する。
どんなに間抜けな映画でも、そんな映画を楽しむ人間が存在するのならば、一生彼のイズムは受け継がれていく。
彼の人間性の深さは、彼を慕う多くの人々を見ればすぐにわかる。
でも彼の後継者は一生生まれることはないだろう。
「バカな映画でも好きでいていいと言ってくれた。」
本作で知ったのは、ベルイマンやフェリーニらの偉大な監督たちのアメリカ未公開作品をハリウッドに斡旋したのはコーマンということ。
この点で、コーマンは映画をただのビジネスと考えているわけではなく、一つの文化として尊重していることが伺える。
資金を投入すれば偉大な作品が生まれるのか?
その答えはNOである。
『スター・ウォーズ』と『ジョーズ』の二作品が世間を賑わせ、コーマンが製作していたSFとホラーというジャンルに、大きな波が立った。
多くの金が注ぎ込まれた大作に、観客は目を奪われる。
だがそこまで金を使った作品が、素晴らしい映画なのか?
映画にそこまでの金をかけるなら、直接的に社会に貢献する金を寄付する。
限られた予算のなかで、どうやって観客を楽しませるかという部分が大切であり、金で解決するのは傲慢ではないか。
そんな問いを投げ掛ける。
これはたぶんコーマンの嫉妬のようなものもありそう。
ロジャー・コーマンの作品をろくに観たことがなかったので、色々と勉強にはなった。
が、彼の凄さという部分でいうと、かなり浅いような気がしてならない。
映画史(ハリウッド映画史?)において、独立系のプロデューサーとしても敏腕なので、もう少し掘り下げてほしいし、知りたかったなぁという印象。
まあでも面白かった!
とりあえずコーマンが、ホドロフスキーほどの情熱を持っていることはわかった。
しかしあなたの映画をお金を使って観たいとは思えないのが(ごめんね)。