ニャーすけ

平家物語のニャーすけのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
3.5
高畑勲の『かぐや姫の物語』同様、日本人なら誰もが知る古典文学の現代的脚色が完璧。
一見、芸術的で美しい映像表現に魅了されるが、平家vs朝廷の生き馬の目を抜くような権力闘争はまるで『アウトレイジ』のようだし、鎌倉時代における女性の扱いのグロテスクさには悪寒が走る。

初めの数話を観た時点だと、それこそ『スカーフェイス』のように、栄華を極めた人々の呆気ない没落を冷徹に見据えるタイプの作品なのかと思ったが、終盤から実はそのまったく逆のテーマが立ち上がってきて驚いた。
要は、誰からも顧みられることもなく、ただ歴史に埋もれていくはずだった者たちのために「祈り」、彼/彼女らの生涯を尊ぶべきものとして「語り継ぐ」こと。ここで本作の主人公が琵琶法師の少女であることの意味が判明し、思いがけず感動してしまった。『ウォルト・ディズニーの約束』や『つぐない』など、こういう「表現論」についての作品には弱い。
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