ニャーすけ

ONI ~ 神々山のおなりのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

ONI ~ 神々山のおなり(2022年製作のアニメ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

あの天下のピクサーでアートディレクターを務めた経験のある堤大介氏と、超平和バスターズとして『あの花』や『ここさけ』の脚本を担った岡田麿里氏。日本を代表する2人の天才アニメクリエイターの奇跡的コラボ作品ということで、視聴前のハードルは尋常じゃなく上がりきっていたが、そんなことは完全に杞憂だった。

まず、これは堤氏の功績だが、映像表現の素晴らしさは言わずもがな。ころころとしたフェルトっぽい質感のキャラクターたちはまるでコマ撮りアニメのようで、安っぽいCG臭さは皆無。そんな個性豊かでチャーミングな妖怪たちと、神秘的かつ写実的な背景の自然とのコントラストの美しさは筆舌に尽くし難い。
ピクサーでも際立っていた堤氏によるキャラクターデザインも当然最高で、白眉はやはりなんと言っても主人公おなりの親友であるかっぱくん。自分は日本語吹替版で観たので、声優の新井里美さんの激萌えボイスがその可愛さに拍車をかけており、かっぱくんが出てるシーンはもうそれだけで幸せになれる。なんかめちゃくちゃ意地悪したくなる感じというか、よく見たら微妙に目の位置ズレてるとことか超可愛い。

ストーリーに関しては、はっきり言ってこういう構造の作品は決して珍しくはなく、第1話を観るだけでなんとなく大まかな展開の予想はついた。ただ、だからといって脚本の質が低いというわけではなく、「鬼」という日本土着の伝承を通して排外主義やブッシュ・ドクトリン、環境破壊や衆愚政治という今日的な諸問題にはっきりとNOを突きつける作者の気概には圧倒される。
岡田氏はこれまで一貫して、極めて個人的な過去のトラウマに囚われた人々が、他者に心を開いていくことでそれを克服するという、スケールとしてはとても小さいドラマを得意としていたが、『あの花』から10年も経ってからこんな普遍的な事象をテーマに傑作を生み出すなんて、もちろん堤氏の意向や影響もあったのだろうが、その脚本家としての進化とチャレンジングな姿勢には脱帽するしかない。

ちなみに、本作が『ターザン』や『もののけ姫』の影響下にあるのは明白だと思うが、おなりが男の子から貰った食べ物を頬張りながら涙を流すのは、特に直接的な『千と千尋の神隠し』の千尋とハクのオマージュになっていて面白かった。ただ、これもその食べ物がPB&Jという、おなりにとって異文化のものであることに意味が生まれていて、過去作からの引用としてもめちゃくちゃ巧い。鑑賞後に調べたら、堤氏は宮﨑駿の姪と結婚されているようで、だからというわけではないが、パヤオの地位を継ぐに足る世界的巨匠の最右翼は堤氏で間違いないと確信する。
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