さく

ウディ・アレン VS ミア・ファローのさくのレビュー・感想・評価

3.4
タイトルは“Allen v. Farrow”だけど、実際は、 “The Farrows’ Story: Fight Against Social Injustice” って印象。性犯罪被害者や女性が受けてきた不当な扱いを暴いて欲しいと思っている人たちには求めていた通りのドキュメンタリーだろう。一方で、両側の主張やタイムラインを追って真実を突き止めたいと思うトゥルークライムジャンルを求めていた人には拍子抜けかも。IMDbを見ると評価が両極端に分かれているのも納得。私は前者なのでかなり熱中して見れた。

そもそもタイトルが表す裁判(ディランに対する暴行に関して)は実際には起こってないんだよな。証言台に立たせることは7歳の子供にとって更なるトラウマになるという考えで裁判は起こらなかった。それは当然の選択だと思うけれど、それ故に大人のディランが苦しんでしまう様子も描かれており、あっっっったりまえだけど、どんな子供にもこんな経験させたくないという思いが湧き上がる。

事件が起こった90年代から約30年間で、性暴力被害者が声を上げることへの世の中の意識がいかに変わってきたか。声を上げやすい社会、社会的弱者の声が潰されない社会の大切さを痛感。

モヤりポイントとしては、本作での焦点であるディランのストーリーを伝えるために、「都合よく」消されてしまった声もあったのではということ。モーゼスとスン・イーが主張している家庭内暴力も、「潰されてしまった弱者の声」ではないか?絶対的権力を持つ母親に対し、その権力構造ゆえに養子が声を上げられない/届かないというのは、そもそも本作が社会的地位を持つアレンをとって伝えたかったことでは?本作ではその声すら取り上げてなかったため、違和感が残る。

まあ、この家族に関しては本作でも扱われなかった闇がまだ多々あり、そこを取り上げ出したらキリがない。本作はあくまでディランのストーリーなのだからという意味では納得もするが、点と点がつながればもう少し違った発見もあったのだろうな…とも思う。
さく

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