さく

ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルーのさくのレビュー・感想・評価

4.9
映画館で観るように画面に食いついてみるべき作品。精神的にやられるので二回目は当分見れないし、最初からそうするべきだった。ここ数年で見たドラマの中でベストかもしれない。でも、それは本作が傑作だからというより、自分の琴線に触れたからだと思う。演技が圧巻なのは恐らく万人が同意するだろうけれど、作品自体には多分批判箇所もあるんじゃないだろうか。(私は盲目にハマってしまったので、もうそんな冷静な判断できない…)

トラウマ、後悔、悲嘆とどう向き合うか。Drパテルの台詞に心が打たれた。身の回りに起こった悲劇を「呪いや運命だから自分の手に負えないものだ」と逃げるのではなく、辛くても自分や自分の失敗と向き合うこと。自分の選択で人生や周囲に影響を与えるということは、とてつもなく怖い。が、向き合わず逃げていたら、結局は祖父と同じ運命を辿る。
そういえば最近見たドラマDevsでも、耐えがたい悲劇を経験したが故に、決定論に傾倒してしまっていたな。喪失や悲劇との向き合い方は宗教や哲学にもつながるし、人間にとって永遠の課題なんだろう。

兄弟、親子、パートナー、友人との関係。そういった美化されやすい関係性を、本作の監督はリアルに描く。もちろん、リアルだからこそ精神的にやられるし、キツイ。家族であろうがパートナーであろうが、すれ違いや埋められない溝は避けられない。ソウルメイトに出会ってめでたしめでたしなんてあり得ない。でも「大事な人たちから逃げない」。
最後のエピソードは全く予想していなかった方向転換があり、急に親子のストーリーに。たった6エピソードでこんなに詰め込んで、こんなに伝えるなんて凄いわ……。

何日間か反芻しているけど、これだけハマったのはドミニクに共感するところが多々あったからだろうな。彼みたいに悲劇や苦悩はないけれど。彼みたいに一度全てぶち壊して一から立て直す機会はないけれど。だからといって逃げ続ける言い訳にはならない。
さく

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