ジェイコブ

オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ シーズン2のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

関東明神会のボス龍門が何者かによって殺され、容疑は対立組織である半グレのTMTの宗手にかけられる。姿をくらました宗手の行方を追う警察だったが、そんな中スーパーボランティアとして名を馳せる小西さんが行方不明となったニュースが飛び込んでくる。小西さんの行方を追う青葉とオリバーの捜査線上に、ある牧場が浮かんでくる……。
オダギリジョー監督脚本演出のNHKドラマ。感想を一言で言えば、よくこのドラマにGOサインを出したな公共放送局(笑)
本作の特筆すべき点は、豪華なキャスト陣とおフザケにばかり注目されがちだが、刑事ドラマにありがちな演出を悉く裏切る展開に他ならない。例えば、都合のいいタイミングで証拠が見つかり、また都合がいいタイミングで悪役をよく知る人物が表れ、そして物語は証拠に導かれ、自然と犯人へと向かっていく。今シーズンはそれが如実に表れているため、刑事ドラマの常識に囚われている人ほど、ラストのどんでん返しには呆気に取られるような構成となっている。賛否両論必須と言えるであろう最終話を見て感じたのは、オダギリジョーがやりたかったのは単なるおフザケ刑事ドラマでも、映画小ネタ満載の探偵バディものでもない。誰しもが当たり前と思っている、サスペンスドラマの常識に一石を投じることだったのではないかと。それはオダギリジョー自身がInstagramの配信にて最終話の演出に聞かれた際、「刑事ドラマとかで追い詰められた犯人がベラベラ自分が犯行に至った動機や言い訳を語るのに違和感を感じていた」と答えていたことからも見て取れる。普通の刑事ドラマであれば盛り上がりの最高潮を見せるはずのクライマックスを、舞台の独白にして徹底して滑稽なものにした。親切な説明があって当たり前となっている現代のドラマやアニメから観れば、本作は意味不明だらけで理解不能な作品と思えるだろう。しかし、本作はそんな自分達こそが正当で、王道であると信じてやまない作品に対して、毅然と押忍!と言ってのけるドラマなのだ。その心意気はかつて刑事ドラマの常識を打ち破り、最早伝説となっている勝新太郎の「警視K」と通じるものがあるように感じた。
ツイン・ピークスに憧れて作られたドラマは今まで数多く作られているけど、日本人に受け入れられるギリギリの形で遊びつつも、ドラマとしてのクオリティを落とさずにやり切る構成力の高さも本作の魅力だろう。日本が世界に向けたドラマを作れるのは秋元康ではなくて、オダギリジョーなのかもしれない。
これで終わりと言わず、ずっと観てたいタイプのドラマ。