ジェイコブ

アトムの童のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

アトムの童(2022年製作のドラマ)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

かつて謎多き天才ゲームクリエイター「ジョン・ドウ」として親友の菅生隼人と共にゲームを作っていた安積那由他は、過去にゲームが原因で親友を亡くして以来、ゲームと縁を切っていた。その頃、中小企業ながらもクオリティの高さから玩具業界でその名が知られる「アトム玩具」は、資金繰りに悩み、倒産の危機に追いやられていた。職人の父富永繁雄からアトム玩具の社長の座を継いだ銀行員の海は、経営難の状況を打破するため、オリジナルゲームの開発に乗り出す。ゲームの知識や経験も一切ない社員達が当惑する中、海は「ジョン・ドウ」に接触を試みる……。
TBSの日曜劇場。人気俳優の山崎賢人を主演に迎え、今注目度の高まるゲーム業界を舞台にして繰り広げられる特許技術を巡る大企業と中小企業の攻防を描く。ゲームに対して情熱とアイデアにより戦う那由他や隼人、アトム側に対し、資金力と人脈を駆使して戦う大企業サガスの興津という両者の真逆の価値観がゲーム開発を通して浮き彫りになっていく。前半はサガスが騙し討ちとも言える汚い手を使ってアトムを買収し、アトム玩具の解散という形で幕を下ろす。後半では、ゲーム開発を辞めた那由他と隼人が、ひょんな事から再び世間の注目を集めるゲームをつくり、再びゲームへの情熱が芽生えてくる。これまで優勢だったサガスが、因果応報と言わんばかりに、ファミリーオフィスからの買収の危機に立たされるなど、ライバル側にも環境の変化が訪れる。
後半にて、対極の存在にあった那由他と興津が手を組み、ファミリーオフィスによるサガスの買収を阻止するために戦うのだが、那由他と興津が初めて心を通わせるきっかけとなるのがぷよぷよであるのが面白く、「ゲームは世界を超える」という本作のテーマにもマッチしている。また、アトムの職人繁雄が語る最近のゲームへの言葉は、ある意味コアなゲームファンの意見を代弁しているとも言えるだろう。また、ストリートファイター2や桃鉄など、ゲーム好きならば誰しもが一度はやったことのあるゲームへの愛も語られていて、ファンならば共感する場面も多い。
ただ、那由他があれほど憎んでいた興津に手を貸すのに、葛藤する時間もなくあまりにもあっさり決めていたため、違和感を拭えなかった。
先が読めずワクワクさせてくれた前半に対し、後半にかけての展開が都合よく進みすぎていた点も引っかかる。ファミリーオフィスが絡んだM&A要素を混ぜ込まず、サガスとの戦いだけに絞った方がシンプルで良かった気がする。