綾

ハウス・オブ・ザ・ドラゴンの綾のネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(2022年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

誰のことも心から応援できず、主人公レイニラのこともどんどん苦手になってしまったのが致命的やった……

ヴィセーリスとアリセントの結婚を受け一方的にアリセントを拒絶するレイニラを見て、気持ちはわかるけど親友の立場も少しはわかってあげてね…… となり、「母上の思い出に誓うわ」って平然と嘘をついたときに、いや…… それはあかんやろ…… ってなった。あれは “叔父上とは” 寝てないからってことなのかな。

サー・クリストンとのことも、男女逆の立場ならみんなもっと批判してないか?って。誘惑して(最終的に同意の上ではあれ)貞操を奪った相手に「結婚はできないけど妾にはなれ」は、そりゃあ恨まれても仕方ないよ……

アリセントとのこともクリストンとのことも、罪の意識や寄り添う気持ちが1ミリも伝わってこないところがいややったし、そういう傲慢さがふたりの気持ちを逆撫でしたんじゃないかな……

と言いつつ、5話から6話のタイムジャンプでアリセントもクリストンもめちゃくちゃ意地悪になっててびっくりした……(し、一方的にレイニラが虐げられてるみたいな始まり方は、主人公補正というかちょっと狡い描き方やなあとも思った)

レイニラが私と息子たちは中傷されてる!後ろ指さされてる!って訴えるたび、でも、事実ではあるんよなあ…… って複雑な気持ちになってしまった。息子を守る母の強さとか、レーナーとの取り決めとか、そもそもレーナーとは子どもが作りたくても作れなかったとか、事情はわかるけれど、さすがに居直りすぎでは…?ってもやもやした。

せっかくレーナーが心を入れ替え歩み寄ろうとしていたのにあっさり切り捨てるのとかももう…… たしかにレーナーは王位継承者の夫の器ではなく、あの選択でレーナー自身も自由になれたのかもしれないけれど、結局レイニラは(後継者争い云々ではなく)ずっとデイモンが欲しかっただけやんね…?自分が良ければ息子たちがまた父を失うのも、娘を亡くしたばかりの両親が息子までをも失うのもどうでもええの…?って呆れてしまった。

細かいところやと、ずっと父親を任せっきりにしておいて6年ぶりの帰省で夫と一緒にアリセントの介護の仕方に口出しするのとかもさ……

何より、そういうのがすべて〈一キャラクターの立場〉ではなく〈主人公の正統性〉として描かれていたのがいやだったな。

あくまで主張することも、強引にそれを貫くことも、たしかに強さなのかもしれないけれど。他者への敬意と共感を欠いたそれに私は惹かれなかったし、相手の心にも寄り添ってこそ、本当の強さと呼べるんじゃないかな……


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他方、アリセントのことはいつまでも〈ストレスで指先をボロボロにしていた女の子〉のイメージが離れず、肩を持ってしまった。

欲深な父の命令でおじさんと結婚させられ、そのせいで親友を失い、さらに裏切られたせいで父の後ろ盾も失い、部下たちに恵まれるでもなく、子どもたちも(なぜかレイニラとは違い)癖者揃いで、あげく尽くしてきた夫には前妻と名前を間違えられレイニラが Only child だと言われる……

レイニラの価値観にしてみれば、そんなに嫌ならあなたも反抗してみればいいやん!なのかもしれないけれど。

ドリフトマークの諍いのシーンで上からのアングルになったとき〈プラチナブランドに囲まれたたった一人のブルネット〉という絵にハッとした。胸を突かれた。

(というかあのシーンで「ついに化けの皮が剥がれたわね」って言った瞬間、レイニラが本当にダメになった……)

非情になりきれないところも、「殺しを厭うのは弱さじゃないわ!」ってセリフも、なんだかんだでいつも他者を擁護してしまう甘さも、私には魅力に映った。

アリセントはいつだってレイニラの王位継承を支持してきたしね……(そりゃあ母親として息子の戴冠を望む気持ちも腹の底にはあったんやろうけれど)


ただ、私はいつも義務を重んじてきたのにあなたは…!ってレイニラに掴みかかるアリセントに感情移入しすぎて、めちゃくちゃしんどかった……

共感ゆえのしんどさはもちろん、こんなにアリセントに肩入れする自分って、もしかして相当〈男性社会の価値観〉が身についてしまっているのでは…?って。考え込んでしまったし、今もずっと考えてる。

(あと中学で聖書の放蕩息子の話を学んだとき、自分はずっと真面目にやってきたのに!って怒った兄にめちゃくちゃ感情移入したのも思い出したな……私だって別に高潔に生きてきたわけでは全然ないのにね……しんど……)

頭では、レイニラもアリセントと同じくらい辛い思いをしてきたし、内には弱さも抱えているとわかっていながら、心はどうしようもなくアリセントに味方していて、そういう自分にまたしんどくなる…… なんだかそういう感じが毎話続いてた気がするな。

でも結局、アリセントも私も、いつだって自分の欲や望みに忠実で、強気に生きるレイニラに嫉妬してたんやろうな…… はーーしんど!!!


あと、そうは言っても8話のレイニラとアリセントの和解は涙が滲むほど嬉しかったし、これこそ私がずっと望んできたこと…!って安堵したのに、ヴィセーリスじいさんよおお😭😭😭まじで何してくれとんねんんん😫😫😫😭😭😭

今際のきわで仕方ないとはいえ、紛らわしすぎるやろ…… やから同じ名前を何回も使い回したらあかんのよ……


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「あらゆる権力は民が許し与えるものです」と言ったミサリアにいちばん惹かれたかな。王の手相手に最下層の子どもたちのため交渉できる姿、本当にかっこよかった。

ラリス公はヴァリス公+ベイリッシュ公÷2って感じやったね。やってることはかなり狂気じみていたけれど、そうそう、そういう暗躍の仕方こそGOT…!ってわくわくしちゃった。

エイゴンは「自分は王の器じゃない」と自覚してる分ジョフリーよりはマシかなって思っていたのに、早速玉座の味をしめた顔しててわらってしまった。トムグリくん、ここまで嫌な役やとは思わんかったな……笑 でもやっぱりこの世界観とかターガリエンの血筋が似合うよなあ。

あと、吹き替えが豪華すぎて字幕と交互に観た。早見沙織さんも坂本真綾さんも素敵すぎたし、津田さんのデイモンめっちゃ似合ってたな……


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身分や時代が違えば、ヴィセーリスは気のいいおじいちゃんとして平和に長生きしたやろうし、アリセントは良妻賢母に、レイニラは逞しい冒険家やリーダーにでもなってたんやろうな……

ちょっといろいろしんどすぎたしGOTほどやめられない!止まらない!とはならなかったので、S2は観るか迷う。

でもこれだけ(引くほど長い笑)感想がでてくるということは、やっぱりすごくよく出来たドラマなんやろうね……

スターク家の揺るぎない主人公感が、GOTでは救いになっていたんやなあと痛感しました。

あとオープニングテーマ!!!ありがとう!!!
綾