長内那由多

Mr. & Mrs. スミスの長内那由多のレビュー・感想・評価

Mr. & Mrs. スミス(2024年製作のドラマ)
5.0
回を追うごとに面白くなる。オリジナル版とはガラリと変わって、ほとんど『ある結婚の肖像』のようなオーセンティックな夫婦ドラマ。結婚してからの方が新たな発見があり、愛も憎しみも生まれる。夫婦とはチームなのだ。

『アトランタ』の影響下にあったビル・ヘイダーが『バリー』でシュールレアリスム×ホラー×殺し屋という文法を完成させてしまったので、ドナルド・グローヴァーもこれまでと全く異なるアプローチを模索したのでは。ヒロイン役&脚本は当初、フィービー・ウォーラー=ブリッジだった。

久々に主演スター、ドナルド・グローヴァーを見られる喜び。相手役のマヤ・アースキンも目が離せないファニーさ。出世作の『PEN15』は日本で見ることができない。日本における“海外ドラマ”市場もいつの間にか空白地帯が増えつつある。

E5
謎の要人保護ミッション。いつの間にかすっかりおじいちゃんという風体のロン・パールマンを間に立たせると、パートナーの親への接し方にも見えて面白い(カップルは一気に破綻する事も大いにあり得る重要シチュエーション)。舞台はコモ湖。最近はTVシリーズのロケも贅沢。

E7
ミカエラ・コールがゲスト出演。昨年、奇しくも日本ではドナルド・グローヴァーの『キラー・ビー』とコールの『I MAY DESTROY YOU』がリリースされ、相通じる批評性と精神性に「この2人、絶対に気が合うハズ!」と思っただけに、早くも実現した共演が嬉しい。

完走。
最終回はドナルド・グローヴァーが監督を兼任。雑多な街並みを映したカメラ。笑いと暴力が紙一重のアクション(珍銃もバンバン出てくる)。憎悪の言葉の数だけ愛の言葉があり、思いの丈をドロドロ吐き出す夫婦の姿は可笑しく、しかし同時に泣けて泣けてしょうがなかった。
長内那由多

長内那由多