長内那由多

THE CURSE/ザ・カースの長内那由多のレビュー・感想・評価

THE CURSE/ザ・カース(2023年製作のドラマ)
5.0
『リハーサル』から連続して見ると、いよいよ虚構との境界が崩れるネイサン・フィールダー世界。ここに達者なサフディ(弟)と現代コメディで冴えまくるエマ・ストーンが合流。そしてこれも『BEEF』『mr.&mrs.スミス』から続く現在の住宅事情についての話でもある。

路上で突如浴びせられた「呪ってやる」の一言から始まる不穏。『リハーサル』も十分に不気味だったが、ネイサン・フィールダーは当然のようにホラーとの相性も良さそう。音楽にはダニエル・ロパティン、撮影マセオ・ビショップらサフディ組が参加。フィールダーに触発された化学反応。

エマ・ストーンは『哀れなるものたち』も凄いが、『ザ・カース』も凄い。環境に優しいと謳い住宅を販売する一方、周辺地価を吊り上げる両親に加担する番組製作者役。キャラクターを演じながら、ネイサン・フィールダー流に異化されたリアリティ番組風のカメラの向こうで、風刺コメディとして意図的に演じる絶妙さ。

ベニー・サフディが役者として上手くなっちゃってる事にもビックリ。『リコリス・ピザ』の時は巨匠の現場を覗きたい若手映画監督のカメオくらいに見えたが、『ザ・カース』ではエマ・ストーンを向こうに回してビリング3番手。昨年は『オッペンハイマー』にも出演している。

完走。
各話たっぷり1時間あり、全10話構成はちょっと長く、どこに向かっているかイマイチわからないストレスはあるものの、死ぬほど可笑しい最終回(涙出るまで笑った)で腑に落ちた。ウディ・アレンや、コーエン兄弟『シリアスマン』、近年ではアリ・アスター『ボーはおそれている』が連なるユダヤコメディの最新版かと。ソーシャルメディア、リアリティテレビ時代の承認欲求と自己認識の苦悩。
長内那由多

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