ソラアユム

アンブレラ・アカデミー シーズン2のソラアユムのレビュー・感想・評価

3.7
コミュ障家族


世界の終わりを阻止できず、1960年代にタイムスリップしてしまったヒーロー家族の運命を描くネトフリオリジナルドラマS2

後半で何とか持ち直したものの、世界の終末と一緒にS1での不満や課題をそのまま1960年代に持ってきた様なストーリー

相変わらずファイブの魅力で持ってるようなドラマだが、彼が素晴らしいから問題ない。シリーズ最大の勝因はファイブ役にエイダン・ギャラガーを起用した事だろう。そもそもファイブというキャラの立ち位置や設定が、SW新シリーズのカイロ・レン×アダム・ドライバーの様なおいしい役どころではある。ただ、見た目は子供、中身は大人という実写版コナン君の様な設定モリモリの偏屈キャラを人気No. 1に押し上げたのはエイダン・ギャラガーの才能があってこそ。

今シリーズでも、ファイブが常に物語の中心にいる。世界の終末をどう回避するか、どうやって元の時間軸に家族を戻すか、物語の推進力を生み出しているのは残念なことにファイブだけである。
アクションシーンも素晴らしく、嬉々として〇〇連中を斧とテレポートで鏖殺するシーンは間違いなく今作の白眉だ。

他の家族はというとS1よりは酷くないが、ファイブの足を引っ張りあっているだけ。

ディエゴ、クラウス、アリソンは許容範囲内だが、ルーサー、ヴァーニャは今シーズンも酷い。

前半のルーサーは、何故かファイブに喧嘩腰で全く取り合ってくれない。1960年代に飛ばされたことを怒っている様だったが、ファイブがタイムスリップしなければ家族全員全滅していたし、世界の終末を引き起こした原因の一端がルーサー本人にあるにもかかわらず、この調子なのでいちいちイライラしてしまう。後半では、ファイブがパラドクス症候群に陥ると、途端に聞き分けが良くなったりと製作陣の都合で感情や性格がコントロールされている感が否めない。

もっと酷いのがヴァーニャ(作品内での扱い的な意味でも)
記憶喪失になっても人をイライラさせるってホント才能だと思う。そもそもS2のストーリー自体がヴァーニャが記憶を失ってしまっているせいで、ダークフェニックス的な能力の暴走→世界滅亡というS1の焼き直しになってしまっているのが大きな不満点だ。1960年代にヒーロー家族が飛ばされたら面白くね?とは思うんだけれど、ストーリーの本質がS1から全く進歩してないのは頗る残念。あまり言いたくないけれど「世界の終末の原因とその謎解き」「終末をどう回避するか」「家族」を扱った特殊能力物だと、ストーリーの見せ方や謎の引っ張り方などのサスペンスの部分、ヒューマンドラマも『HEROES』のS1の劣化版でしかない。

よく考えたらコミッション側での話もめちゃくちゃだろう。そもそも何故、ハンドラーがあんなにも自由に1960年代で身動きが取れているのか。トップシークレット扱いの筈の幹部会議の場所をどうやって特定したのかなど疑問が多く残る。容易に瓦解しそうになったり、トップがすげ替えられたりと、あの組織力の弱さはギャグでは済まされないぞ。S1では格を保っていたけれど、天下のコミッションがあの調子では今後のストーリー展開が不安でしょうがない。

アクションに関しても能力バトル物のツボを全く押さえてくれない。
冒頭のMy wayの音楽と共に家族が能力を駆使しながら矢継ぎ早に登場するシーンでおお!アベンジャーズ みたい!と思ったのも束の間、その期待は核爆弾と共に吹き飛んでいく。S1でも思ったけど、特殊能力持ちの家族なのに全然能力を使わないし、幼い頃からハーグリーヴス卿によってありとあらゆる訓練を受けている割に簡単にやられちゃうから一般人にしか見えなくて、アクションがしょっぱいよね。

音楽のセンスだったり、色使いだったりオシャレな雰囲気はあるんだけどストーリーとアクションにもうちょっと気を使って欲しいなぁ

・まさかのベンにスポットが当たる
・実はオレ達だけじゃない?
・親父の正体が…
など面白いストーリー展開もあるし、S1と違ってちゃんとS2での話を終わらせたのには好感が持てた。

S3ではそろそろ家族の華麗な連携プレーが見たいなぁ。期待してます