えぬ

ポッサム~愛と運命を盗んだ男~のえぬのレビュー・感想・評価

4.0
久々に楽しめた韓国本格時代劇。

最近多いキャラも話もライトなフュージョン時代劇とは真逆で、内容はしっかりしてて雰囲気も濃いめで、真面目に作られていて好感度高い。でもそれほど重くもなく、最初から面白くて、ダレる・飽きることのない20話程度におさめたのも勝因という気がする。

演技派と呼び名の高い役者でも手こずることのある、難しい真面目な時代劇で主役二人にこんなオーソドックスな内容の演技大丈夫かな?と思ったら杞憂だった。

チョンイルのセリフ回しで若干弱いところもあるが(時代劇は声色がとかく難しいので)、表情や立ち振舞なんかはよく頑張った!と拍手。主役としての存在感や華も出ていたと思う。私の期限は49日以来の、渋く哀愁漂う、口数少なでぶっきらぼうに見えても本当は心優しいカッコいいチョンイルが見られてうれしい。

一番驚いたのが、ユリ。翁主としての揺るがない落ち着いた気品や立ち振る舞いだけでも目を見張るほどだけど、運命に翻弄されながらも心根の芯の強さ・精神の清廉さからくる凛とした美しさが光り輝き、とても惹き付けられる。感情的におさえめな演技なので、縦横無尽な超高度な演技力までは問われない無理のない範囲でよく見せていたかと。翁主らしい配慮を含んだ慈悲深い発声もちゃんとうまいのも良い。

二番手男性のシンヒョンスはアクションも演技も十分すぎるくらいだけど、男性的魅力の面では物足りなかった。でも演技力もルックスや華も存在感もしっかり備わった役者だと、主役二人が食われるかも?という懸念を感じなくもないので、ある意味バランスとれてたのかな。ただ、やはり二番手は相当魅力的であって欲しいという不足感は否めない。

ひょんな間違いから主役二人の人生が大きく変わってしまい…というだけでなく、王朝を巻き込んだ巨大な歴史的うねりへと発展してしまうというスケールのデカい展開は時代劇らしい題材だけど、そこにポッサムという慣習が上手く合わさっていて、なかなかなアイディアでした。後半以降、お決まりの権力闘争に流れ込んでいくものの、家族としての愛や人としての情も、親の子を思う気持ちなどいろんな面から光をあててしっかり描いていたし(このドラマが恋愛ものというより、家族ものだからかな)、陰謀面もわりと丁寧に展開を辿っていくので息苦しい一辺倒でもなく、納得感もあった(し、何せあの光海君だから…で済んでしまう部分もあるかな)。

ただ、またしても…な出生の秘密と元○○の出自(時代劇でありがちなやつ)は、何度も似たようなパターンを見てきているので、少し飽き気味ではある。ポッサムというせっかく斬新なアイディアを核にしていたので、もう少し別の切り口もあったら…。

脇役もみんな当たり前のように上手いし、人物像がしっかり固められていて、その面でも時代劇らしい見ごたえは十分でした。キムゲシの迫力凄い…。

中にはちょこちょこ、そこはどうなんだ?という気になる部分もなくはないが、既に3回見たが全く飽きず、毎回楽しく見られている。

最後があっさり終わるのは、史実とのつじつま合わせか何か(ぼかした描写)、でしょうか?できればもう少し何かあって欲しかった。

またこういう時代劇が見たい。
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