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舞妓さんちのまかないさんの映画初心者のレビュー・感想・評価

舞妓さんちのまかないさん(2022年製作のドラマ)
4.4
傑作!!「海街diary」が好きな人は確実に好きでしょう。舞妓たちの日常を切り取った作品。とても会話劇が良くクスクス笑ったり居心地が良かったりする作品。海街diary同様に劇的な展開が無くとも登場人物の雰囲気のある会話だけで魅了されます。

特に好きな回
2話、3話、7話、9話(7話がベスト回)

脚本、美術、撮影、役者陣、音楽どれもとてもレベルが高い。是枝監督は1話、2話のみ監督として担当し、それ以降は脚本や総合演出としての仕事。1話、2話は少し影が落ちるピリリとする空気感が3話以降一気に明るさが全体的に漂うような作りになっていました。どんどん明るく居心地が良い作品へとなっていく体感。

脚本。会話劇がとかく巧い。役者のアドリブがもしかしたらあるのかもしれない。それぐらい自然な会話が続く。海街diaryもそういった会話が好きだったため、この作品ももちろん好きになりました。ただ、会話劇が良い作品だけでなく、しっかりと根底にはドラマ性も。舞妓への挫折、成長、舞妓の世界への疑問視、伝統を変えたいが変えれないもどかしさ。特に、16歳ほどの少女が男性を喜ばすための舞妓の世界へ入ることの疑問視をしっかりと描いている真摯さもあり良かった。

美術。実家のような安心感という言葉がありますがまさにそれ。家の中のごちゃごちゃした感じがおばあちゃん家を思い出すような居心地の良さ。特に日本的なものが多くあり、より京都らしさを感じます。

撮影、色味。光を捉えた美しいショットなど映像的にも見どころがあります。特に7話の室内から見る雪のショットが良かった。画面比率も16:9ではなく、ビスタサイズの比率、そして色味も含めて「映画」として作っている印象を受けます。

役者陣。魅力的な役者ばかりです。その表情の良さ、会話の自然さなど魅力がたっぷり。特に女性陣は全員良いです。女性同士のわちゃわちゃ感が脚本もあいまって見ていて楽しくなりました。

音楽。「海街diary」に続いて是枝作品2回目の参加の菅野よう子女史。さすがの仕事っぷり。「海街diary」同様にハープを多用した音楽作り。また彼女の仕事で最も近いのは「ごちそうさん」でしょうか、音が飛び跳ねる料理シーンなんて完全にそれ。OPの不思議なファンタジックな感じも良く、いい仕事してます。

もったいないと思う点はゾンビ回と1話冒頭ですかね。ちょっと漫画チックになりすぎていた気がします。出てくる登場人物のテンションが高めでおそらく監督の意向だと思いますが、異色すぎた回でした。そして1話冒頭、導入がちょっとしんみりしすぎている、もちゃっとしてしまっていた印象、もったいない。

【総評】
これは傑作でしょう。自分が思う是枝監督の良さが全開だったと思います。会話だけで良さが伝わる、居心地がずっと良く、根底にドラマ性もある。舞妓世界を疑問視するような描写も入り、バランス感覚が優れていると思いました。素晴らしいドラマでした。
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