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仮面ライダーBLACK SUNのmitakosamaのレビュー・感想・評価

仮面ライダーBLACK SUN(2022年製作のドラマ)
4.1
やっと10話見終わった。かなり期待値の高いシリーズだったし十分に見応えもあった。

今後もシン仮面ライダーも控えているが、ゴジラ・ウルトラマンに比べ実は一番リメイクが難しいのがライダーだと思っている。ゴジラなどは防衛組織の描写でリアリティを持たせる事が可能だが、ライダーはショッカーなどの悪の組織にリアリティが必要となる。
だが昨今のご時世で“世界征服を目論む悪の秘密結社”ってどう考えてもリアルにならない。東西冷戦はとっくに終わりロシアがウクライナに攻めあぐねる時代なのだ。
ショッカーだろうがギャラクターだろうがブラックゴーストだろうが、武力で世界を支配が出来る時代は終わったんだよね。

その意味ではブラックをリメイクしたというのは、とても興味深いチョイスだった。オリジナルでもゴルゴムは政治に深く関わってるって設定だったしね。
予告編では怪人に対するヘイトが行われていたり、現代における“悪の組織”と“怪人”のあり方をどう描写するのかが肝だった。
しかも監督が孤狼の血などの 白石和彌だ。

かなりオリジナルの設定を活かしては居るが、独自のアレンジもセンスが良い。ゴルゴムは政治団体ゴルゴム党としてまさかの与党だ。怪人は日本軍により作られた兵器であり、ゴルゴムは人間と怪人の共存を図っていたが、そこにシャドームーンがクーデターを起こし怪人上位の社会を作ろうとする…という内容。

町中に怪人のヘイトが溢れており、怪人の人権を主張する少女アオイと、創世王の候補者であるブラックサンが戦いとその葛藤が描かれる。

ブラックサンは自分が怪人ではあるが、自分の戦いのビジョンが見えずに居る様に描かれる。
アオイは被差別を謳うが、自分が怪人(被差別民)に強制的に手術されることは全力で抵抗する。主役側の戦いに矛盾があることで苦悩せざるを得なくなる。

現代と50年前の72年との過去とが交差して描かれる。正直言って過去編がちょっとダレる。過去のエピソードは秘密の解説である筈だからもっとテンポが早いほうが良かったよ。

当然ヘイトの描写は在日に対する暗喩だろう。スズメ怪人の家の側にプルコギの文字があった事からも確信犯だ。また70年代の描写は日本赤軍だろう。ゴルゴム党とは日本赤軍の共産主義者が政権を取ったというif歴史だと判る。

最終的に政治を変える事も出来なくヘイトも押さえる事も出来なく、残ったアオイがテロリスト育成に励むというラストを迎える。戦いはまだまだ続くという終わり方として、落とし所はココだったのかなぁと考える。やはりテロリズムの肯定をするような終わり方には抵抗があるな。

西島秀俊は演技は普通だけど声が良いんだよね。アオイの平澤宏々路って子は凄い上手い。中村倫也も安定の演技力。俳優陣も中々良かった。


90年代などの真・仮面ライダーやZO、Jなどのクリーチャー路線が垣間見れたのは良かった。クウガ以降の平成ライダーによりファミリーイケメン路線が主流となり、マニア向けのグロテスクな描写は見られなくなったからね。
ブラックサン・シャドームーン共に変身パターンを2つ持っており、クリーチャー系と格好良いスーツ系を使い分けたこともナイスアイデアだと思う。
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