たった1週間の出来事なのに、3ヶ月密着していたかのような充実感。ひとつの家族の間に流れる苦くて濃密な空気をめいっぱい吸い込んで、肺がヒリヒリと痛む。ドランは本当に「家族」というコミュニティの危うさを恐れつつも途方もなく愛しているんだな。現在と過去が行ったり来たりする集中力が試される構成だけど、その回想との行き来がめちゃくちゃスムーズ！指の骨はチキンの脚になり、ハロウィンはお葬式になり、病院の廊下は30年の月日を滑らかに遡る。毎回気が利いててもはや気持ち良いくらい。撮影する前から頭の中でかなりクリアにビジョンを構築出来てるんだろうな。
サイコスリラーだと知らずに観たのもあり、所々ホラーな演出やダークなビジュアルにいちいちビビってしまったのだけど、それも含めてPG12で合ってる？これ。ほぼ毎回曰く付きのセックスシーンがあるし、コカイン吸うし、かなり激しめの自傷と嘔吐シーンもあるし、喋りながら額を縫うし(めちゃくちゃ痛そう)、それらがない間はほぼ喧嘩するか煙草を吸うか過剰にアルコールを摂取しているので、R15相当でも良いように感じた。大人でも何気なく見ちゃうとトラウマ再生装置な気がする。なのにめちゃくちゃ面白いんだから、一体何がどうなってるんだか。
雑文①
アンヌドルヴァルママを見過ぎて、もはや自分の母親よりそのお顔をじっくり見ている気がする。
雑文②
好きな人が目の前で料理をぶちまけた時の対応、100点。「大丈夫？」とか「外に食べに行こうよ」とかじゃないんだな。誰かもっと早く教えてよ。。
雑文③
ドラン作品で自ら演じているドランからしか摂取できないものがある。それは栄養というよりはもっと嗜好性と依存度の高い、カフェインやアルコールのようなもの。だけどそれがビタミンやカルシウムより切実に身体に効く。
雑文ではない祈りとか
ドランが監督業から離れて心身共にゆっくり休めますように。俳優でも田舎暮らしでも何でも好きな事を好きなだけやれますように。そしていつか30年後でもいいからまた映画を撮ってくれますように。とりあえず引退まであと一本だけ契約が残っているらしいHBOのテレビシリーズとやらを観るまでは死ねないぞ。
