うめまつ

それでも、生きてゆくのうめまつのレビュー・感想・評価

それでも、生きてゆく(2011年製作のドラマ)
4.6
誰目線であっても辛い物語だけど、何故か時任三郎目線で見ていたので「もうこれは息子を殺して自分も死ぬしかない」という思想になってきてだいぶキツイ。握ってる金槌を振り払おうとして、でも手が固まって離せなくなってるとことか、脚本なのか演出なのか演技なのかわからないけど、何気ないシーンでもあらゆる描写や感情の密度が高くて胸が詰まる。リアルとも少し違う「表現すること」への眼差しが深いというか、とにかく見ていると集中し過ぎて喉が渇いて仕方がない。

風間俊介の救われなさに観ているこちらも全然救われなくて、真っ暗闇に足のつかない沼で一生藻がいているような気持ちになる。瑛太も満島ひかりも日陰で生きざるを得なかった人達を眼差しひとつで体現しているし、大竹しのぶに至っては何百通りの人生を生きればあの境地に辿り着けるのかさっぱりわからない。

あの二人が出会い惹かれあうことは現実では起こり得ないし、一生消えない事実と向かい合う事は多分変わらないけど、人を奈落の底まで突き落とすのもそこから救いの手を差し伸べるのも人であり、何処までも広がる失望の海の中で、仄かに光る希望という名の真珠はその海の暗さと深さをより鮮明に浮かび上がらせる。でもその真珠を掴むことを諦めないでと願って止まない。私も深見さんにはナイフより冷凍みかんの方が似合うと思うので、頼むから絶対幸せになってくれよな。
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