うにたべたい

シルバー仮面のうにたべたいのレビュー・感想・評価

シルバー仮面(1971年製作のドラマ)
4.3
元々赤字経営だった円谷プロが、起死回生の一作として1000万円強を投入し作り上げたマイティジャック。
だが、視聴率は低迷、2クール予定が1クールで打ち切りになりますが、大損害を回避するためフジテレビの温情のようなもので子供向けに方向転換し、2クール目を走りきります。
ですが、その失敗と赤字により、いよいよ円谷プロは倒壊の道を歩み始めます。
"怪奇大作戦"終了後に仕事が途絶えてしまい行き詰まった円谷プロは、実際はその後で東宝の傘下となりブランドを保つのですが、その間に多くの技師がリストラの憂き目に遭います。
その際、元円谷プロの技師らがスピンアウトしてできた集団が、かの『日本現代企画』ですね。
彼ら、日本現代企画が宣弘社と共に制作した初の特撮ドラマ、それが"シルバー仮面"です。
シルバー仮面は戦う仮面!燃える正義の銀の色!

春日博士は、地球の宇宙開拓時代の夜明けを告げる光子ロケットの開発に成功しますが、地球人が宇宙に出ることを良しとしないチグリス星人に殺害されてしまう。
設計図も燃やされ、失われてしまったと思いきや、春日博士は設計図を何らかの形で残していることを、彼の5人の子に伝える。
そして、体のひときわ丈夫な次男の光二に、シルバー仮面に変身する銀の力を与えていたことを伝えます。
序盤は光子ロケットの設計図の秘密を探り出すために、各所にいる父と共に研究をしていた博士に出会い、少しずつ光子ロケットの秘密を解き明かすロードムービーになっています。
また、チグリス星人以外にも、地球を狙う宇宙人が多数存在し、人間に化けて兄弟たちに襲いかかるのを退治する、等身大ヒーローが描かれました。

ただ、1,2話が実相寺昭雄監督だったというとこもあって雰囲気は暗く、カメラワークは氏のそれなのでファンは嬉しいですが、初心者は離れていきそうなところがあります。
数字も伸び悩んでしまったのか、11話にて光子ロケットは完成、かわりに光子エネルギーを浴びたシルバー仮面が巨大化します。
以降、タイトルも『シルバー仮面 ジャイアント』と改題され、巨大化ヒーロー番組にリニューアルします。
この手の路線変更で、例えばマイティジャックは、子供向けにシフトした後期の方が個人的に良かったですが、シルバー仮面はテーマがありストーリーがしっかりしていた前半の方が好みですね。
前半、博士を訪れる兄弟たちですが、ゆく先々で兄弟を狙った宇宙人による騒動が起こり、兄弟たちは疫病神として追われることになります。
時には警察からも追われ、それでも父の悲願、人類の希望である光子ロケットを作るために旅を続けるストーリーがとても良かった。
ジャイアントになってからも悪くはなかったですが、前半のなんとも言えない雰囲気が消えてしまった感じがするんですよね。

ラストもとてもSF的な終わり方で完結しました。
片道30年の宇宙との架け橋を渡る、英雄譚と言っていい作品だと思います。