こころとからだ

力の強い女ト・ボンスンのこころとからだのレビュー・感想・評価

力の強い女ト・ボンスン(2017年製作のドラマ)
5.0
文句なしに面白かった。見たいところまで全部見せてくれて、全24話、各話ごとの進み方のバランスも丁度良かった。

悪者が中途半端にぬるいと冷めるし、やられる前の前フリなんだなって分かって萎えるが、しっかり凶悪で、緊張感が最後まで保てたのは素晴らしい。

多少いつまでこいつとやり合うのかと、イラついた場面もあったが、それもドラマにハマってるからこそ。シリアスな場面があるからこそ、コミカルなシーンがより際立った。

「ああ私の幽霊さま」でのパクボヨンが最高過ぎて、もうあれを超えることはないと諦めていたが、この作品でも半端なく魅力的だった。パクボヨンさんの出ている作品にハズレなし。ふざけるときや意地悪するときの表情、言い方がめちゃくちゃ生々しく、とにかく刺さる。

主人公を演じたゼアのヒョンシクも、ハマっていた。最初は場末のアイドルが演じるので心配して、見るかどうかすら躊躇ったが、まったくの杞憂だった。全方向イケメンだったし、表情、声とドラマにぴったりだった。アイドルが必死に演技してます感も、イケメン木偶の坊に成り下がることなく、ドラマをしっかり牽引した。 

元々本人がボンボンなので、御曹司キャラが違和感なく、板についていた。これで劇中に乗っている車がBMWだったらよりリアルだったかも。2021年1月に除隊したそうで、これからの活躍に期待。またラブコメに出てほしい。

ジスは今、いじめや性暴行疑惑で芸能界から干されている状態なので、過去の作品とはいえ見ていてもやもやしたのが本音。真実は分からないが、少なくとも余計な雑音で、作品に集中できなくなったのは残念としか言いようがない。

脇役も最高で、イムウォニ演じるのアホな組長は、どこまでも憎めず、なぜ部下がいて慕われているのかまったく分からないうえ、過去にミンヒョクと何があったのかもよく分からなかったが、ドラマを盛り上げた立役者であり、ラストの感じも良かった。また、イムウォニのおかげで、トンスル(人糞酒)のことが学べ、韓国文化の底力を知れた。

開発企画チーム長のオドルピョとコン秘書のケミも最高だった。スベり知らずで毎回笑う。コン秘書役のチョンソクホの気を遣ったオドオドとした話し方はかなりリアルで、本当にその役の人柄が伝わって来たし、調子に乗ったときの表情、眉と目の演技は見事なコメディだった。

キムウォネはオドルピョとグァンボクのまさかの一人二役を演じていたが、まさに無双状態。あんな分かりやすく茶化したゲイ役は、時代的に日本ではもうクレームが入り出せない感じだが、キャラクターとした最高だった。キムウォネ、ゲイ役で輝くからもっと色んな作品にゲイ役で出てほしい。

コーヒー飲むときに、噛んでいたガムをコップのふちに手を使わず口で器用にくっつけて、少し回した別のふちからコーヒーを飲む、という細かいキモ演技が最高にキモかった。ステンレスの箸とスッカラのアクセサリーは意外と公式グッズで出たらみんな買いそう。ほしい。

ユジェミョンとシムへジン演じるボンスン両親のケンカも毎回最高だった。結婚生活がうまくいくためには嫁さんを立てて、旦那が我慢したほうがきっと平和なんだろうと悟らせてくれる。

何だかんだ愛があってのことだし、くるみパイのお店って何か韓国らしくて素敵だった。韓国の伝統とお洒落なカフェが合体したようなアットホームな感じで、こんなお店は日本にはないなと羨ましく感じた。実家がくるみパイのお店って誰かに言うとき誇らしそうだ。

パクボミ演じる釜山のギョンシム役は方言のため、なぜか翻訳字幕が関西弁で、めちゃくちゃ違和感があったが、徐々に慣れてきたらどんどんハマっていった。パクボミさんの完璧すぎない見た目は、妙な一般人リアリティがあり、友達にいそうな感じがたまらなかった。

最後に、脇役ながら胡散臭いインド僧を演じたクォンヒョスクさんがまた後半の面白さを引っ張った。見た目はさながらロッチの中岡さんにそっくりで、声もかなり似ていてそれだけでもう面白い。外国人が韓国語を単語で話す感じと、タメ口や汚い言葉を知らずに使ってる感じがとにかく面白く、もっと出番が見たかった。

片想いは、どちらか一方が勇気を出して、一歩踏み出せば、関係を変えることができる。ボンスンもヒョンシクもグクドゥも、ボンギもヒジも、みんな一歩を踏み出し、それぞれ違う道を選んだ。力のあるなしかかわらず、どんな未来でも、勇気を出して一歩踏み出すことの大切さも同時に教えてくれる素敵な作品。