GreenT

ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウスのGreenTのレビュー・感想・評価

3.0
クエンティン・タランティーノが「ネットフリックスのシリーズもんの中では、他の追従を許さない、ダントツのイチオシ!」と言ってた作品らしいです。

オリビアとヒューのクレイン夫妻は、古い洋館をリノベーションして売ることで生計を立てているらしい。今回の物件はボストンにある古いお屋敷で、5人の子供を連れて引っ越してくる。

このオリビアを演じるカーラ・グギノって女優さんがすっごいキレイだなあ〜って思ってたら、同監督の『ジェラルドのゲーム』の主演女優さんじゃん!この映画ではテオを演じるケイト・シーゲルって女優さんは『真夜中のミサ』でも「アンジェリーナ・ジョリーに似た美人女優」って思ってたけど、この監督さんの奥さんなんだって?!面食いだね〜!

この古いお屋敷は幽霊屋敷だったらしく、子供たちはここで起きた事件がトラウマになってしまい、大人になってからみんな残念な人になってしまう。

長男のスティーブンは、このお屋敷で起こった事件を赤裸々に小説に書き、作家として成功するが、兄弟姉妹からは「家族の不幸」で大金稼いだ、と評判悪い。

長女のシャーリーは、幽霊屋敷で亡くなったお母さんの遺体を見た時の衝撃のせいで、葬儀屋を経営するようになる。

次女のテオはレズビアンで、児童心理学のセラピスト?バーでナンパしてはワンナイトスタンドを繰り返している。シャーリーの離れに居候している。

末っ子はルークとネルという男女の双子なんだけど、ルークはヘロイン中毒、ネルはメンヘラ。この2人が幽霊屋敷の影響をモロに受けたらしい。

この5人のキャラは「喪失の五段階」を象徴しているらしいです。スティーブンは第1段階:否認と孤立、シャーリーは第2段階:怒り、テオは第3段階:取り引き、ルークは第4段階:抑うつ、そしてネルは第5段階:受容。

幽霊屋敷で何が起こったかが断片的に挿入され、現在大人になった兄弟姉妹たちがどんな生活をしてどんな関係にあるのかとぶつ切りに演出されているので「この先どーなるの!?」とシリーズ10話「次も観たい!」という吸引力はすごいなあと思いました。

個人的に気になったのは「この映画やたら舞台劇っぽいなあ」ってことだったのですが、後でiMDbを読んだら、長回しでの一発撮りが多いって書いてあって「あ、そうか」って思いました。登場人物たちがフレームに入ってきたり出ていったりってタイミングとカメラが舐めていくようにスムースに動いていく、その感じがすっごい計算されているなあって思っていたら、長時間リハーサルをやったんだそうです。

私は『真夜中のミサ』の方が好きで、なんでかって言うと、『真夜中のミサ』はサイコ・ホラーとは言っても「人間の怖さ」を表していると思うんだけど、こちらは王道の「幽霊ホラー」色が、私の個人的好みには強すぎるってことでした。

5人兄妹が「喪失の5段階」を象徴しているとか、こちらも死に対して人間がどう対処するかとか、それにルークの薬物中毒やスティーブンの作家としてのジレンマ、怪奇現象は精神病が作り出す幻想なのかリアルなのか、などなど『真夜中のミサ』と共通のテーマであると思うんですけど、結局は幽霊話で「なーんだ」ってなっちゃう感じ?『真夜中のミサ』はさらに練り込まれていて、最後「うわ〜」って色々考えさせられる。

ちょっとこの後ネタバレっぽくなっちゃうので、まだ観ていない方はご注意ください!

私的には、幽霊屋敷がなんだろ、殺人があった?狂人が住んでいた?みたいな感じですよね。で、「開かずの間」が実は家の「胃」だったって設定が「?」。

その亡霊と、一家のお母さんが双子がおっきくなると離れていっちゃうから殺そうとしたって話がリンクしてないのが面白くない。テオが児童心理学者で、性的虐待を受けている子供のカウンセリングをしているって流れがあるのに、それとクレイン一家で起こったこととの関連性がなくて面白くない。

お父さんも子供を救おうとしたのに、誤解されて子供たちと疎遠になっちゃっているんだけど、お父さんが隠していた秘密ってのは、お母さんが双子を殺そうとした、で屋敷のメイドさんの娘を殺しちゃったってことなんですよね。メイドさんは娘が死んで幽霊になりこの屋敷に住み着いたので、それを守るために屋敷を守るみたいな話なんだけど、なんかこの辺あんまり説得力なかったなあ。

なんつーか、ネタ明かしされて「なーんだ」ってなっちゃうやつ。

あと、ネルが見ていた首が曲がってる幽霊が自分だったってのも、予知能力?これも、「ああ、本人だったのか!」ってその後どうなるのか期待していたんだけど、それだけだった。あれはなに、大人になってからも結局お母さんに殺されたってこと?

あ、そうそう、お母さんは子供たちが大きくなったら身を持ち崩したらどうしようって心配になって、それで小さい内に殺しちゃおうみたいになっていくようなんだけど、結局そのせいで起こった事件で子供たちはまんまと機能不全な大人になるという。

そういう「親のジレンマ」みたいなものを描いているとも言える。お父さんが「子供がどんな風に育っても、それに付き合っていくのが本当の親の愛だ」的なことを言っていたかも。

でなんか、お母さんがそんな風になっちゃったのは、幽霊屋敷の影響なのか、それともお母さんが本当に狂人だったからなのか?って曖昧なところが示唆的?ってことなのかもしんないけど、お母さんの状態と亡霊たちのバックグランドがあんまりリンクしないしなあ。

なんかそんな風に色んな示唆があるんだけど、あっちこっちに飛びすぎて最後一つにぎゅう〜っと集約されていかなくて「なんだったんだ」って感じになっちゃう。

でもこの監督さん、マイク・フラナガンだっけ?この人は注目!ネフリでこれからも色々やるらしいから楽しみです。
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