浅野公喜

悪魔のようなあいつの浅野公喜のレビュー・感想・評価

悪魔のようなあいつ(1975年製作のドラマ)
3.7
ジュリーことケンジ・サワダが放送年時効を迎えた三億円強奪事件の犯人を演じる久世光彦3プロデュース&演出、阿久悠3と上村一夫3が原作、長谷川和彦3が脚本を担当したドラマ。ジュリーそして70年代を代表する一曲である「時の過ぎゆくままに」は今作の主題歌。

当時全盛期だったジュリーの色気や魅力が楽しめる作品で、その退廃的な雰囲気や作風からは学生運動が衰えオイルショックが起き「シラケ」という言葉が流行った70年代中盤の疲弊した日本の姿が浮かび上がる印象も。

三億円強奪事件という話題性に富む実在の事件を取り上げている割には大半がスタジオ撮影でドラマの舞台は限定的、スリリングな逃走劇はあまり描かれずスケールが小さめで当時視聴率が振るわず打ち切りになったのが関係してか時効まで数か月残して最終回を迎える、そしてジュリー演じる可門良が抱える病気が発症する度に「GLIOBLASTOMA」(神経膠芽腫)という文字が大きくしつこく表示される(笑)といった不満も有りますが3億円という大金を巡って暴かれる一人一人のエゴや人間性は興味深く、強姦にそこはかとなく漂う同性愛にヌード、障害者や爆死に銃撃戦等といった挑戦的な要素の数々は描写こそ今観れば大人しいですが現在のドラマでは再現が難しいものばかりでひたすらエネルギッシュでした。

タツヤ・フジ、トミサブロウ・ワカバヤシ、クミコ・ウラベといったベテランも居る一方でイチロウ・アラキ、キヨヒコ・オザキ、ヒラオ・デイブ、ジュリーと同じタイガースのメンバーだったイットク・キシベにディック・ミネといった歌手・ミュージシャンのイメージが強い方々も出演し良い演技を見せており、他にもキリン・キキ、シロウ・イトウがそれぞれ看護婦とオネエのヤクザを演じています。
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