GreenT

全裸監督のGreenTのレビュー・感想・評価

全裸監督(2018年製作のドラマ)
3.5
これすっごく観たかったヤツなので、ネフリでたまたま見つけて「おお〜!」ってなりました。

村西とおる(山田孝之)は、北海道に住む、うだつの上がらない男。英語教材のセールスマンをして妻、2児、おばあちゃんを食わしているが、成績は悪い。もう後がないところでナンバーワンのセールスマンに教育を受け、営業の能力が開花するが、教育してくれたナンバーワンが会社の金を使い込んで会社を潰してしまう。

仕事を失った村西は、ラブホテルで盗聴テープを作って売っていたチンピラのトシ(満島 真之介)に出逢い、当時流行り始めた「ビニ本」の存在を知り、ポルノ業界でのし上がることに決める。

村西とおるの馬鹿げたアダルト・ビデオでの振る舞いを笑うようなコメディを期待していたので、最初3〜4エピソードくらい、結構普通のドラマで肩透かし食らったんですけど、「村西監督がビデオを撮り始めたら面白くなってくるんだろうな」と思って頑張って観てました。

だけどめちゃ笑えるってこともなく、シーンシーンで面白いところはあるんですけど、あとは良くあるドラマだなと思いました。

しかし、80年代の日本の様子は良く描写されていて、「懐かし〜!!」と連発しちゃいました。喫茶店にインベーダー・ゲームとか、ビニ本屋って町中にあったよなあ。あと新宿の猥雑で貧乏くさくて怪しい感じ、「日本はオシャレじゃない!」とか思ってたけど、今見るとなかなかノスタルジックな気持ちにさせられる。

このシリーズで描かれる村西とおるは、エロに芸術性を求める人に描かれている。他のAV映画を撮っている人たちは、ヤクザ上がりでとにかくセックスで稼ぐことしか考えてないけど、村西監督はストーリーも考えるし、映画通で普通の映画も観ているし、ちゃんと「勃つ」映画を作ろう!としている。

80年代日本の描写がすごい良かったって書いたけど、日米貿易摩擦のジャパン・バッシングとか、わいせつ法の取り締まりの歴史とか暴力団取り締まりの法律の変化とか、たしかにこの頃色々激動だったよなあ、と、忘れていたことを思い出した。

あと、貸しビデオ屋に当時日本で公開されたハリウッド映画のポスターがあるのもすごい良かった。ターミネーター出たばっかとか、レインマンとか羊たちの沈黙とか。

残念だったのが音楽で、洋楽ばっかじゃなくて日本で流行ってた曲も使えばいいのに、って思った。まあでも、日本の人が影響を受けてきたものの中でアメリカのものの比重はものすごい大きいってのも本当なんだろうからしょうがないか。あと、洋画のポスターは時代を表していたけど、音楽の方は必ずしもそうじゃなかった感じがする。

もう一つ残念だったのはCGI がモロCGI だったってこと。渋谷のスクランブル交差点とか、懐かしい映像なんだけど、登場人物が貼り絵みたいになっててうう〜んってなった。日本ってああいう技術すごいんじゃないの?と勝手に思ってたけど。あと、オープニングシークエンスもデジデジし過ぎでイマイチだった。

村西監督のキャラも、無口でつまんない。はじけるのは映画撮っているときと営業しているときだけ。本当にこういう人だったんならしょうがないけど、でもこの無口さとか感情を表さないところを、なんかもっと面白い見せ方をしてくれたらなあと思った。

それと、最初からネフリで世界配信を目指したためなのか、『グッドフェローズ』以降の「裏社会での栄枯盛衰」という、ハリウッドで使い古されたストーリー・ラインだなあって思った。使い古されたってことは「王道」なので、世界共通ってことでもあり、日本特有のAV文化を世界共通言語にするって意味では正解な手法なんだろうけど、私は「またこのパターンか」と思った。

とかなんだかんだ言いながらシーズン2も一気観しました!
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