Nella

ナルコス:メキシコ編 シーズン3のNellaのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

隅々まで満遍なくいい男が配置され、どっちを向いてもいい男しかいない。女性も美女ばかりで豪華絢爛。ロケーションやストリートアートの彩りも素晴らしく銃撃戦は映画のよう。この世界に永遠に浸っていたい最高のドラマ。
(以下、何故かS2の感想を以前長々と書いちゃった為書き直します。)
S3の見所と言えばやはりティファナ・カルテルの勃興と凋落。イザベラと決別し、家族の利益も考えたのか弁護士との結婚を選んだエネディナの壮麗な結婚式に始まるティファナの隆盛、そして新聞社ラ・ボス紙との確執が前半で描かれる。また一方で、重要な国境を有する彼らと違って不利なカルテル、特にシナロアとのビーフが激化していく。コチも交えて仲良く遊んでた頃が懐かしい。てかラモン・アレジャノ・フェリックス一瞬誰?!となった。こんなくっっっそイケメン久しぶりに見たし思わずS1から見返した。
物語初頭が10代(16歳位)で死んだのが27歳(実際は38)なので約10年ぐらいを演じるため、初期はわざとモサくしてたって訳だよ…。本当にやられた。気付いて見返すとさりげにお姉ちゃん子な所が可愛いし、家族を守るという彼なりの正義を貫き、死に様にまで華があった。実際のこの人物はとんでもない異常者で、ヨアン・グリロの「メキシコ麻薬戦争-アメリカ大陸を引き裂く『犯罪者』たちの叛乱」によると、拷問した敵の死体をシーツに包んでメッセージを書き、街中に放置するという脅し方法を始めたのはラモンだそうだ。それを考えると複雑な気持ちになる。
しかしエスコバル役のワグネル・モウラが監督したグアダラハラ空港でのオカンポ大司教殺害事件のシーンも、完全に「かっこよく」撮ろうと演出していて、だから「かっこいい」と思って見ていいんだなと思った。ついでにローガンハイツの雄、伝説の用心棒ダビド・バロンも鬼イケメンだと思う。バッドバニーとかいるから目立たないけど。
後半について書こうと思って見直したけど、フアレスの治安悪化や酷いフェミサイドの遠因でもあるアマドなのに、絶対生き延びてマルタさんの元へ辿り着いて欲しいと思ってしまうからドラマは不思議だ。

感想とは離れるがフェミサイドについて書いておきたい。本筋に上手く絡められず消化不良で終わったという印象を受けるが、この問題は未解決だからこそ、この描き方が正しいのではないか。疑問を解消するため工藤律子さんの「マフィア国家-麻薬戦争を生き抜く人々」を読んだが、マキラドーラしか働き口がなく、貧しくて車も買えずバスで何時間もかけて通勤する女性達は一日中働いてクタクタなので「送ってあげる」という男がいれば、危険を承知で車に乗ってしまうのだ。そこを狙った誘拐や殺人事件が起きて何百人もの女性が行方不明になっている。フアレスの警察は汚職に忙しいため捜査もしない。麻薬カルテルは麻薬だけ扱っているようにフィクションでは描かれがちだが、実は女性の人身売買でも同じぐらい儲けている。そこに切り込み世に知らしめようとしたことには意義があると思う。

ナルコの物語は倫理的に難しそうだが、S1でキキ、S2とS3でウォルトとゆるぎないモラルセンターを主役に置くことにより成功している。麻薬カルテルのボスは英雄でもかっこよくもない、人間のクズなのだ。それを強く主張しているからアホみたいな豪邸とかパーティとかプレゼントの虎とかを、スゲーアホだなあと安心して見れる訳です。
ミゲル・アンヘルは先日76歳で出所したし、ラファエロ・カロ・キンテロも再び逮捕され、まだ話は終わってないことを感じさせる。メキシコでもコカインや大麻も合法化して、せめて治安問題から医療問題になれば無駄な人死にもなくなるだろう。そういうことが日本にいながらにしてわかっただけでも素晴らしいドラマだと思う。

余談だがNetflixじゃない方の予告編(Youtubeとかにある)でSoundgardenのBlack Hole Sunが使われており、メキシコなのにグランジがぴったりで激かっこいいです。MC5のKick Out the JamとかIGGY POPのPasssengerも良かったし、ロックの使い方が上手いドラマは大体成功するように思う。
Nella

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