このレビューはネタバレを含みます
"人生"を描いた最高のドラマ。
この物語はまさに「徳永伝記」だ。
徳永が全身全霊で生きた10年間を、私はたった10時間でしか観ていないのに、まるで彼と10年間共に過ごしてきたかのような感覚だった。いろんな人と出会い、別れ、がむしゃらに生きた徳永が愛おしくてたまらない。自分自身と葛藤し、もがいてもがいて必死に生きた徳永が愛おしくてたまらない。相方が大好きで、師匠が大好きで、徳永はただ"今"を生きていた。私はそんな彼の人生に入り込んで、沢山笑って、沢山考えて、沢山泣いた。そして、明日を生きる活力を貰った。
M-1で優勝した1組の芸人もいれば、10年やっても若手と言われ、結果が出せず日々狭い舞台に立つ芸人もいる。どこかの公園で漫才の練習をしたり、先輩芸人と飲み歩いたり、地方のイベントで少ないお客さんに見つめられながら漫才をしたり……呑気にテレビの前で「こいつらはおもしろい」だの「こいつらはつまんない」だの呟いている人たちにはわからないところで、今も必死にネタを考えている芸人がいる。本作はそんな芸人たちの影の努力に気づかせてくれる。そして、がむしゃらに夢を追いかけても現実はそう甘くないことや、それでもそのがむしゃらに生きた時間は無駄なんかじゃなくて、きっと自分や誰かの財産になること、芸人の世界はすべての芸人によって作られていること(これは私たち、とも言い換えられる)を、徳永の10年間を通して教えてくれる。それはまるで花火のように一瞬で、かつ永遠な、尊い10年間だった。
徳永は、良くも悪くも圧倒的な自信の強さが取り柄の神谷さんというただの"人間"を勝手に"師匠"と神格化した。そのせいで、神谷さんが自分と同じ"人間"だと気づいたとき、最初から"人間"であるはずの神谷さんを"人間"だと受け入れられなかった。もはや徳永の自業自得だけど。それでも、最後は"人間"でもあり"師匠"でもある神谷さんのすべてを愛せた。神谷さんの良いところも悪いところも全部ひっくるめて"神谷さん"なんだと気づけた。なんて素晴らしいラストなのだろう。それでこそ徳永で、それでこそ弟子だ。流石に神谷さんは誰が見てもアホだけど、それ以上にアホな弟子がいてくれて本当に良かった。
「生きている限り、BAD ENDはない。僕たちはまだまだ途中だ。」
そうだ。その通りだ。徳永はこれからも"今"を生き続けるんだ。あの尊い10年間を糧に。これまでの自分の人生すべてを肯定して、明日からまた生き続けよう。それだけでいい。全部ひっくるめて自分の人生なんだから。徳永の10年間の青春は、私の心に強く響いた。ありがとう、スパークス。ありがとう、徳永。
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林遣都出演作品の中で、本作の林遣都が1番好きかもしれません。徳永という人間を全力で生きた彼が大好きです。「火花」は小説・ドラマ・映画とありますが、皆様にはドラマを激推ししたい!私はドラマ→小説→映画の順でしたが、個人的にはドラマが1番深く徳永の人生に入り込める密度の高い作品でした。ちなみにおすすめは小説→(映画)→ドラマです︎^_^
〇好きなシーン/好きな台詞(自分用メモ)
・まるでこの世のすべてを否定するかのように「地獄地獄地獄」と叫ぶ神谷さんに徳永が静かに衝撃を受けている(一瞬にして心奪われている)シーン←この林遣都の表情が何気に本作で1番好きかも
・田舎に帰ることになった小野寺さんとの別れのシーン←「空に星が綺麗」を歌う小野寺さんと、最後まで聴かずにいつも返してもらっていた1000円を置いて立ち去る徳永の2人の人生を強く噛み締めた
・神谷さんと徳永がメールでやり取りしてるシーンでの神谷さんの言葉「エジソンが発明したのは闇」←天才
・「ネットで悪口を書かれても(誹謗中傷されても)気にならないのか」という徳永の質問に対する神谷さんの回答「それがそいつの、その夜、生き延びるための唯一の方法なんやったら、やったらいいと思うねん。俺の人格も人間性も否定して侵害したらいいと思うねん。きついけど、耐えるわ。俺が1番傷つくことを考え抜いて書き込んだらええねん。」←1番好きな神谷さんの言葉
・初めて徳永が神谷さんに口答えした"模倣"のシーン←私も悔しかったし苦しかったし泣いた
・「僕、山下以外とコンビ組むつもりはありません」←その言葉がすべて
・スパークスの最後の漫才←最高の10分間。死ぬほど泣いた。これ以上最高な最後の漫才はない。
本作の挿入歌「I See Reflections in Your Eyes」は名曲。たまらなく大好きです。聴く度に心が締め付けられて、私は何度でも彼らを思い出す。
📝1回目 2020年7月25日〜2020年8月7日
📝2回目 2023年1月1日〜2023年1月3日