漱石枕流

ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~ シーズン3の漱石枕流のレビュー・感想・評価

3.6
いよいよファイナルシーズン。AppleTV+のドラマシリーズ作品が(打ち切られたものは別にして)完結するのは、これが初めてではなかろうか。

この作品に触れてから、エミリ・ディキンスンの名前を見ると真っ先にヘイリー・スタンフェルドの顔が浮かんでしまうくらい、私にとってはなじみのシリーズになった。なのでせめて、もうあと1シーズンくらい続けてもよかったのではないかという気がした(せめて戦争終結までは! と思っていた)ので、ちょっと残念ではある。

時代は南北戦争に突入し、全編にわたって戦時下の状況が描かれる。たまたま観た時期がロシアによるウクライナ侵攻と重なっていたので、その点で妙にリアリティーが感じられた。

今シーズンは今まで観たなかでいちばん楽しめたかもしない。特に精神科病院を訪問する第6話と、そのつぎの未来にタイムトリップするエピソードなどはとてもおもしろかった。
あと最終話がすがすがしく描かれていたのも、とても好印象である。

全シリーズを通して私がエミリに共感してやまないのは、詩人としての才能がありながら生前に日の目を見ることができなかった点にある。

ネットが発達した今の時代は、個人がかんたんに自作を発表できるようになっている。が、その反面、情報があふれすぎていることを考えると、彼女の悶々とした気持ちは誰でも理解できるのではないだろうか。

そういう意味では最終回は、文学のみならずクリエティブなものに地道に取り組むすべての人々への励ましになるものだと思う。

なお劇中に登場する彼女の作品そのものについては、正直あまりピンと来なかった。ただそこは、活字で読まないとくみ取れないものがあったのかもしれない。今度ぜひ、詩集を手にしてみようと思う。

[ドイツ語吹替音声+日本語字幕]2022/04/02-16 Apple TV+
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