ソラアユム

クイーンズ・ギャンビットのソラアユムのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
5.0
『64マスが私の世界のすべて…』


1960年代、アメリカのチェス界に彗星の如く現れた神童エリザベス・ハーモンの波乱万丈な人生を描き出すNETFLIXオリジナルリミテッドシリーズ

面白い!
アニャ・テイラー=ジョイ主演というだけで見る価値は十分あるが、ストーリー展開、音楽、演出、ファッションなどすべてのクオリティーが恐ろしく高い傑作ドラマ。今年暫定一位はこの作品に決まり。

ストーリーはかなり王道寄り
1960年代当時、女性のプレイヤーがほとんどいなかったチェス界で常勝し続ける孤高の天才エリザベス・ハーモンの栄光と凋落を描き出す。彼女は幼少期をどのように過ごし、いかにして”最強”に成ったのか?その人生の歩みがテンポ良く描かれる。主人公は連勝を重ねに重ねるが裏では非常に大きな孤独と苦悩と狂気を抱えていている。アニャの抑制の効いた演技とユニークながら均整の取れた美しい顔立ちでチェス盤を見つめる姿が様になっている。対戦相手も個性的で全編に渡ってスリリングなチェスゲームと駆け引きを堪能できる。

本当の敵は誰だ?
当時は(そもそも今はどうかも知らないが)、ソ連が世界のチェス界を席巻していたらしい。主人公の倒すべき敵として登場するのが世界チャンプであるソ連のボルコフ。しかし、本当の敵は彼でない。それが何かはドラマをぜひ見て知っていただきたい。

最終話がひたすらに熱い!
今作は1960年代のファッションとインテリアにチェスを加えてシャレオツを極め散らかした上品なドラマである。主要登場人物達は有名なチェスプレイヤーばかりでプライドも高くクレイバーだが、その一方で情に厚い。皆良い人たちで、主人公をサポートするために尽力する。変な対立や不要な色恋沙汰などがないからストレスフリーで見ることができる。特に主人公と最も長い付き合いであるジョリーンとの友情の描き方が素敵である。この作品に唯一足りないのは熱量や劇的な盛り上がりであると思っていた。そもそも上品で硬質なタッチで描かれるこの手の作品に熱量は期待するべくもないが、最終話『エンドゲーム』でこのドラマはやってくれる。俺たちが大好きな少年漫画的な展開を。決戦前の電話、天井を見上げる観客と解説者そしてボルコフ…それはまさに『アベンジャーズ エンドゲーム』の集合シーンさながらの熱量を個人的には感じた。素晴らしいカタルシスである。

NETFLIXオリジナルのクオリティの高さには毎度唯々感心させられる。
リミテッドシリーズの沼にはまる今日この頃…